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目薬は不思議

いぬうた市に永住を決めた、
きゅん君と、ぐーちゃんの主な日課は、
いぬうた公園を散歩することです。
いぬうた公園は自然に溢れ、草木が多いので、
きゅん君も、ぐーちゃんもお気に入りの散歩コースです。
散歩中、たまに草むらに首を突っ込んで、
奥にある、匂いの元を確かめたりするのも、
ふたり共、大好きです。
しかし、この日の、きゅん君、顔を草むらに突っ込んだ際、
目に草が入ってしまったせいか、帰宅後、
ママは、きゅん君の片方の目が、
赤く充血していることに気付きました。
なので、ママは、きゅん君をお医者さんに連れて行きました。
診察結果は、どうやら目に雑菌が入ったようで、
目薬を処方された、きゅん君です。
家に帰って早速、きゅん君の赤くなっている方の目に、
ママは目薬をさしました。
きゅん君は目薬を指すのは初めてのことだったので、
さされる前はどきどきしましたが、
いざ、さしてもらうと、涙がちょっと出ましたが、
そのあとは目がとてもスッキリして、
今まで感じたことのない不思議な感覚を体験して、
ちょっと感動した、きゅん君です。
その感動を、ぐーちゃんにこのように報告します。
「目薬が入って、一回、目を閉じて、再び開いた時、そこに見えたのは、新しい自分が見る風景だった。そう、目薬を入れる前の自分と入れた後の自分。それは見た目は同じでも全く違う自分なのである。涙と同じような液体を一粒入れるだけで、感動の涙が大量に出る。目薬とはこのように誠に不思議な液体なのだ」
と、だいぶ大げさに語りました。
その、きゅん君の語り口に、
もろ魅了された。ぐーちゃんは、
「ぐーもお目目を、赤くして、ママに目薬さん、さしてもらうー!」
と、すっかりその気になりました。
ならば即、実行あるのみと、次の散歩の時、
必要以上に、ワザと草むらに頭を突っ込んで、
まんまと、目を赤くすることに成功した、ぐーちゃんです。
そしてママは、ぐーちゃんの目の異変に気付き、
今度は、ぐーちゃんをすぐ病院に連れて行き、
診察結果は案の定、きゅん君と同じで、
きゅん君と同じ目薬を、処方された、ぐーちゃんです。
「やったー!ぐーのお目目赤くなり作戦、見事に成功ー!これで、ぐーも感動を味わって、違う、ぐーになれるなりー!」
と、大喜びしますが、いざママに目薬を、
さしてもらう段になると、
目薬の容器のちょっと尖った先端が、
目に恐ろしいまでに近づいてきて、その恐怖で、
咄嗟に首を動かして、避けてしまい、
結果、落ちてきた液体は、こともあろうか、
ぐーちゃんの口の中に入ってしまって、
それを、ごくりと飲み込んでしまって、
それが異様にまずくて、「おえっ!おえっ!」
と、えずいて、涙も、いっぱい出てしまって、
おえおえ、言いながら、
「これが、きゅんの言っていた感動の涙なのかしらー?確かに不思議かもしれないけど、でも、ぐーは全然嬉しくなーい!楽しくなーい!もしや、きゅんに騙されたのかも?きゅんの奴!絶対許さーん!」
きゅん君への復讐を誓った、ぐーちゃんなのでした。

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