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車が着いたら

ブロローン!っと、ある日、ある車のエンジン音が、
いぬうた市の空に鳴り響くと、自宅にいた、
きゅん君と、ぐーちゃんは今まですっかり寝ていた、
ところを飛び起きて、玄関ルームに向かいます。
ワワワーン!っと、車に負けない大声で、
大騒ぎして、大はしゃぎで、別の場所にいた、
ふたりですが、同時に到着します。
「やっとママが帰って来たね!僕、ずいぶん待ち焦がれていたよ!」
ある車とは、ママが運転する車だったんですね。
きゅん君が、ママが車から降りて、玄関ドアが開けるを、
今か今かと待ちながら、ぐーちゃんにそう言いました。
「ぐーには分かっていたわ。だって今日ママはダンスさんのレッスンにお車で出かけていたのよ。だったら帰りはいつもこのくらいよ」
ぐーちゃんは、きゅん君と差別化を図りたいのか、
そんな言い方をしましたが、嬉しそうな顔は、
きゅん君と一緒です。
「ママは僕の顔を見ると、いつもニッコリしてくれるよ。それが僕は楽しみなんだ。今日もきっとニッコリ笑ってくれるだろうから、僕は今日は抱きついちゃおうかなあ」
と、きゅん君は、ぐーちゃんの言ったことには、
特に反応せずに、自分とママの、
相思相愛ぶりを語るに終始して、
「ママは、まず、ぐーの頭を撫でてくれると思うわ。だから、ぐーはそのママの手をペロッと舐めるの。そうするとママはとても嬉しそうな顔をするの。ママはそれが1番好きなのよ」
ぐーちゃんもママからの自分独自の可愛がられ方を述べて、
おのおの勝手に言いたいことを言いながら、
玄関ドアが開くのを待ちます。
しかし、しかしですね。
あら?ママ、なかなか入ってきませんね。
きゅん君も、ぐーちゃんも、あれ、おかしいなあ?
と言わんばかりに、首を傾げています。
「確かにガレージにママの車、帰ってきたよね?」
きゅん君が、不思議そうに、ぐーに聞きます。
「間違いないわよ。ぐーがママの車が帰って来るの間違える訳ないわ。もしかしてママ、そのまま歩いて、また何処かに出かけたのかしら?」
ぐーちゃんも更なる可能性を探ります。
「でも今までそんなこと一度もなかったわよね」
やっぱり、ぐーちゃんも不思議でたまりません。
そんなこんなしているうち、だんだん、おふたり、
玄関ドアの前でジッと待っているに、焦れてきました。
それでも無言でいると、辺りの雰囲気も、
ビミョーな感じになってきて、
シーンとしているのにとうとう耐えられなくなりました。
「何と言うか、間が持たないよね。上がったテンションの持って行き場がよく分からないというか」
すっかり白けてしまった、きゅん君がポツリと言います。
ぐーちゃんも同じように感じているようで、
「そうね。何だかさっきまでの、ぐーがまるでおバカさんに思えてきたわ。わくわくが止まらなかったのが、これが止まってしまって、さあ大変。でも戻るきっかけもないし、ぐー、どうすればいいか?もう分からないー!」
と、戸惑う、ふたりです。
「じゃあ、何か、この場面を別のゲームにしてみようか?」
どうすればいいか?考えた末に、きゅん君が言いました。
「別のゲームって?」
ぐーちゃん、あんまり乗り気でなく、
適当に聞き返すと、きゅん君が答えます。
「例えば、玄関のドアを僕らの念力で開けようとするゲーム。そのうちママが開けるだろうから、それは念力のおかげというルールにして」
「じゃあまあ、それでやってみましょうか」
と、ふたり、さほどやる気もなく、何となく、
「開けー!開けー!」と言っていたら、
だんだん熱がこもってきて、楽しくなってきて、
そんな時、やっとママがドアを開けて、
きゅん君も、ぐーちゃんも、「やったー!開いたー!」
と、ママが帰って来たのも合わさって、
大盛り上がりして、結果、とても気分が良く、
遊びを終えた、おふたりでした。
ちなみにママが家に入るのが遅かったのは、
車内で所用で電話をしていたからでした。

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