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朝の月

いぬうた市も気がつけば、陽がだいぶ短くなって、
例えば朝などは、今まではもう明るくなっていた、
時間もまだ暗かったりします。
そんな時は、ママもつい二度寝などしてしまうので、
きゅん君と、ぐーちゃんもママに従って、
また眠りについたりしています。
そうやって、辺りがすっかり朝の景色になって、
本格的に起きることにして、ふと窓から空を見上げると、
青空にうっすらと月が浮かんでいるのを、
目撃した、ぐーちゃんです。
「まあ、お月様。まだそこにいらしてくれていたの?もしかして、ぐーが起きるのを待ってて下さったのかしら?それはそれは、ぐー嬉しいわ。お月様も真ん丸でお元気そうで何よりです。また今晩、お会いしましょうね」
と、ぐーちゃん、月に向かって言ってから、
一目、きゅん君に見せたいと思って、
「あっ、ごめんなさい。やっぱりちょっとお待ち下さらない?きゅんにも教えてあげるから、あともうちょっとだけ」
と慌てて言って、ベッドの隅っこでまだ寝ている、
きゅん君のところに行きます。
「ほら、きゅん、いつまで寝ているつもり?お月様が待ってて下さっているのよ。とっとと起きなさいよ」
ぐーちゃんがそう言って起こしても、
「そんなことある訳ないだろ。だって外はもう明るいだろ。とっくにもう月は消えているよ。ぐーは寝ぼけているんじゃないか?僕はまだ眠いんだから邪魔しないでくれ」
なんて、ぐーちゃんの言うことを全く信じず、
てんで相手にしてくれません。
それでもひつこく起こしていると、きゅん君も、
さすがに観念して、とりあえず窓辺に行って、
空を見ると、案の定、月の姿はもうありませんでした。
「ほら、月なんか何処にもいないじゃないか。ぐー、寝ぼけるのも、いい加減にしろよ。あーあ、せっかく気持ち良く眠っていたのに、ぐー、どうしてくれんのさ」
と、それからグチグチ、ぐーちゃんにイヤミやらを散々言って、
ぐーちゃんは、ぐーちゃんで、
「本当にさっきまではいらしたのよ!これはきゅんがダラダラと起きるのが遅いせいよ!ぐーは嘘つきじゃないもん!」
などと言い返し、その後当然のようにケンカになって、
爽やかな朝が台無しになって、
ぐーちゃんは月にその怒りをぶつけます。
「もう、お月様のバカ!あなたのせいで、きゅんから嘘つき呼ばわりされたわよ。何でもうちょっとだけお待ち下さらなかったの?ぐー、あれだけ言ったのに!今晩お会いしたら覚えていらっしゃいよ!」
と、もう月がいない空に向かって、吠える、ぐーちゃんです。
そしてその晩が来て、でもその日は雲で、
なので月の姿は見えませんでした。
きっと、ぐーちゃんを恐れて姿を隠したのかもしれませんね。

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