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フードはコロコロ転がって

これは、ある夕食時の出来事です。
舞台は、いぬうた市の、きゅん君と、ぐーちゃんの家で、
登場するのは、その、きゅん君と、ぐーちゃんですね。
で、その夕食時、いつものように、おのおの別の場所で、
ママからご飯をもらって、それを夢中で食べていました。
ご飯もいつものフードで1粒が、
きゅん君、ぐーちゃんの鼻の穴くらいの大きさです。
それがお皿こんもりに盛られていて、むしゃむしゃと、
ふたりノンストップハイスピードで食べていた時のこと、
ぐーちゃんのお皿から、フードの1粒がコロコロと、
こぼれて転がっていったのです。
さあ、どうする?
瞬時に、ぐーちゃん考えます。
片方の目で、お皿の残りのフードを見ながら、
同時に転がり続けるフードを、
もうひとつの目で置い続けながら。
そして考えます。
一旦食べるのを止めて、フードを捕まえるか?
それとも、このまま食べ続けて、食べ終わったら、
転がったフードを拾って食べるか?
素早くも逡巡した結果、ぐーちゃんは、
このまま食べ続けるのを選びます。
しかしこの選択がのちの後悔を呼ぶとは、
この時の、ぐーちゃんには、思いもしなかったのです。
ぱくぱくぱく。と、フードの美味しさを、
堪能した時間も、すぐに過ぎ去って、
気がつくと、お皿には1粒もフードがなくなっていて、
ああ、今日もまたご飯を食べ終わってしまった。
と一抹の悲しさを感じていた、ぐーちゃんでしたが、
その時、あることを思い出しました。
そういえば、食事の最中に、フードさんが1粒、
お皿から転がっていったわ。そうよ。
ぐーにはまだあの1粒さんがあるじゃないの。
で、その、ぐーの1粒さんは、
どこにいらっしゃるのかしら。
そう心の中で思って、キョロキョロと辺りを見回す、
ぐーちゃんです。
しかし、その1粒が見当たりません。どうしても。
見ても、どこを見ても。斜めからも見ても、
ないのです、その1粒が。
思わず、声をあげる、ぐーちゃん、
「ない!ない!ないわ!ぐーの大切な大切な1粒さんが!あろうことか見失ってしまった!ぐーとあろう者が!ああ、一体どこに行ってしまわれたのかしら?あの1粒さん」
その突然の、ぐーちゃんの声に、ちょっと離れた場所で、
ちょうど食事が終わったばっかりの、きゅん君が、
驚いて、また声をあげます。
「何だよ、ぐー。びっくりするじゃないか。せっかく、ご飯を食べ終わって、その余韻に浸っていたのに」
「きゅんの余韻なんか、どうでもいいわ!それより、ぐーの1粒さんよ!大事な大事な、ぐーの1粒さん!」
パニック気味の、ぐーちゃんは、きゅん君などは、
お構いなしで、まだまだあきらめず、捜索場所を拡大して、
くんくんと鼻を使って、うろうろ探し歩きます。
果たして、ぐーちゃんの1粒は見つかるのでしょうか。
それは残念ながら否です。
だって、あの1粒は、コロコロと転がって、
きゅん君のご飯のお皿の場所までいって、
それを、きゅん君、てっきり自分のモノだと思って、
パクッと食べたばっかりでしたから。

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