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空に託す

青空がいっぱい広がっている、今日の、いぬうた市です。
きゅん君は、この空を自宅の2階の、
ベランダから眺めています。
大きな大きな空をずっと見ていると、
きゅん君も空から見守られている気持ちになり、
さんさんと降り注ぐ日差しも伴って、
それはそれは大変心強い感情を、
きゅん君に与えてくれていて、
きゅん君はますます、この広い空に魅了されてしまうのでした。
「何て頼もしいんだろう、空って。思い切って、全ての身を任せば、何でも叶えてくれるような気にさせてくれる大きさがあるんだよなあ」
と、寝転がって、身を任す気まんまんの、きゅん君です。
「試しに僕を浮かせてみてくれないかな?」
そう言って、しっかり空を見つめて、
空と一体になるようなイメージをしてみます。
すると不思議なことに、本当に身体が軽くなって、
宙に浮けるような気がしてきました。
「いける!いけるよ!あともうちょっとだ。
空よ。あなたに僕を託しますので、身体を預けますので、どうぞ、浮かせて下さい。それはあの雲のように」
そうやって、更に、きゅん君が集中をした時、
階段をドタドタっと小うるさく、
駆け上って来る音が聞こえました。
同時に、「きゅん、いるー?」と言う声も伴って。
そうです。ぐーちゃんです。
ぐーちゃんがやって来たのです。
たちまち集中力が削がれた、きゅん君が、
「ぐー、ちょっと静かにしてくれないか?何故なれば。僕は今から大事な用事をこなさないといけないのだから」
と、言いながらも、何とか集中力を回復させようと、
がんばっていると、そんなことはお構いなしの、
ぐーちゃんが、全く静かにすることなく、
どんどん、きゅん君に近づいて来ます。
「えーっ?今何て言ったの?ぐー、よく聞こえなかったー?でも、ベランダにいるのは分かったから、すぐに、ぐーも行くわー!カミングスーンの乞うご期待!バイぐー」
間近にいるにも、かかわらず、
さっきより、より、けたたましく、
登場しようとしている、ぐーちゃんに、
「ぐー、うるさいったら、うるさい!もう、ぐーがいると、僕は雲になれないじゃないか!全く!ぐーのせいだぞ!僕が空と一体になれないのは!せっかく空が迎えてくれようとしてるのに!」
と激烈に怒って、もう浮くどころの騒ぎではなくなって、
ぐーちゃんは、ぐーちゃんで、何で怒られているか、
皆目分からず、ただただ、きょとんとするばかりの、
いぬうた市の大きな大きな空の下の小さな出来事でした。

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