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狭い路地での出来事

「あっ、猫さんよー!」
と、突然、いぬうた市の空の下にとどろいたのは、
飼い主と散歩中の、ぐーちゃんの声で、
走行中、ふと、横を見ると、そこににゃんこがいた訳で、
気がつけば、思い切り叫んでいた訳で。
その、ぐーちゃんの叫びを聞いた、きゅん君、
ぐーちゃんも見ている方向を慌てて見ます。
すると、そのにゃんこもふたりの方を見ていて、
それも挑発するような、不敵の笑顔で、
それに、かちん!ときた、きゅん君、
リードでつながっている、飼い主共々引っ張って、
にゃんこのいる方に向かいました。
「あいつ、勘弁ならん!僕らを見て笑いやがった!バカにしやがって!捕まえて気の済むまで、噛みついてやるー!」
と言いながら。
「きゅんの言う通りよ!ぐーを見て笑うなんて絶対許さないんだからー!」
と、ぐーちゃんも、きゅん君に合わせて、
飼い主が持つリードを引っ張り、走ります。
なので、仕方なく飼い主も、
ふたりの行く方向に合わせます。
近づくと、にゃんこは、するりとふたりに背中を見せ、
ゆっくりと歩き出し、通りから入った、
狭い路地に姿を隠しました。
にゃんこを追いかける、きゅん君と、ぐーちゃんも、
遅れて路地に入ります。
路地の入り口は階段になっていて、
そこを必死に駆け上りました。
「あれ!何処に行きやがった!いないぞ!いないぞ!」
「本当だわ!あの猫さん、何処に消えたの!」
どうやら、きゅん君も、ぐーちゃんも、
にゃんこを見失ったようです。
一旦立ち止まり、辺りを見回します。
その路地に見覚えのない、ふたり、
そこは初めて来た場所のようで、きゅん君、
ポツリと言います。
「下の道はいつもよく通っているけど、そういえばこの階段は登ったことがなかったな」
そう思った、ぐーちゃんもキョロキョロしながら、
「本当ね。ぐーもここ初めてだわ。でも何て言うか、ちょっと不気味さんなお場所だわ。お夜に来たらちょっと怖いかも」
そこは、ぐーちゃんの言う通り、下の大きい道とは、
ガラッと雰囲気も変わって、階段もくねくね方向を変えて、
何とも先が見えなくて、確かに気味が悪い路地だったのです。
そんな路地を見ているうちに、
きゅん君の頭にある妄想が膨らんできました。
「もしかしてここはあの猫たちのアジトかもしれないよ。僕らを何処からか、ジーッと様子を伺っていて、それも大量の猫たちが僕らを見つめていて、僕らがちょっと隙を見せた途端、
一気一斉に、飛びかかってくるのかも」
きゅん君のその発言に、ぐーちゃんがうなずきます。
「きっとそうだわ。これはきっと、猫さんたちのお罠なんだわ。ぐーたちをおびき寄せておいて、お返り討ちに合わせるつもりよ。ぐー、あの猫さんたちにボコられるのイヤ」
と、ぐーちゃんすっかりおじけづき、
隣の、きゅん君も最初に追いかけて来た、
勢いも何処へやら。と、どんどん怖くなってきて、
「なあ、ぐー、帰ろうか」
と、きゅん君が言えば、
「うん。ぐー、早くおウチに帰りたい」
と、ぐーちゃんも答えて、
すごすごとこの狭い路地を引き上げる、
ふたりでありました。
ここには二度と近寄らない!と誓いながら。

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