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対立する議論のディベート化と、それの回避方法。「前に進む議論」とは。

個人やチーム、組織の間で対立が発生することは良くあり、解決をしなければならない。しかし、わざわざ意見を交換するMTGを組んだのに、2時間ひたすら言い合い何も進展がなかったり、全く異なる話題へと論点が変わり、MTGが終了することがある。

一体その時間で何が起きているのか、そしてそのような事態を回避し前に進むにはどうすれば良いか、文章化しておこうと思う。

議論そのものの目的化、ディベート化

例えば個人Aがある提案をしたとする。それを個人Bが確認し、何点か指摘をする。指摘された部分に対し、Aは容認する部分を除外しつつ指摘された中でも対抗できる部分で対抗してくる。BはAの指摘に対し、お互いの解釈のずれの整理や別な情報のインプットなどをしながら対応する。これが繰り返され、お互い消耗戦となる。果たしてこの時、何が起こっているのか。

結論から言えば「議論そのものの目的化」つまり「ディベート化」である。「なぜ議論をするのか」という本来の目的が見失われたために、目的に向かっていくための手段であった「議論」自体が目的化する。つまり「主張の論理性」の評価に基づき、勝者と敗者を決定するゲームになってしまうのだ。相手の論理的接続が弱い部分や、信憑性が低い情報をめざとく見つけ指摘しポイントを稼ぐ。また戦略的に論点をずらし、自分が優位な論点に議論を持ち込む。そちらの論点で相手を攻撃し、元の論点と無理矢理接続することで、元の論点でも相手が悪いと思い込ませるなど。もし本当にディベート大会であれば、第三者のジャッジの上で勝者と敗者が決定するのだが、本来ディベートでない議論についてはそんなもの存在しないため、着地点が見えず、何も進まなくなってしまう。

「なぜ議論しているのか」、目的を互いに確認し議論自体の目的化を防ぐ

上の個人Aと個人Bの論戦の場合、議論していく中で「なぜ議論しているのか」が見えなくなり、お互いに共通認識を持てなくなっている。この場合はおそらく「個人Aの提案を改善し、その提案が良い結果を生み出せるようにすること」が議論の目的だろう。それを互いに認識することで、議論自体の目的化を回避できる。

もっと言えば、目的の認識は、議論する側にとっての「逃げ道」になるのである。「提案を改善し、より結果を生み出すため」と認識しているなら、自身の間違っている点や修正点を受け入れることができる。そこに「負け」などのイメージはつかず、「より良くなった、前進した」というイメージがつくからである。しかし目的が認識されないと、「間違っている、修正が必要である」はすなわち「負け」のレッテルとなり、どうにか戦おうとしてしまうのである。良くない点を受け入れるという「逃げ道」が失われてしまっている状態である。

「なぜ議論しているのか」「この2時間のMTGはなぜ必要なのか」そのような基本的な問いかけを忘れず、表現し共有することで議論の雰囲気は全く異なってくる。常に確認し、「こうすればもっと良くなるのでは」という表現を議論の中に組み込んでいけば良い。これは対立をしていない時の議論でも重要なものである。

議論のゴール、着地点、落とし所を明確にする。それもアジェンダの段階で。

これは実際の議論の瞬間というより、議論に入る瞬間やもっと言えばそれ以前のアジェンダを組む段階の話である。議論がうまく進行しなかったり、思うようにならない場合、その理由がファシリテーション(要は当日の議事進行)だと考える人も多いが、実はアジェンダ自体にも要因がある時が多い。

アジェンダを組む段階では実にさまざまな要素が検討対象である。なぜこのメンバーが、なぜこのタイミングで、なぜこのテーマを、なぜこれだけの時間をとって議論するのか、など。それぞれの問いかけに対する回答を少しでもぼやかし、中途半端にしておくと当日の議論がメチャクチャになる。そして何よりも重要なのが、「議論の落とし所をどうするか」、「どういう状態に着地するか」である。議論としてのゴール設定であり、これが明確であるからこそ、ゴールに向かって建設的な議論が進むのである。

私もある時から、アジェンダを組む段階で、議題それぞれに「ゴール(着地点)」と「目的(なぜ議論するのか)」を問いかけ、文章化してから当日の会議を迎えるようにした。また、少しでもゴールや目的が不明瞭な議題は徹底的に排除した。実はこれにより、今まで存在していた「とりあえず議論してみよう」や「議論しながら方向性を決めていこう」のような「時間ばかり食って進展しない、かつ議論した気にはなる」議題が徹底的に削ぎ落とされ、本当にチームが前に進むものだけが生き残った。もちろんブレインストーミングはまた別の話であるが。常に問いかけ、必要性を持って議論するよう心掛けている。


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