本気度を疑う政府のやる気(1):賃上げ
インフレがあって、実質賃金が目減りしているので、賃上げ、というムードになっている。安倍政権時代は政府が産業界に賃上げを要請していたし、今回は経団連が賃上げを言っている。労組は何をしているんだよ、と思うけれども、組織率16%だからなあ、とも思う。でもまあ、労組も賃上げを要求している。
ということなのだけれど、基本的に、政府の本気度は疑わざるを得ない。産業界は、まあ、自社の社員だけの話だから、しょうがねえなあって思うだけ。下請けを含めた中小企業のことを考えているとは思えない。
安倍政権が賃上げを要請していた時にも、本気ではなかった。法人に対しては法人税減税という確実なものを与えつつ、労働者に対しては口約束だけっていうのは、どうかと思う。そしてその構造は変わらない。
政府は効果のある賃上げ政策がとれるはずだ。それも、いくつもある。
わかりやすいのは最低賃金の引上げ。時給1,500円に引き上げたら、異次元に近づく。でも、これで先進国並みに近づく、というくらいだからね。
時給引上げは中小企業を苦しめるっていうけど、中小企業の経営者と労働者のどっちかが苦しむなんて不合理。ではどうすればいいのか。
少なくとも、公共事業においては、働く人の所得水準についても開示し、一定の水準を満たさない場合は応札できないようにしてもいいんじゃないかと思う。実はこれ、働く人が社会保険や厚生年金に入っているのかどうか、ということも、見積もりに含めるということが行われているので、不可能な話じゃない。
こうしたことが、民間に波及すれば、取引先の給与水準にも敏感になるし、値上げを受け入れざるを得なくなる。気候変動対策のスコープ3と同じ。
もう1つ、政府にできるのは、介護福祉士や保育士の所得水準の見直し。特に介護は介護報酬が決まっているので、賃上げしにくい状況にある。そこを見直すこと。
そしてより根本的な政策として、雇用の規制強化。非正規雇用の縮小や派遣労働の仕組みの見直しなど。例えば、派遣労働者は原則として派遣会社の社員であることを要件とした上で、派遣先があろうがなかろうが、給与水準を維持すること。派遣労働のコストが上昇するが、そもそも便利に使えるものは高くていい。そして、本当はこういうことを、連合なんかは要求すべきだし、その結果として組織率も上がるんじゃないかな。
このくらいの改革をしなかったら、異次元からほど遠いものにしかならない。そしてこの程度の改革もできないようであれば、日本は安い労働力の国になるしかない。安価な労働力があるからといって、日本に工場をつくるのは、台湾の半導体メーカーだけじゃないと思うぞ。
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