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なぜこうも、日本共産党はぱっとしないのだろう?

 統一地方選挙の前半が終わって、日本共産党の退潮が報道されている。
 除名問題があとをひいている、とか、そんなことも言われている。
 日本共産党が掲げている政策は、自民党や、まして維新の会と比べればよほどましなで、もっとがんばってほしいのだけれども、そうはなっていない。

 日本共産党が支持を集めきれていないのは、有権者のニーズに応えていないからなのだと思う。
 そして、それは二つの理由からだ。

 第一に、日本共産党が訴える政策は、なかなか実現されない。まあ、政権をとらないのだから、簡単に実現できるわけではないのだけれども。それでも、多少の議席と世論を喚起する力があれば、与党も考えざるを得ない。

 でも、第二に、日本共産党が訴える政策が古くなっているということもあるのではないか。
 日本共産党もまた、日本的文化の中にあると感じている。それは、なかなか新しいことができないということ。批判を恐れて同調圧力の中にあるということだ。
 けれども、そうであるほど、マイノリティの声が届かなくなる。
 結局のところ、「守り」に徹していて、「攻める」ことができていないのだ。

 そしてこのことは、大江健三郎について語る上で、というか9条の会について批判するということと同じだ。大江の世代は9条を守ることの大切さを訴えるけれども、より下の世代にとっては、10条以降を実現することの方が重要性が高い。けれども、そうしたメッセージを出せないことが、9条を守る運動の衰退につながっている。

 日本共産党に話を戻そう。例えば、ジェンダーの問題がそうだ。近年、日本共産党はこの問題を大きく取り上げている。それはいいことだと思う。けれども、どうしてもとってつけたような感じがする。
 日本共産党がジェンダーをとりあげるようになったのは、日本社会がその問題をより重視するようになったからだ。
 ジェンダーがそれほど重視されていなければ、実際には重要な問題であったとしても、日本共産党は大きく扱わなかっただろうし、かつてそうであった。
 その証左として、日本共産党の国会と地方を含めた議員数は男女で拮抗しているが、中央委員会などの幹部では女性が少ない。幹部の男女比が過去の議員の男女比を反映しているからだ。
 さらに言えば、人口のおよそ6%が同性愛者だとされているが、そうであれば日本共産党の議員の6%はそうなっているはずだ。LGBTQの問題を取り上げる日本共産党ではあるが、その代表となるような議員は育っていない。

 日本共産党もまた、日本国憲法第9条を守ることを強く主張する。それは必要なことだ。
 けれども、第10条以降を実現していくことについては、あまり強く主張しない。もちろん、何も言わないわけではなく、生活保護や教育など、さまざまな場面での平等性が損なわれていることに対しては批判をしている。
 でも、それらはいずれも、同調圧力の中での守りでしかない。

 「攻める」ことはそうではない。どういう社会をつくっていくのか、そのビジョンを示すことだ。
 さすがに「日本を共産主義国家にしていく」というビジョンを示すことはないだろうけれども、でもせめて、あらゆる場面で基本的人権が守られ、経済が適切に循環し、豊かさを分かち合える社会がどういうものなのかを提示くらいしてほしいと思う。
 その上で、実行すべき政策はいくらでもあるし、それはどんどん打ち出してほしい。

 日本が少子高齢化が進み、人口が減少している理由の1つは、間違いなく若い世代が社会のマイノリティとなってしまったことだ。
 政府はより声の大きい高齢者への政策を充実させたほうが、支持につながると考える。
 でも、そんなものは、若い世代に見限られる。
 そして、この傾向は日本共産党も例外ではない。

 日本共産党は、もっと「攻め」の政策を打ち出すべきだ。目の前のことであれば、給付型奨学金などとケチなことを言わず、大学まで無償化するとか、給食無償化にとどまらず、学校のあらゆる費用を無償化するくらいでいい。制服もランドセルも無償化でいいくらいだともおもうけれど、いっそこれらは廃止した方がいい。
 教科書検定も問題にされるけれど、こんな制度も「従軍慰安婦削除」が問題なのではなく、検定制度そのものが問題だっていうくらいでいい。
 最低賃金は1500円くらいでいいけど、日本共産党がそれを言わないのは、中小企業の経営者の支持が得られなくなるからではないかと思っている。でも、これからは大手企業は取引先企業の給与水準を気にせざるを得ない時代になってくる。
 選択的夫婦別姓や同性婚は当然として、国籍の現地主義くらい言ってもいい。日本で生まれた子供が自動的に日本国籍を取得できるのであれば、日本で生まれた外国人の子供が強制退去させられることはなくなる。
 死刑制度の廃止もそうだし、生活保護の捕捉率の向上と給付金額の引き上げももっと言ってもいい。
 気候変動問題であれば、石炭火力廃止も重要だけれど、建物の断熱性能向上の義務化と、とりわけ公営住宅の断熱化は効果的な政策だ。
 フランスのように、婚外子に対する手厚い支援も必要だろう。

 そして、財源の問題は棚上げする。
 武器を買うときは財源の棚上げが問題視されないのに、福祉予算の場合は財源が問題にされるのはアンフェアだ。
 それに、教育無償化や賃金上昇は結果として生産性を高め、税収を増やす、という詭弁でも使っておけばいい。

 本当に、しんぶん赤旗の日曜版は長い事読んでいるけれど、主張はもっともなのだけれど、新鮮味がない。
 それが退潮の原因だろう。

 新鮮味がないといえば、志位和夫も同様だ。公選制を否定しているけれど、場面場面において優先する政策は変わってくる。その政策を重視するのか、公選制の理由はそこにある。
 何を優先して実現していくのか、その討論を可視化するためにも、公選制は必要だろう。
 それを否定することは、「政権をとるきもない日本共産党の幹部は、自分たちの利権を守ることに精一杯」というように見られかねない。党には党の論理があるけれど、それは党員以外の支持者には届かない。
 日本共産党は、一方で若い議員も育ってきている。
 変わるチャンスなのだと思うのだが。
 

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