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東京は芝神明、浜松町あたりのものがたり

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昭和30年代、東京は芝神明、浜松町あたりをぶらぶらしていた少年によって、浜松町という土地とそこで暮らしたひとたちとのあいだに紡がれた交情の断片(かけら)がものがたれる。 And …
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2021年6月の記事一覧

昭和30年代少年の浜松町地政学 【東京は芝神明、浜松町あたりのものがたり】

昭和30年代少年の浜松町地政学 【東京は芝神明、浜松町あたりのものがたり】

野口富士夫『私のなかの東京』(昭和53年6月25日発行)は、あとがきに、「可能な限り詳細に東京の現状をさぐって、それに明治以後の文学作品と、私の記憶のなかにある過去の東京の姿を重ね合わせてみようとしたものである。」とあり、さらに「文学作品に深入りすることは極力避けて、現在の市街のありかたと回想に重心をおいた」とあるように、著者の回想に基づいた、東京の街への再訪記となっている。

著者は、明治44年

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モダンな風は海岸都営アパートから 【東京は芝神明、浜松町あたりのものがたり】

モダンな風は海岸都営アパートから 【東京は芝神明、浜松町あたりのものがたり】

山手線浜松町駅の東側には、旧芝離宮恩賜庭園があり、蓬莱山を模した中島をたたえる大きな池がある。かつては、江戸湾から潮の匂いを運んだ海風が、池の水面を揺らしていたこともあったが、今は、巨大なビル群からの大きな隙間風や人いきれで水面が揺らいでいるようだ。しかし、ビジネス街となってしまった浜松町の中で、江戸の昔と変わらぬ佇まいを今に残している空間で、地元の人間は、愛着を込めて「芝離宮」と呼んで親しんでい

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