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文字だけで表現する

https://note.com/tensei195/m/me19fd748c0a9

この記事は↑のマガジンにまとめています。

私が「○○号の嘆き」というアカウントを約2年やってきて、大切にしてきたこと、自分の中のルールをいつかどこかで文字にしたいなと思っていました。発表せぬまま、突然アカウントを消したわけですが、私があのアカウントで学んだこと、心がけてきたことが誰かのお役に立てるかもしれないと恩着せがましく思ったり、私自身が○○号だった約2年を忘れないために文字で残したいと思います。


「うちの息子(6)はいい意味で言うと気持ちの切り替えが早い。悪い意味で言うと何回注意しても忘れてわらび餅持った状態で扇風機の前に行く。」

8万いいねを超える反響がありました。
このツイートを元にいくつか解説したいと思います。

①構成


ビジネスに置いて「結論から先に言う」これはもう鉄則だと思います。私も入社以来部耳タコ状態で言われてきました。そしてあれから13年新入社員にも耳タコになるほど注意しているので、私に話しかけるときは絶対に結論からお願いします。でもここはTwitter、140字の世界。私は後半にキャッチーなフレーズを置く文章が好きです。前半はあくまでも序章、でも逆説的に書いた後半と繋げると意味が繋がって、もう一度前半を読みたくなるような文章が好きです(好みもあるとは思います)。

「うちの息子(6)悪い意味で言うと何回注意しても忘れてわらび餅持った状態で扇風機の前に行く。いい意味で言うと気持ちの切り替えが早い。」

仮に構成を逆にしてみました。
折角の文章を100%活かしきれていますか?
私が読み手に伝えたいことは「わらび餅を持った状態で扇風機の前に行くことの悲劇」です。この仮の文章だと、正直何が伝えたいのかイマイチ伝わりきらないと思います。なので敢えて前半は抽象的に、後半は具体的に、読み終えたあと前半の意味が分かるそんな構成にしました。
幸いなことに私のフォロワーさんは国語力に秀でた方が多く、この構成について何名か引用で触れてくださっている方もいました。ありがたくて、思惑が全部バレてて恥ずかしいとはこのことです(笑)

②情景を委ねる

「わらび餅持った状態で扇風機の前に行く」
実際に起こったことは、私がわらび餅の残りを冷蔵庫に片付けている間に、息子が扇風機の前を通ってソファーテーブルに向かい、結果きな粉がふっ飛ばされて大惨事になった。運悪くそこに畳んだばかりの布巾もあって、全部洗い直しになって大変長く手間がかかった。

どうでしょうか。読んで楽しいですか?そもそも最後まで読む気になりますか?私なら絶対に最後まで読みません。むしろいいねも絶対に押しません。ご祝儀いいねも無理です。

ここは敢えて最小限の情報だけを載せて、情景は読み手に委ねることにしました。日本に住んでいたら誰でも馴染みのある「わらび餅」と「扇風機」。どちらも知らない人はいないと思います。この言葉を2つ並べただけで、わらび餅を持って扇風機の前に行くとどんなことが起こるか。ほぼ100%の人が情景が頭の中に浮かんで、惨劇を理解してくれると踏んで、敢えて端的に書きました。

文字数の問題でいうと、Twitterは短歌や川柳と同じで文字数制限があります。ツラツラと書くことが悪いことだとは思いませんが、私は140字の制限の中で表現することを目標にしていました。そうすると泣く泣く削らなくてはいけない言葉も出てきます。そんな時に、例えば「わらび餅」「扇風機」この2つを使っただけで私が表現したい情景はほぼ全員に伝わるのです。
最小限の情報をだけを提示することによって、読み手の過去の体験や想像を引き出すことができます。「やったことがある」「鰹節でもなる」「化粧品のパウダーでもなる」等、読み手の体験も多くコメントを頂きました。体験したことの無かったから人も文字で想像ができれば、替え歌や「笑ってしまった」等イメージが具体的に浮かんでコメントをくれる。すると、このたった66文字が多くの読み手とコメントに広がっていくのです。

よく140字では書ききれないと仰る方がいますが、全て書ききるのは無理です。140字で上手く書きたい、多くの人に読んでほしいと思っている方は、敢えて書かないという選択も使ってみて欲しいなと思う次第です。

③難しい言葉を使わない、でも雑な言葉も使わない

Twitterは老若男女、学歴、経歴問わず様々な方がいます。その人達の垣根を超えて訴求するためには言葉選びも重要です。私は敢えて「アサイン」「リソース」「レジュメ」等のビジネス横文字、意味不明な難しい慣用句は使いませんでした。
ニュースや教科書がそれに当てはまりますが、誤認を呼び起こすリスクのある言葉は使いません。誰が見ても、聞いても理解ができる言葉を厳選して使うようにしていました。確かにカッコいい言葉ではありますが、少しでも多くの人に伝えたいのであれば、意図的に避ける言葉です。結果的に老若男女問わず多くの人が読んでくださっていたので、正解だったと言えるのではないでしょうか。

逆に「マジで」「ホンマ」「それで」等、乱暴な話し言葉や雑な接続詞も意図的に避けていました。ある程度ビジネスに精通している方や、言葉を仕事にしている読み手の方はこうした雑な言葉はあまり好みません。逆に「子供の頃は国語苦手だったのかなぁ?察し察し」な方が突然現れたりするので、自らを守るためにも敢えて選ばなかった言葉です。

④言葉の温度や語尾、韻を合わせる。

③で難しい言葉は使わない雑な言葉は使わないと書いたばかりですが、敢えて書くこともあります。そんな時には言葉も温度感には特に注意していました。例えば息子が「イエーーーーイ!!めっちゃホォリデェェェエエエエーー!!」と言って学童から出てきたとします。ここは息子の迸るエネルギーや若さを表現しているので、敢えてそのまま書きましたが私の心情、情景は敢えて「泥のように疲れて迎えに行きました」「まだ月曜日です」等、淡々と温度は低く書きました。
この温度の落差で息子のテンションを強調することもでき、更には登場人物のキャラクターをしっかり区別することもできます。

また投稿する前には、「てにをは」「ですます」等の細かいところも必ず合わせるようにしていました。もっと言えば何度も何度も読み返して、リズムやテンポも確認していました。急に早口になったり、読んだときに詰まる箇所は極力ないように細部にも注意しました。韻を合わせると尚読みやすくなるので、ツイートする前に少し意識してみてください。

ここまで書いて約2600字。
お付き合い頂きありがとうございました。
次回は日常の切り取り方について考察します。