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ニュートン家の事情 あとがき

ニュートンを妄想の中で幸せにしよう…!と決めてから約一年半、ようやく完結しました(^^; 

創作の中のニュートンというキャラクターは自分史上、最高難易度のキャラクターで、何度もネームを書き直して、真っ白で浮かばないこともしばしば、気づくとこんなに時間かかってしまいました。色々と至らない点があったと思いますが、自分の中ではなんとか納得のいくラストが描けたかなと思っています。今回完結できたのは、とても良い経験になりました。

ということで、この完結記念のハイテンションに任せて、ここに至る道のりや、最終回の元ネタをつらつら書きたいと思います。

ニュートン家の事情構想段階のあれこれ

実はキャサリンの目線から描くというアイデア自体は10年くらい前に思いついていて、ニュートン家の事情もその時からのタイトルでした。当時はギャグ路線で、ニュートンの奇行を「家政婦は見た」のように観察するマンガでした。ニュートンも真理の海辺で遊ぶ子どもにすぎませんでした(笑)

構想ノートより

そのほか、ネコ目線というのも考えてました。「吾輩は猫である」ですね(^^;)秘密の箱にはもふもふグッズがいっぱい隠されている設定でした(笑)ただのキャラ萌えマンガです。

構想ノートより

…という構想から数年経って、ニュートンと偽金造りという本でダークサイドのニュートンを知ってから、ニュートンの孤独な心の内にも触れたいなと思うようになりました。それにはもっとシリアス路線にまで踏み込まないとやりたい事ができなそうで、造幣局の監事時代を題材にしたネームをこねくり回したりもしていたのですが、最終的に今回のお話になりました。

造幣局の話は第一話のみの未完なのですが、マンガのネーム講座に通って頑張って作ったものなので、期間限定でこっちに掲載しておきます。未完の理由は、推理のトリックが思いつかなかったからです…orz (世の中の推理小説家さん凄いです)

ニュートンの手紙について

ニュートンの内面を描くのに、キーパーソンとなるのはやはり姪のキャサリンかなと思いました。というのも、ニュートンの手紙に人柄の表れた温かみのあるメッセージというのはほとんど無く、殆どの唯一残っているのが、マンガの最後に紹介したキャサリンに宛てた手紙だからです。(他に親しかったファシオという研究者もいるけど短期間で別れているので割愛しました)

この手紙はキャサリンが天然痘(small pox)に罹った際にそれを心配する手紙です。天然痘は死亡率の高い病気だったので、ニュートンの心配ぶりが伝わってきます。以下に原文を引用します。

I had your two letters & am glad the air agrees with you & th{ough the} fever is loath to leave you yet I hope it abates, & that the {re}mains of the small pox are dropping off apace. (中略)  Pray let me know by your next how your f{ace is} & if your fevour be going. Perhaps warm milk from the Cow may {help} to abate it. I am
Your very loving Vnkle
Is. Newton
2通の手紙を受け取りました。空気があなたに合っていてうれしいです。熱はあなたから離れたくないようですが、和らぐことを願っています。(中略)次回は、あなたの体調と発熱の様子を教えてください。牛の温かいミルクが、症状を和らげてくれるかもしれません。(DeepL翻訳)

出典 http://www.newtonproject.ox.ac.uk/view/texts/normalized/MINT00195

ここで注目したのがラストの一文

I am
Your very loving Vnkle
Is. Newton

です。

事務的な手紙の多いニュートンにLoveは超珍しいのではと思ったのですが、文法的に「あなたが大好きな伯父」とも取れるので、これはどういう意味かと日本語ペラペラのアメリカ人の友人に確認した結果「あなたを愛(いと)しく思っている」伯父という意味だと教えてもらいました。

なるほど…!そういう言い回しなんですね(勉強になりました)。

lovingをどう訳すか、愛おしくか大好きなのか、色々悩んだ末に創作のシナリオに沿って、とても大切に想っている、としました。日本語にはこれにあたる自然な表現が無いのでなかなか難しかったです。翻訳のプロではないので間違っているかもしれません。その辺りは何卒ご容赦くださいm(_ _)m

ラストの庭のシーンについて

ニュートンがリンゴが木から落ちるのを見て、万有引力を発見したという逸話は、キャサリンがニュートンから聞いたものだそうです。史実のキャサリン曰く、庭のリンゴの木の下で二人でお茶をした時に、ニュートンがふいに語り出したとか。
実は元々のネームには入っていなかったシーンなので、やや唐突に感じられたかもしれません。ただ、キャサリンとの親しさのわかるこのシーンをラストに持ってきたくて、当初のネームを変更して入れて良かったと思っています。

都会のロンドン邸宅の中庭にリンゴがあったとはあまり思えないので、実際は晩年過ごしたこっちのお屋敷のエピソードかな?と思っています。(それにしても凄い豪邸)

入れるか悩んだ母親とのエピソード

ニュートンの母、ハナは熱病で亡くなるのですが、病気の知らせを受けたニュートンが仕事を休んで自ら看病に当たった(一説では不眠不休で)という実話があります。ニュートンは薬学の知識もあり、薬は全部自分で調合していたそうなので、このときも自分で煎じた薬を与えていたはずです。結局、必死の看病も虚しく亡くなってしまうのですが、その後半年も休職していたことからかなり落ち込んでいたのではないかと思っています。

ニュートンは幼少期に母親と離れ離れになり、一時は「義父ともども家ごと焼き殺す」などと激しく恨みましたが、裏を返すと心の底では本当は誰よりも母親が大好きで、母の愛情に飢えていたのではないかと思っています。
ここからは妄想ですが、その母を、自分のもてる薬学の知識と技術のすべてを注ぎ込んでも救えなかったとしたら、ダメージは相当なもののはず。その悲しみや無力感といった気持が錬金術の研究へと向かっていたら…?物質や生命が生じる仕組みを研究して、賢者の石やエリクサー(一説には不老不死の霊薬)に辿り着こうとした動機がそこにあるとしたら…? あくまで創作ですが、本作ではそういう考えのもと、ニュートンの研究を描いてみました。

そしてもう一つ想像を追加すると、キャサリンがもしも母親の面影を濃く残していたとしたら。そのキャサリンが再び目の前で病に倒れたら… 彼はもう一度自分の研究で、母親の面影を残すキャサリンを助けられるのか。もしも失敗するとどちらも失うことになる…その恐怖を乗り越えられるのか。
このシーンはそういう思いを秘めながら描いていました。

ニュートン家の事情 最終話より

結局母のエピソードは割愛しました。母を入れると、どうしても母とニュートンの話になってしまうからです。ニュートン家の事情はキャサリンが主人公なので、泣く泣くバッサリ切りました(力量不足)。でもそのおかげで、キャサリンとニュートンの物語として最後のエンディングに辿り着くことができたかなと思っています。
なのでこれはただの妄想です。そんな事があったかもしれないと思って読んでいただくと、より深く楽しめるかと思っています(^^)♪ ←自己満足
母親との話は、いつか番外編として描いてみたいなーと思います。

おわりに

完結まで紆余曲折しましたが、ニュートンという人物を掘り下げることで、自分自身非常に勉強になりました。プリンキピアは未だに一般注以外読める気がしませんが、この物語をお読みいただいた方が、少しでもアイザック・ニュートンに興味を持っていただけたなら、本当に嬉しいです。

長文に最後までお付き合いいただき、ありがとうざいました。
また次の創作でお会いできれば幸いです。

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