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【広報チームより】「書店の時代は終わった」とどれだけ世間が言ったとしても《天狼院書店 Episode 0》

「街の本屋が潰れているらしい」
今から7年前の2013年、世間では、そんな声がじわじわと耳に入ることが増えてきていた。
私はその頃20歳になったばかりの本好きな女子大生で、本に関わる仕事がしたいなと、漠然と考えていた。
ただ、不安もあった。小さい頃から馴染みの書店が次々に閉店していた。幼いころ少女漫画を買い漁り、友だちと匂い付きの消しゴムを集めに行った「街の本屋」は、久しぶりに行ってみると、家電量販店に変わっていた。

「これから書店はどんどん衰退する」
「本が売れない時代だから」
「若者の活字離れが」

就職活動で書店業界について調べれば調べるほど、出てくる言葉たちは実にネガティブなものばかりで、大人たちは皆「書店は衰退する」という現実を受け止めつつあるように見えた。

けれどもそこで、私に衝撃の言葉をかけた大人が、一人だけいた。

「これからは書店の時代だよ」

それが、天狼院書店・店主の三浦だった。

まだ、南池袋にある立地の悪い・15坪の店舗しかなく、店主ひとりとアルバイトで回しているような時代からずっと、三浦はそう言っていた。

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2013年9月26日、天狼院書店は誕生した。

もともと大型書店で書店員をしていた三浦は、幼い頃から活字中毒だった。だから、書店員は天職だったのかもしれない。

宮城の農村で生まれた彼は、中学生になると宇宙に興味を持ち、アインシュタインやホーキング博士の本を、わかりもしないのにわかったつもりになって読んでいた。

高校生になって司馬遼太郎の本に出合い、本格的な活字中毒になった。司馬遼太郎、吉川英治、児島譲、山岡荘八などの歴史小説はもとより、三島由紀夫、川端康成、谷崎潤一郎、森鴎外、夏目漱石、大江健三郎などの純文学、カミュ、トルストイ、ヘミングウェイ、シェークスピア、スウィフト、スタンダール、ゲーテ、トマス・モア、ミルトン、ダーウィンなどの海外文学など分野を関係なく幅広く読んだ。このころから、文学を志すようになっていった。
大学生になると、授業にはほとんど出ずに、脚本や小説をひたすら書く生活を送った。

「学生中に作家としてデビューする」と大まじめに考え、賞に応募もしていたけれど、結局その夢が叶うことはなかった。

そのころ、アルバイトをしていた大型書店で声をかけられ、店長を務めるようになった。出版社の人々ともここで交流が始まり、今現在もそれが繋がっているという。

さて、ならばそのころの経験を生かし、とんとん拍子に天狼院書店のオープンにつながったのかというと、そういうわけでもなかった。

2009年に起業し、自分史の制作サポートサービスをはじめたり、雑誌を販売したりと果敢に挑戦を続けたが、どれもうまくいかなかった。なんとかかき集めた資金も底をついた。事業どころか、明日、どう食べていけばいいのかもわからなくなった。

その当時を振り返って、三浦はこう語っている。

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すべてを失い、借金を負った僕は、それでも生きていかなくてはならなかった。
すがりつける場所は限られていた。そもそも、大学を卒業していなくて、それまでほとんどフリーターとして生きていた僕を、雇い入れてくれる企業など当時はなかった。
生きていくために、僕がすがりついたのが、裏切って飛び出した古巣の書店だった。それでもなお生きていくために、社長と本部長に頭を下げた。
楽な状況でないにも関わらず、その書店は僕を再び雇い入れてくれた。ただし、それまでの店長などではなく、また一からのスタートとして、時給1,000円と月50,000円の提示を受けた。
本当に一からのスタートだった。決して高くはない給料だったが、僕は毎月決まった日に給料が入るということが、奇跡だと思えた。働くのが、面白くてしかたがなかった。明日、生きられるという実感は、こころを穏やかにした。
そこには見栄も矜持も承認欲求すらも、ほとんどなかった。借金を返して、自らを食べさせていく。ただ、生きていくために必死で働いた。
すると、不思議なことが起きた。
数々の素晴らしい本と出会った。
その本を作った人々と出会った。

振り返って考えてみると、僕を奈落に落としたのは本だった。
これだけやれば儲かる、あなたも必ず成功する、夢は叶えられる、といった類の本をむさぼるように読み、何者でもなかったのに、何者かのように勘違いした。その言葉に安易に反応し、起業し、一度、失敗した。
けれども、僕を奈落から引き摺り出してくれたのも、また本だった。

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すべては、逆境のなかから生まれた。

「これからは書店の時代だよ」

本屋がなくなる、人は本を読まなくなるとどれだけ世間が言ったとしても。
狂気と呼べるほどの熱気を持って書店というビジネスを動かし続けているのは、「本」に対する三浦なりの恩返しなのかもしれないと、今となっては、そう思う。

<広報チーム>

*写真は、一号店目である東京天狼院の図面を撮影したときのものです。

―天狼院書店とはー
天狼院書店は「READING LIFE」をテーマに、本とその先の「体験」を提供している新刊書店です。
書籍の販売はもちろん、
併設のカフェでは電源Wi-Fiも完備。
クリエイティブな作業や勉強もできます。
著者によるセミナーやワークショップも連日開催。
「本」=「有益な情報」と定義しており、
様々な形で「本」をお楽しみいただける本屋さんです。
また、当店には「海の出版社」の機能もあり、この場所から世界に本を送り出します。
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●2013年9月26日 天狼院書店「東京天狼院」(池袋)OPEN
●2015年9月26日 天狼院書店「福岡天狼院」(福岡天神)OPEN
●2017年1月27日 天狼院書店「京都天狼院」(京都祇園)OPEN
●2017年8月26日 天狼院書店「池袋駅前店」(池袋)OPEN
*現在のシアターカフェ天狼院
●2018年4月24日天狼院書店「Esola池袋店」STYLE for Biz(池袋)OPEN
●2019年5月31日天狼院書店「プレイアトレ土浦店」(茨城)OPEN
●2019年9月20日天狼院書店「シアターカフェ天狼院」(池袋)OPEN
●2020年6月8日天狼院書店「湘南天狼院」(湘南片瀬江ノ島)OPEN
●2020年天狼院書店「天狼院カフェSHIBUYA」(渋谷)OPEN予定
●2020年天狼院書店「名古屋天狼院」(愛知)OPEN予定
天狼院書店|HP
http://tenro-in.com/

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