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#飲食業界とIT

新型コロナウイルスによって生活様式が変化し、キャッシュレス決済、モバイルオーダーやセルフレジが急速に普及し、

そして、最近ではこれが当たり前になりました。

また人手不足解消や非接触目的で配膳ロボットを導入するお店も増えています。

ということで、今回は飲食業界のIT導入の現状について調べてみます。

【DX化は必要と認識している飲食店は多い】

ぐるなびは2022年7月28日に、同社サービスに加盟している飲食店313店舗を対象に、2022年4月22日~5月9日の期間で飲食店のDX化に関する調査結果を発表。

DX化については76%が「必要」と回答しています。

今現在、導入・利用しているシステムの種類では、「ネット予約システム」が最も多く71.2%。

今後の導入・利用の意向で最も多かったのは「モバイルオーダーシステム」で、38.7%が今後導入したいと回答しているという。

その理由としては、「フロア(接客)の人手を減らせる」(38.8%)が最も多い結果になっている。

一方で、すでに利用している店舗が感じているメリットを見てみると、「フロア(接客)の人手を減らせる」という声は1番多い回答ではなく、「注文以外の業務に集中できる」(43.8%)が最も多いという結果になったという。

モバイルオーダーの利用導入によるメリットの半数が「注文以外の業務に集中できる」ということは、空いた時間を別の作業に置き換えているのが現状なのでしょうか。

また、従業員やお店側のメリットが目立ち、お客様側のメリットは「お客様がメニューをじっくりと選べる」くらいと、とても少ないことがわかります。

【 配膳ロボットの導入 】

ロボットを導入しているお店も年々増えています。

株式会社すかいらーくレストランツも、2022年末までに主力ブランドの「ガスト」、「バーミヤン」などを含め合計約3000台に配備する計画を発表しています。配膳ロボットの活用でスタッフの負担を軽減して配膳を効率化し、

会計や案内など他の業務に人手を割けるようにすることで、顧客満足度向上に貢献するとのこと。

SNSでは、夏らしく法被を着たネコ型配膳ロボット(Bellabot)がよく上がっており、好評です。
配膳ロボットに関しては、世間的のも前向きな意見が多いようです。

日本トレンドリサーチ「配膳ロボットに関するアンケート」調査概要

全国の男女420名対象に2022年4月17日~4月19日に調査


飲食店で活躍するロボットは配膳ロボット以外にも様々あり、導入出来る場所も多岐に渡ります。
 
ロボットの種類 
・配膳ロボット
・調理ロボット
・盛り付けロボット
・清掃ロボット
・受付ロボット
・事務作業の自動化(RPA) などなど

配膳ロボット一つとっても「指示された客席のテーブルまで「運ぶだけ」のタイプや、
配膳はホールスタッフが手で行う「ロボットと人間のリレー方式」で使用する方法もあり、お店の業態によっても使い方は様々です。

また、ロボットを導入する目的としてよく挙げられているのは以下です。

配膳ロボットを導入する目的 
・スタッフ負担の軽減
・業務効率化
・人件費削減・人手不足の解消
・非対面・非接触ニーズへの対応

導入した結果
実際に配膳ロボットを導入した大手チェーン店では、ピークタイムのスタッフを1人削減することが可能となり、
下膳にも活用することで接客時間が倍に増加したという成果もあったようですが、うまく利用することが出来ずに導入を辞めたお店も少なくないようです。

飲食店はIT活用の黎明期?

キャッシュレス決済に、配膳ロボットの導入とコロナ以降、
IT化は一気に進んだ印象がありますが、導入した目的への大きな貢献はないようです。

予約管理や注文等、多様なツールがデジタル化されていますが、
安易に導入したことで、既存ツールとの折り合いがつかず逆に手間が増えてしまったというお店も少なくありません。
また、デリバリー需要が増えたことにより対面接客とは別のオペレーションも増えました。
このデリバリー用システムの導入も負担となっています。

デジタルツールを導入する際には、「導入の目的を明確にし、その目的を達成するオペレーション(デジタルで何をして、人が何をするのか)を構築」しなくてはなりません。

また、飲食店でIT化が進まない要因の1つに、飲食業界はマルチタスクによって生産性を向上させていることにあります。
省人化を追い求めた結果、もう省けるところが無いくらいにまで無駄のないオペレーションとなっており、
1人の従業員が行う業務は多岐に渡っています。
このすでに無駄のないオペレーションに、1つITツールやシステムを導入しても効果は限定的で、大きな効率化には繋がっていないのです。

内閣府経済社会総合研究所の研究者が2021年に発表した、
「飲食施設におけるIT活用と生産性との関連分析」があります。

https://www.esri.cao.go.jp/jp/esri/archive/e_rnote/e_rnote060/e_rnote060.pdf

これは「インバウンドの対応に係るIT活用の取組み状況の生産性成長率への寄与度を分析」したものですが、
飲食施設のIT活用の実態について調べられています。

これによると、
「飲食施設ごとの状況や環境に応じて、適切なITツールを導入し、一定程度活用できてこそ、はじめて生産性が高まっていく傾向にある」ことが明らかになり、「飲食施設では総じてIT活用への取り組みは端緒についたばかりであり、他の産業と比較してその取組みが飲食業界全体に行き渡っているとは言い難い状況にあることが確認された。」とのこと。

やはり、ITツールを有効活用できる明確な術は見つかっておらず、まだまだ発展途上にあるようです。

飲食業界のIT化が進まない要因は様々ですが、
マルチタスク化されたオペレーションでは、導入しても効果の見極めが難しいことも大きな要因ではないでしょうか。

マルチタスク化し、複雑になってしまった飲食店のあたりまえを変革すれば、ITツールを有効活用するヒントが得られるのかもしれません。
「ITと親和性の高い飲食店」という視点で新たな飲食店の形を創造してみてみるのもよさそうです。


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