神様の依り代いわく
私の中には神様が棲んでいる。
今日は残業で大変疲労しているので、とっておきの秘密をここで暴露してやろうと思ってきた。酒も飲んだ。焼き鳥も食べつくした。あとは暴露大会くらいしかやることはないだろう。
noteというサイトを使ったのは初めてなので、どこかしら変な点があったら目を瞑っていただきたい。何しろ酔っている。
話を戻そう。
私の中には神様が棲んでいる。
よく喋り、よく笑う、まるで太陽のような神様なものだから、彼女と私の共通点は漫画やアニメを好む、いわゆるオタクな部分くらいしかない。と言っても、彼女はそのオタク気質を隠さないタイプで、私は絶対に人前に見せたりしない性質である。
私と正反対を極めた彼女との喧嘩は、この生涯で一度だってなかった。同じ体をふたつで使っているのだ。自ずと不和が生まれて然りという状況であるはずなのに、彼女を前にすると心が凪いだ。
ああ違う違う、それはただ単に相性がよいのだ、自分は縁結びのたぐいとは違う、と彼女は笑っていたけれど。
彼女、と言うように、私の中の神様は女神である。
彼女と出会ったのはだいぶ前の事であったが、なんの神なのかはいまだに教えてもらっていない。ただ、事あるごとに「ワイ氏(神様はインターネットにハマってからというものこの一人称を使う)はわりと偉いのですぞ」と鼻を鳴らしてマウントを取ってくるので恐らくそれなりの地位なのだろう。
詳細は知らないのだ。彼女が詳しくは語らないので、私も深く尋ねたりはしない。知らないのに体を貸しているのはどうなのかと誰かさんに訊かれたら、その誰かさんには私も同意してしまう。けれど、誰にもこの話をした試しがない上にこの先もここ以外で誰かに教えようなんて思っていないから、結局誰からも文句を言われずに私は私を神様にお貸し出しし続けるんじゃないかな、と思っている。
そもそも、夏目友人帳で号泣できるオタクに悪い人間はいないんじゃないだろうか。人間じゃないけど。
神様が私の中に棲みつき始めた理由は、現世への視察のためだと言っていた。実地検分がその時代の文化を取り入れる最も効率の良い方法らしい。なんとなく分かる気がする話である。百聞は一見に如かずというやつだろう。
だが、視察は長く神様の世界から離れることになる。棲み慣れた場所でない現世では、神様も最初はよくても段々と息苦しくなるんだそうだ。
だから、神様界でも人の中に棲みついて生きていくのを推奨されているとかなんとか。まあこれも分からない話でもない。神様なんていうあやふやなものが現世で生きていくために適したボディスーツを手に入れるようなものだろう。
でも、私の中の神様は長らくその「適合手術」をしなかったようなのだ。
私と神様が遭った時、神様はこちらに来てちょうど二百年ほど経っていたのだという。当時、神様は私の実家の近くにあるちいさなお社を根城にしていた。私たちが出会ったのはそのお社だった。
少し身の上話をすると、私の弟は生まれつき体が弱くて風邪を引いてはすわ一大事という具合であった。目の前で弟が緊急搬送されていくのを目の当たりにした幼い私は、自分にも何かやることはないかと考えた結果、塾の行き帰りにお社に神頼みする習慣をつけていた。毎日行くなんて熱心さはないものの、週2回の塾のどちらか片方くらいは行っていたように思う。
今思えば、何が祀られているかも知らないのに手を合わせるのは祟られ覚悟の愚行としか言いようがないが、当時の私はとりあえず何かしておきたい精神で行儀もへったくれもなく手を合わせ、鈴をならし、時折道に落ちていた1円玉を賽銭箱に投げていた。
(のちのちその様子を思い出した神様に「ロリはいいものだお、世界の宝」と言われた。私があきれ果てたのは言うまでもない)
と、そんな感じで神様は一方的に私のことを知っていたらしい。
待った。酒を飲んだからか眠くなってきた。
そこから色々あって神様が私に交流を図り、私は便宜を図って神様にこの身を依り代としてご提供し、最近その彼女はなぜかVtuberまでしているわけだが、続きはまた今度させていただこう。
誰も見ていないだろうし、ここではそんな秘密話をぽつぽつとしたりする場所にしよう、と思ったりしている。
願わくば、彼女がここに気がついて怒ったりしないといい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?