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毎日が園内研修?動画配信の習慣化で変わる保育の質|とある神奈川県の幼稚園

 「2月28日くらいに『3月から一斉休校』と言われて、あんなにショッキングなことはなかった」。そう語るのは、神奈川県で幼稚園を経営する園長先生です。「子どもや保護者、教職員に光が必要」という想いから、園長先生自らが作詞・作曲した歌の弾き語りを動画で配信。休校を機に、動画に取り組むなかで見えてきた動画の力は、「子どもの変化の見える化」でした。

動画と写真の大きな違いは
前後の「変化」を見られること

 動画と写真の違いは、「その前後の変化」を見られること。その変化の中には、子どものひらめきであったり、葛藤であったり、さまざまな表情の変化があり、行動の変化があります。

 例えば、登園時、ホールで遊んでいる様子や創立記念日のために飾りをつくっている様子を撮影した動画からは、撮影している園長先生に一生懸命話しかけたり、友だちと教えあったりする子どもの姿が写っています。

 動画を何度も見返すことで、「あの子は何を思って、あの場所に立ちすくんでいたのか」「友だち同士の関係のつくり方はどうか」「保育者の声かけは適切だったか」「なぜ、こうしたことに気が付けなかったのか」というように、読み取れる変化が何かしらあることに気づきます。

 「動画は育ちを共有できるツールです。もともとは、家庭にいる子どもたちや保護者と園をつなぐために始めたことですが、うまく活用できれば保育者のための園内研修にもつながっていくと思います」

 一方で気を付けなくてはならないのは、ホームページを更新するときに保育の様子や想い、育ちを言葉で伝えるのと同じように、動画を配信するときに「管理者のチェック体制」を整えておくこと。

◎同園が決めた動画配信ルール
・日常保育は約1分、説明動画は約5分を目安に動画を作成する
・動画にそえるコメントは、園長の確認をとってから公開する
・動画にそえるコメントは、保育者がその日の保育を振り返り、子どもの育ちを伝えることを意識する
・保護者の理解・協力が得られるように園だより(紙・ホームページ)で動画配信の取り組みを発信する
・ハッシュタグ機能を利用し、保護者が動画を検索しやすいようにする

保護者と園児

僕らの使命は「あり続けること」
変化がつむぐ、対話の時間

 配信をはじめて1週間後、同園には動画を視聴した保護者から喜びの声が届いています。動画がきっかけとなり、家庭での会話につながっていることが想像でき、それが園長先生やクラス担任、職員の喜びにもつながっているようです。

 「結局、幼稚園は地域に受け入れてもらえることが重要で、僕らの最大の使命は『あり続けること』。そのためには、園を安定させなければならないし、そのためには先生たちにも気持ちよく働いてもらわないといけない」

 連絡アプリと違い、動画配信ツールは「あればいいもの」。必ずなくてはならないものではありません。
 しかし、同園の取り組みのように、変化を読み取ることで保育者が普段の保育や子どもたちの育ちを言語化でき、保護者に伝えることができる。それにより、保育者同士の対話が促進されることが、「つなぐ」の先にある可能性なのだと感じます。「今後も動画配信は続けていく」、園長先生から力強い言葉をいただきました。