理想気体ならぬ理想人間を定義する

よく物理や化学の世界では理想的条件という物を定義する。

ここで言う理想というのは、年収5000万円、好きな時間に好きな場所でちょこっとだけ働けて、幸せな家庭や友達にも恵まれた、理想の生活という意味での【理想】とは違う。

実際の現実世界においては考慮しなければならない様々な条件を無視して、学問を考えやすくした状態という意味での【理想】である。

そうやって理想の条件を定義することで学問は発展してきた。

そして、その度に理想条件と現実条件との乖離に学問、特に科学は絶望し打ちのめされてきた。

そんな発展と絶望を繰り返し世界は前に進んでいく。

であれば、己の仕事という物にも理想を定義することで見え方は変わってくる。

いわば、全ての思考の軸になる物を定義するということだ。

ふとお客さんにメールやLINEを送ろうと考えている時にそんなことを思った。

ただの情報としてのメールやLINEであれば文章なんて何も考える必要はない。

ましてや語尾とか、ちょっとした語感、文字の色なんて考えてる時間は非効率極まりない無駄の極みだ。

でも、それは理想気体ならぬ理想人間の話である。

理想人間の様にはいかない。

例えば物理の世界では、

摩擦のない平面
空気抵抗がない空間
全体の温度分布が一様である空間
物体は質点(重心や形の変化がない、すなわちただの点)であると仮定した状態
etc、、、、、

などで考えることが多い。

これは当然ながら現実とかけ離れている。

ここから少しずつ現実条件に寄せていく。

ただ、それをするよりも統計学的に考えた方が上手くいくことが多いのが世の中だ。

人との関わり方もそうで、理想人間はただ情報だけ端的にやりとりする、いわばコンピューターの様な存在だ。

現実人間は、

どんな教育を受けてきたか
どんな仕事をしているか
どんな趣味をしているか
どんな家庭ですごしているか
etc、、、、、

などのあまりに多様な条件により、複雑に定義される。

要するに「育ってきた環境が違うからすれ違いは否めない」ということだ。

当然ながら全部を考慮に入れることなんてできやしない。

だから統計学的に、もう少し正しく言うと経験則的に、この人に対しては

こんな言葉遣いにしよう
服装はこうしよう
絵文字や記号も使ってみよう
資料も合わせて送っておこう
連絡の頻度はこれくらいにしよう
etc、、、、、

ということを考える必要がある。

ただ、あくまでこれは経験則や統計学である。

いろんな人と関わる中で、初対面の人や直接会ったり話したりしたことがない人に対する接し方の精度も上がりはする。

ただ、やはりその人と過ごした時間が少なく、リアルな自分で見て聞いて感じた情報がないと難しいのが現実。

そんな時は一度まず理想人間の場合で考える。

まずはシンプルに1番無難でわかりやすいやりとりに帰着させる。

その次に、限られた情報でできる限り実際に今接している人に合わせた接し方を模索する。

その結果得られた情報を元に、また少しずつ接し方を調整していく。

そんな、仮説→検証→考察という考え方は人間関係にも適用ができると思う。

そして、ここで一つとっても大事だと思うことがある。

まずは理想人間に対する接し方の正解をいつでも出せる様にしておくことである。

何事においても、複雑な現実条件での正解をいきなり出せる人がいる。

それはすなわち天才だ。

普通の人間は

リンゴが落ちてきても万有引力に気づかないし、お風呂で浮力に気づきもしないし、ある日突然相対性理論だなんて唱え出したりはしない。

まずは先人たちが導き出した法則やテンプレートに従って、理想条件での正解を導き出せるようにすればいい。

お笑いとかでもそんなことを感じる。

よく芸人さんで、スタッフの喜ぶ無難な笑いを取るだけのタレントになってしまったと悩む人を見る。

でも、それはまずは理想タレント、理想芸人としての答えを出せる様になったということじゃないだろうか。

その答えを出せる様になったなら、もっとオリジナリティのある笑いを作りたいなどの複雑な願望を持った、現実の自分における正解を導き出す段階に来たということだと思う。

よくよく考えると、守破離って大事と言っているだけだけど、世の中には似たような考え方がいろんな呼称で呼ばれているということだろう。

自分らしい考え方をまとめられたような気がする。

でも、こういう考え方をしているやつは御多分に洩れずモテない。

恋は最も複雑だということなのかな。笑

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