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自称「只者」の人・つづき

アルバム聴く前感想を書いたので聴いたあと感想も書いておこうと思います・・・

聴く前感想↓
https://note.com/tenmomo/n/nfc9bd6bf4a7e

「只者」配信で初聴きした感想は・・・
「思ったより重くない。
マグマから連綿と繋がる稲ソロ感と、令和の新鮮さがミックスしてバランス良いアルバム。
現時点では空夢~Chateau Blancの流れ最高に好き。」

その後CDで聴いた感想も・・・
「やっぱり思ったより重くも暗くもない。タイアップや蔦谷さんアレンジなど華のある曲多くて彩り豊か。
同じくコロナ禍に根っこのあるHighhwayXの方がむしろ暗い(全編に鬱々とした閉塞感が陰を落としている)気がする。
仕上がり時期の違いで雰囲気こんなに変わるのね」

「稲ソロ史上革新的な華やかさがあって私は好き。
今までHadouが一番好きなアルバムだったけど匹敵するくらい好きかも。」

…とすっかり心奪われてしまいました。
繰り返し聴いて、ライブでも聴いて、今はさらに好きになっています。

以下、各曲感想~

01.ブラックホール
「稲葉ソロってこんな感じです」という挨拶代わりの1曲目。
鬱々と暗闇をさまよっているかと思いきや、アウトロで爆発する格好良さ。

02.Starchaser
己の内なる闇に目を凝らす1曲目から一転、視界は広い宇宙に煌めく星々へ。じっとり重い曲調から軽やかな疾走感へ。
1曲目→2曲目の場面転換の見事さにうっとりしてしまう。
「冴えない自分にその目を凝らしてみて
意外にも絶望の正体は
ちっぽけで笑えるかもよ」
とブラックホールあっさり一蹴してる(笑)

昔は「こんな暗闇を心の内に抱えてこの人大丈夫かしら…」と余計な心配したけど、今はまったくそんな心配しない。
己の闇の中に深く潜っていく力を持つと同時に、いつでも広い視野に立って光の中に自らを引き上げることのできる人だと思うので。

03.Stray Hearts
04.我が魂の羅針

不穏でせつない3曲目と儚くも壮大な4曲目。まるでテイストの違う2曲ですが、まず同じ感想を持ちました。「すごくちゃんとしたタイアップ曲だな」と。2曲目も含め。
今までタイアップ曲いろいろあったけれど、以前はまず根本に「稲葉浩志ソロ曲」、それを少しタイアップに寄せてみました~という感じを受けた。
一方このアルバムのタイアップ曲はどれも対象をしっかり見据え練り上げるプロフェッショナルな仕事ぶり。

稲ソロは武骨で泥臭いところも魅力。なので従来の稲ソロ風味が薄れた、とも言えるけれど、とても稲葉さんらしくもある。
今まで積み上げてきたものからさらに世界を広げ、他メディアとの関わりの中で新たな自分の可能性を探求しようとする。年齢を重ねてより柔軟で貪欲な姿勢が表れていて、私はすごく素敵だなぁと思う。
そうして出来上がったものがクオリティ高くしかも一聴して稲葉浩志の歌、だからなおのこと。

05.VIVA!
06.NOW

この2曲も曲調全然違うけど歌ってる内容は共通するところあるなぁと思った。
いつ何があるかわからない(災害、病気、戦争などなど)からこそNOW、今この瞬間が美しく大切。一瞬一瞬を精一杯生きよう~というテーマ。稲葉さんが昔から歌ってきたことだけど、コロナ禍や世界情勢の変化によってさらに強く心に響く。
ロック的な感覚だと「今日が最後の日」と思ったら刹那的で無茶苦茶やりそうなのに、「どうでもいいような日」平凡な日常と身近な存在こそが尊く愛おしい…というやさしい目線が只者らしく、でも只者じゃない。

07.空夢
泣く。
澄んだ美しい哀しみ。聴く者の心に切々と訴えかける圧巻の歌唱。ただただ震える。
「マシです」という日本語がこんなにも美しく感情込めて歌われたことがいまだかつてあっただろうか。

08.Chateau Blanc
「空夢」で「誰かこの人を柔らかい毛布でそっとくるんであげて…」と思っていたら、この曲来て「うん、とってもお元気そうで何より~」という第一印象(笑)だったけど、空夢と同じくらい好き。

歌が、レトロお洒落な旋律の渦をするするなめらかに滑り泳ぐ歌声が、心地よくてとろける。
あまりにも曲アレンジ歌がすばらしくて歌詞の内容とかどうでもいい~とすら思ってしまったけど、詞がまたとてもよい。

きわどい内容ながら私には全然下品とか猥雑な印象がなく、まばゆいほどの生きる悦び、溢れる生命力に心が高揚する。
稲葉さん描く男女って、罪や孤独を抱えた2人が縋りつくように抱き合う暗いイメージが多い。MOTELとか。哀感あり劇的でもありそういう曲大好きなんだけど、Chateau Blancの奔放で美しく煌めく愛の世界に心奪われる。
特にサビ「僕ら今~真理の渦へとダイヴ」。男女の情交をこんなにも文学的芸術的に表現されるんだぁ…とクラクラしてしまう。

09.シャッター
タイトルだけ見たとき閉店ガラガラ~の方だと思って「シャッター商店街の情景とか歌うのかな」と想像したが、違った(笑)
稲葉さんの歌に出てくる女の人「やべぇ女~」て思うこと多いんで、素直で育ちの良さそうな女の子出てくるとホッとする(笑)
主人公は娘さんだけど親目線も入ってる感じで心温まる。

10.BANTAM
格好いい。とにかく格好いい。
このアルバムわりと自然に体が動いちゃう曲が多い。

11.気分はI am All Yours
すき。問答無用でハッピーになれる!家で聴くとき100%踊ってる。
こんな嬉し恥ずかし胸キュン男子ソングをアラ還ロックシンガーに当て書きしちゃう作詞家稲葉浩志、ほんとすごい。他の人が稲葉さんに曲提供するとしたら、きっと思い浮かびもしないタイプの曲。
それをまた当て書きされた御本人があざとくかわいくポップに歌いこなしちゃう。

パワフル、クール、壮大、繊細、さまざまな曲調歌えるのすごいと思うけど、いくつになっても違和感なく「恋心」とか可愛らしく歌えてしまうっての、すごいことだと思う。そして、それが出来ること自分でちゃんと客観的に理解してるのがまた…
「尊いね」でぐっと声落して深く響かせるのあざといし、主人公そういうSNS用語自然に出てくる系男子なんだと想像できる(稲葉さん自身隠密裏にSNS界隈に潜んでることも想像できる)

12.cocoa
ライブ客出し曲、ライブ映像エンディング曲がその後長きにわたって行方知れずになる…というのはB'zソロを問わずあるある(いずれもいい曲なのになぜ!?)。cocoaもそんな生き別れになっていた1曲。タイトル発表した時点で沸くのも当然。
エンディングにふさわしい、ほろ苦い憂いを含んだしっとり柔らかな曲。
今なお行方知れずになっている曲たちもちゃんと陽の目を見ることができますように~


配信サブスク全盛の時代にアルバムを出す意味があるのか?と稲葉さん自身疑問を持ったようですが、私はやっぱりアルバムで聴きたいです。そしてなるべくCDで。

仮にただその時期に溜まった楽曲をまとめただけ、だったとしても単曲では分散して見えづらいものがまとまると見えやすくなる。その時代の空気、アーティストのその時の気分や音楽的好み、歌い方や声質の変化など。
それは時代を経て後から振り返ってみる時より大きな意味を持ってくると思う。

だから是非これからもソロアルバム期待しています!
前作から10年ぶりの「只者」、できれば次は10年先よりもうちょっと早めに・・・

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