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Merry Xmas Mr.Lawrence

雪がふる。
雪がふる。
雪が降り続ける。

中学生の頃から毎晩寝る時に音楽をかけながら寝ている。
そのプレイリストは20年近く経ってもほぼ変わらなくて、毎晩流す最初の音楽は坂本龍一のMerry XmasMr.Lawrenceだ。

高校生の頃、ケータイ電話のアドレスも
Merry xmas Mr.Lawrenceにしていた。
あのアドレスを大切にしていればよかった。

雪にはどこか清めのイメージがある。
雪がしんしん降る東北の冬の夜に、
道端で佇んでいると、いろんなものを静かに吸い込んでくれるような思いに駆られる。嫌な記憶も音さえも何もかも。

良くも悪くも吸い込んでくれる雪。
そんな雪は、世界中満遍なく降り積り、三千代世界を浄化し続けている。
原爆という業火も、打ち手しやまない弾丸も
残虐や非道も、すべて。
すべての上に雪は降る。降り続ける。

しかし、その雪だけは覚えている。
私たちに今も語りかけている。
きょうも眠る我が子の上に降る雪は、
あの日の雪と同じ雪。

昨日は8月15日だったので、大島渚のMerry Xmas Mr.Lawrenceを見た。
久しぶりに見たこの映画は、以前見た時よりも静謐なもののように思えた。
そう。大切なことは決して大きな音や出来事にあるのでは無い。
雪のような静かであり、かつすべてを覆い被せてしまうやうな力があり、そして気が付かぬ間に消えていく。

いまや見る術もない男同士の絆の中にあった
戦場のメリークリスマス。

あれから76年
今や語り継ぐ人も少なくなったけれど、
坂本龍一のMerry Xmas Mr.Lawrenceを僕はいまも毎晩聴きながら寝る。

さまざまな思いを抱えて不慮の死を遂げた人の思いを鎮めるために。さまざまな今日を清めるために。すぐには消えてしまう雪のような儚い人生を思いながら、消えるような一瞬の明日だからこそ、何があろうと懸命に生きるために。今日も雪は降り続ける。
明日を迎えるために白く白く白く全てを覆い尽くす。

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