【完全マニュアル】自治体や企業のPR戦略をみんなで考える「PR会議」
昨年の話になりますが、オフィス兼イベントスペースの「天窓」で、このようなイベントを行いました。
東京で働くみなさん!「村」のPR戦略会議に参加しませんか?福岡県の南東部に位置するこの地は、人口約2,100人。
江戸時代より続く伝統工芸「小石原焼・高取焼」の窯元を40以上有し、さらに竹地区の棚田など、豊かな自然と美しい景色を持つ地域です。
ゲストは、東峰村役場農林観光課の皆さん、東峰村ふるさと観光大使の上野 恵梨奈さん。堅苦しさは一切なしにして、東峰村のおいしいものを食べながらゆるい感じで進められたらと思います。東京で働く、業種や年齢の垣根を取っ払った、様々な皆さんのアイディアをきかせてください!
そうです。今回は福岡県の人口2,000人のちいさな村「東峰村」のPR方法を、村の名産でも食べながらみんなでブレストしようぜ!東京で働くみんなの知恵を貸してくれ〜〜〜!というイベントです。
準備期間がタイトで、きちんとしたスライドもつくらず、なかば勢いで行ったこのイベント。ところが、思いのほか反響があり「もしやこれは需要があるのでは...?」と、今回どなたでもPR会議を行えるように資料をまとめてみることに。
・PRに困っている自治体の方
・企業や組織体で新しいことを考えたい方
こんな方々に使えるものになれば嬉しいです。
本記事の最後には、スライド(Keynote)の元データを掲載しています。ぜひダウンロードしてお使いください!
なぜ私たちブライトログがPR会議を開いたのか
いったいブライトログって何の会社...?という方がほとんどだと思うので軽く自己紹介。
私たちは、「日本の古き良き文化をデジタル、アナログを横断して未来につなげること」をビジョンに掲げる東京拠点のプロデュース組織です。
そのために、現在は「100年先も残るものをつくろう」をコンセプトに、ブランディングプロデュース・クリエイティブ制作(WEB、写真、映像、デザイン)、リノベーションなどの事業を展開しています。
会社の設立以降、生産者と消費者の新しい関係づくりを目指す自社メディア「セコリ百景」や、人・モノ・文化が壁を越えて混ざりあう世界をつくることを目指すオンラインコミュニティ「旅ときどき仕事」、自治体とのPR事業、そしてプライベート…と、私たちやチームメンバーは日本全国、津々浦々に足を運び、文化に触れ、生の声を聞くことを大切にしてきました。関わった地域は30ヶ所以上、工場や作り手を訪ねたのは何百社にもなります。
そこで気がついたのは、都市部以外のいわゆる地域ではいずれも抱えてる課題が近いということ。どの地域も、「人口減少」「高齢化」「若者の都市部への転居」「空き家問題」の課題を少なからず抱えています。ですが、その一方で、工芸や民芸・自然・歴史・食べ物など、美しい土着の文化が存在しています。
なぜ日本の地域は高いポテンシャルを持ちながらこのような課題が出てきてしまうのでしょうか。
民間や個人レベルで大きく関与することのできない国の政治や経済政策は原因としてもちろんありますが、私たちに変えることができそうなことでは、
・その地で暮らす人々・自治体が自分たちの魅力に気がついていない
・魅力に気づいていても、情報発信をしていない
・情報を発信し、伝えようとしていても、伝え方が分からない(情報の編集力がない)
などなどが挙げられると思います。「人を呼びたい」と話す自治体自身が、街の文化・魅力を、外に伝えきれていないことは大きな課題だと考えました。
なぜ「PR会議」なのか
よくよく話を聞きいていくと、自治体が行っている施策はどうやら「焼き直し施策」が多いことが判明…。予算・人口などの規模や魅力が違うにも関わらず、どこか他の自治体が考えてうまくいったものを真似しているというパターンが多いのではないでしょうか。
でもそれって、中小企業が戦略なしに大企業の戦術を真似るのと一緒なのでは.....?そんな状態では、時間や投資もかかるし、上手くいかないケースも多いはず。
じゃあ、どうすればいいんだ!?ということで、私たちが考えた「今自治体がとるべき戦略」は、ずばりニッチな局地戦です。
例えば、今回PR会議を行った東峰村と、近隣の大都市である福岡市を例にあげると、東峰村は中小企業、福岡市は大企業にあたります。
大企業と比べて、中小企業はそもそも予算・社員数などの規模が小さく、資源も小さいのは明確。それなら、もう勝てる方法はひとつです。それは「一箇所に戦力を集中させて、一点突破を目指すこと」。
一点突破するには、局地戦をするという「戦略」はもちろん、どこでどう戦うかの「戦術」がとても大切です。
....「戦略」「戦術」というと堅苦しいですが、戦略=目的地、戦術=移動手段そう考えるとわかりやすいかもしれません。
そうは言っても、自治体だけで戦術を複数考えるのは大変な上に、どうしても客観視点が抜けてアイディアも凝り固まってしまいがち。ならば、外の人の知恵も借りたらどうだろう....?ということで考えついたのが、自分たち(自治体や組織)の戦い方を、外の人にも一緒に考えてもらう「PR会議」でした。
もちろん、その他にも利点はたくさんあって
自治体のメリット
・さまざまなアイディアを持って帰れる
・東京で暮らす人に町を知ってもらえる
・物産展などのイベントよりもお客さんに「町を自分ごと化」してもらえる
参加者のメリット
・本業以外でのブレストって結構楽しい
・他の参加者の意見を聞き、それが仕事に活かせる(繋がる)可能性がある
・自治体の人とざっくばらんに話せるし地域に親近感がわく
・美味しいものが食べられる…
ここからは、実際にどの様にこの「PR会議」を行うかを事前準備と実践に分けて説明していきます。
事前準備(ハード面)
・名札
・大きめのポストイット(参加人数×10枚程度)
・ペン(参加人数分)
・4~5人ずつで座れるテーブルとイス
・スクリーン
・プロジェクター
・町の名産品など(あると説明しやすいし、盛り上がる)
事前準備(ソフト面)
PR会議はブレスト的に行うもののため、解決したい課題や、目的の整理など、上段の部分はカチッと決めておく必要があります。
(ここで制約がなく自由度が上がり過ぎてしまうと、実施時に発散し過ぎて、うまくいかない可能性が....)
事前に決めておきたいのは、下記の3つ。
①課題の確認
課題はいくつも存在するはずなので、顕在化している課題をできるだけ集め、帰納法的に大きな根本課題を見つけていく。
②目的の確認
根本課題をどうする?を目的に置く。
いきなり解決が目指せなければ、根本課題解決にたどり着くためのステップを設け、そこを暫定的なゴールに設定する。
③地域資産の整理
・人(職員、関係人口)
・モノ(個別のモノ、建物、場所)
・予算
・情報(歴史、メディア)
※上記をまとめた、当日用の資料があると尚良い。
ここで注意したいのが、公的書類のような堅い書類にならないように、主催者側できちんと舵をとること。PR会議はあくまで、ゆる〜い会(だからこそ柔軟なアイディアが生まれる)なので、「読みたくなる資料」を念頭にお願いします。
告知と集客
対象者は、前提として「地域の文化に対して課題感や興味がある人」。そして、できるだけ、多様な人に集まって欲しい。
様々な視点からアイディアが集まり、広がるのが「PR会議」なので、性別や年齢などのデモグラフィックもだし、職業や経験、好きなこと・モノまでさまざまな人が集まると理想的ですね。
それを踏まえると、必然的に開催地は都内や都市部で、ターミナル駅が近く人が集まりやすい場所がおすすめ。また、集客も特定の層だけでなく、SNS含め幅広くリーチできることを目指しましょう。
実施(当日の流れ)
ここからは、PR会議のスライドと合わせてイベントの流れを紹介します。
用意した席は4~5人×3テーブル(グループ)、席は自由。人数が少なすぎる or 多すぎるとアイディアが出づらかったり、発言しない人が生まれてしまうため、1グループ4~5人に設定しました。
※参加人数が多い場合は、グループの人数を増やすのではなく、グループ自体を増やしてください。
開始時刻に合わせて東峰村の名産品であるゆずシロップで作ったサイダー・サワーをつくり、乾杯と同時にPR会議スタート!(乾杯からはじまると、少し緊張がほぐれるのでおすすめです...!)
ゆずドリンクを楽しみつつ、まずは本日の流れの共有から。
01 / PR会議とは?(5分)
まずはPR会議の説明を。
・東峰村のPR戦略を考える会です
・東京で働く皆さんの知恵を貸してください!
・実行可能かどうかは一旦考えなくてOK。アイディアの数が価値になります。
02 / 自己紹介(5分)
誰もが少し緊張する自己紹介。いやですよね〜(笑)
せっかくやるからには、少しでも「記憶に残る自己紹介」をしてもらおうと、こんなルールを設けさせてもらいました。
これは、横石 崇さんの『自己紹介2.0』に書かれている方法で、通常自己紹介というと現在→過去→未来の順で話してしまいがちですが、ここでは未来→過去→現在の順で話してもらうというもの。
【現在→過去→未来の順】
例:私はブライトログに所属していて、これまでに行ってきたメディアの運営や撮影・動画のノウハウをもとに、企業や自治体のオウンドメディア制作や動画PRなどを手掛けて、日本の文化を未来につないでいくことを目指しています。
【未来→過去→現在】
例:私は、「日本の文化を未来につないでいくことを目指しています。」これまで自社でメディアやコミュニティ運営を行い、動画や記事のノウハウを蓄積。そのノウハウをもとに、企業のオウンドメディア運営や、自治体のPR動画を作成し、つなぐ手伝いを行っています。
なぜかというと、最初に未来(ビジョン)の話をすることで、共感を生み相手の聞く体制が整うから。
・未来は、信頼を生むもの
・過去は、信用を生むもの
共感が必要になるPR会議では、個人の自己紹介も、自治体の自己紹介も共に、未来、過去、現在の流れで行います。
まずは、上記の自己紹介ルール説明をしつつ、見本でファシリテーターが自分の自己紹介をするのがポイント。
その後に、全員でやると時間がかかるので、同じグループのメンバー4~5人で自己紹介しあってもらいます。(いきなりだと難しいので、できていなくてもツッコミはなしで温かく拍手でお願いします!)
03 / 自治体の自己紹介と課題の共有(10分)
事前に用意した資料を参加者に配布し、自治体の自己紹介と事前準備の際に固めた「根本課題」とそれを解決するための目指すステップの共有をしていきます。
ここがふわっとしていると、参加者もいまいち共感できず、その後のブレストで何を話して良いのかわからなくなってしまうので、自治体内そしてファシリテーターと入念なすり合わせが必要です。この自治体の紹介も前述の「未来→過去→現在」で行います。
05 / アイディア出し(5分)
ここからは、一旦個人ワーク。
自治体の課題を解決するアイディアをとにかく付箋に書き出していきます。
まずは、ファシリテーターが、例としてできるだけバカげたものをだすと参加者も「あぁ、そういう感じでもいいんだ!」と、ぐっと頭が柔らかくなります。
ここでのポイントは、アイディアは大きく考えてもらうことと、数を出してもらうこと。
・ 大きく考える → 小さくなると面白いアイディアがでない
・ たくさん出す → 数が出ることが価値
「フェスをやろう」とか、「ミュージアムをつくろう」とか「有名人に村長になってもらおう」とか、そういうのでOK。
現実的なアイディアは、これまで自治体の中でもたくさん話し合われてきたはず。
だからこそ、PRを会議では「実現可能かまでは考えていない自由なアイディア」を「たくさん」生むことが価値になります。
ただ、大きくなりすぎて「根本課題」「目的」を解決することから外れないように注意。
アイディア出しは得意不得意もあるので、質にはこだわらず一人10個などの目安を設けるとスムーズ。
06 / ブレスト(40分)
ここからは、テーブルごと4~5人のグループでブレストタイムです。それぞれが書いたアイディア付箋をペタペタ机の上に貼っていきましょう。
ブレストのルールは下記の通り。
①アイディアを否定しない
アイディアを発表するのって少し勇気がいるもの。それにPR会議はあくまでブレストがメインなので正解不正解はありません!アイディアが出るごとに、はいみんな拍手〜〜〜「いいね!」「おもしろい!」そんな言葉が飛び交う会議、なんてすてきなんだ。みんなハッピー。否定があると、次の人も発言しにくいし、面白いアイディアにならないよ.....
②アイディアをつなげよう
人のアイディアを聞いて、思わず閃いちゃうアイディアマンのみなさん。その調子です!PR会議では、できるだけ意見にのっかってください。 そうすることで、より大きなアイディアになるし、もっとおもしろいアイディアが生まれるかも!
③グルーピングしない
アイディアが沢山でてくると、ついやりたくなちゃうのがグルーピング。
「フェス関連」「ホテル関連」「伝統工芸関連」etc......
でも実は、グルーピングってすごく技術のいるもの。カテゴリーで分けるのが正しい場合もあれば、予算でわけるのが正しい場合もあるし、ターゲットごとに分けるのが良い場合もありますよね。それに、ブレスト時点でグルーピングすると、アイディアが縛られてしまう原因にも。
ブレストはあくまで広げる作業。多くのアイディアを出すために、グルーピングはしないようにしましょう!
06 / 発表(15分)
チームで生まれたアイディアを発表していきます。
チームの誰かが発表するのではなく、2−3個のアイディアを一つずつ、2−3人に発表してもらうことで一体感を醸成していきます。
ここでもブレストと同じく、発表者が緊張してどもったりしても、まわりは笑顔&拍手でお願いします!何歳になっても人前って緊張するよね....。
07 / 懇親会
ここからは、自由に席を立ってもらい懇親会を。
村の食材をふんだんに使った料理を用意してもらいました。
真剣に村のことを考えたあとに食べる、産地モノは格別です。
実際に試していただけるよう、東峰村の伝統工芸品である、小石原焼と高取焼もいくつか用意しました。
実施後の流れ
たくさん集まったアイディアを自治体にお持ち帰りいただき、参加されていない皆さんへ共有、そして今後の自治体の施策に繋がるところまでがこちらのPR会議です。
しかも“イベントの熱が残っているうちに行う”というのもとても重要になります。
そのために、主催者側でやることは▼
・アイディアの分類やグルーピング
・アイディアグループごとのラベリングや関係性の精査
・実現性の高/低、効果の高/低などでマッピング
※進めていく段階で、自治体に意見を求めるのもいいかもしれません
上記を行い、沢山のアイディアを掛け合わせて実際にできるものはないかを詰めていきます。そしてまとまったものを、後日自治体へ送りましょう。
さらに、そこから実現したものがあった場合は、PR会議に参加してくれた人に「こういうふうに形になりました」と連絡(SNSなどで報告)するのが理想的です。
以上が、私たちが行ったPR会議メソッドです。
今後もブライトログでは「日本の古き良き文化をデジタル、アナログを横断して未来につなげる」ために、様々な地域やものづくりの現場、企業と伴走していきたいと思っています。
PR会議の質問事項や、ご依頼等有りましたらこちらまでお気軽にご連絡ください。
最後に
冒頭にも書きましたように、本PR会議のスライド(Keynote)データを貼っておきます。ぜひダウンロードしてお使いください▼
■イベント開催について
・PR会議の開催時、株式会社ブライトログへの確認はいりません
・ただ、提供元が「株式会社ブライトログ」であることを参加者に伝えていただけると、とても喜びます…!
・イベントを行う際や、PR会議をより良くするためのアイディアが有りましたら、ぜひSNSで「#PR会議」をつけて教えて下さい。
■ブライトログの「ロゴ」について
・資料上部のロゴは消さずにご利用ください。
・掲載位置やサイズ改変、変形はご遠慮ください。
・本スライド以外への使用はご遠慮ください。
■その他
・PR会議をつかったイベントによるトラブルについて、株式会社ブライトログは一切の責任を負いません。ご了承ください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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