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メーカーやブランドが作るところから、捨てるところまで付き合っていく時代へ

「メルカリがあるから新品が買いやすくなった」って話がある。

この裏には、一般的ではなかった個人が「売る」を選べるようになったことがある。迷った末に商品を購入。それが、やっぱり気に入らなかったとしても、一定の価格で「売る」ことができる。実際に売るかどうかではなく、「売る」選択肢が増えたことで新品を購入する際の心理的ハードルが下がるという話だ。

もちろん、メルカリが出てくる前も、リアルでは質屋や中古品店(古本や中古ゲーム屋)、オンラインでもネットオークションなどはあった。

僕が前職ECモールで働いていた時には、同じ事業部内にネットオークションの部署があったし、頑張っていたのを傍目で見ていた。それでも、メルカリほど「売る」行為を一般化はできなかった。

拡大するセカンダリーマーケットに目を向ける

メルカリやその他のフリマサービス、2020年に上場したジモティーのような「売ります・買います」のクラシファイドサービスは伸びているし、レンタルやシェアリングサービスも成長していることから、僕たち消費者の「新品」でないものへの許容度は上がっていると言えるだろう。

メーカーやブランドが消費者に売る「新品」が流通するプライマリーマーケットに対して、個人から個人へ「中古品」が流通するマーケットをセカンダリーマーケットと定義している。
そして今後、モノを販売する際にはこのセカンダリーマーケットへ目を向けることが重要になっていく。

理由は2つだ。

① セカンダリーマーケットで値段が下がらないものほど、プライマリーマーケットでも売れやすくなる
② セカンダリーマーケットへの対応が、世の中に対しての印象を左右するようになる

そう考える理由はこうだ。

購入のタイミングから「売る」ことを考えるように

① については、前述の繰り返しになるが、購入を迷った際に「もし気に入らなければ売ればいい」は購入のハードルを下げる大きな要素だ。
しかも、「売る」際に購入金額との差が少なければ少ないほど、購入のハードルを下げる効果は高まる。ブランド品と呼ばれるようなものはその典型だ。

当たり前の話ではあるが、モノの価値に加え、モノに付随する価値(ブランド価値)を高めていくことがより重要になっていく。

セカンダリーマーケットへの対応によるブランド価値の向上

発展途上のセカンダリーマーケットはまだまだ課題も多い。以前からあるものだと“偽物”の問題、最近では“転売”も課題だ。

これらの課題に対して、販売側(ブランドやメーカー)で対応していくことはブランド価値の向上につながる。

例えば、ストリートファッションブランドのSupremeは購入時にIDチェックやファッションチェックを設けて本当のファンに商品が行き渡るように工夫している。
最近だと、「PS5」に対してソニー・インタラクティブエンタテインメントや、「+J」に対してユニクロが転売を防止する動きをするのが見られた。

転売などの課題に対応する姿勢は、顧客(本当に欲しい人)のために動いてくれる販売者という認識を生み、ブランドに対して好感を持つことにつながっていく。

プラットフォームに頼らないセカンダリーマーケットの可能性

ここからは、予測なのだが、アパレルをはじめとしたモノ系のD2Cブランドなどは、自社で積極的にセカンダリーマーケットを作って行くと考えている。

D2Cブランドは直接販売を行う上に、ブランド価値の向上に積極的だからだ。

例えば、「下取り」に近い形で、ブランド自体が自社製品を購入者から買い上げて、再販売するモデルはその一つになりえる。

堅牢性が高く長持ちする製品であれば、ブランドが買い取ったあとに、補修・クリーニングを行うことで再販が可能だ。もし、ダメージが酷く再販が難しい場合は、多少コストが掛かったとしてもリサイクルや寄付など、社会的に意義のある取り組みもできる。

これは長く使えることのアピールになる上に、環境への取り組みとしてもファンから評価されるはずだ。

加えて、購入サイクルを回すことと新規顧客獲得にも効果がある。
新品を買うファンは、使わなくなったものを下取りしてもらい、また新しい製品を購入。価格の安いお直し品は、新しいユーザーが安価に試す入口になる。ここで価値を感じれば、新しいユーザーがファンに転換し、いずれは新品購入にもつながっていく可能性もある。

ここからセカンダリーのマーケットはさらに面白くなっていくし、ものづくりに関わる人は、製品の質、販売方法、サポートに加えて、最後の「捨てる」の部分まで付き合っていく時代になっていくのかもしれない。

ちなみに僕は最近、少し浮力の小さいサーフボードが欲しくて、定期的にメルカリをチェックしている…。

文:那木丈裕

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