【第2話】余命5ヶ月、僕は彼女の死にたい理由を探す
○(翌日)屋上、夕方
昨日と同じく、すみれが祐希より先に来ている。
雨が降っていて、すみれは雨の当たらないところに腰掛けていた。
すみれ「おはよ!」
祐希(あれ、昨日の……夢じゃなかったの?)
(それとも、まだ夢の続き?)
(どっちにしろ、岡崎さんは僕には明るすぎるよ……)
祐希はすみれのそばに行き、座らずに立っている。
すみれ「あれ、もう夕方だからおはようはおかしいか」
「こんにちは? こんばんは?」
と、ぶつぶつつぶやく。
祐希「なんで、こんなところに?」
すみれ「昨日のこと、全部忘れたの?」
と、眉を顰める。
祐希「覚えてる」
すみれ「だよねー、よかったぁ。マジで全部忘れたのかと」
と、わざとらしく胸を撫で下ろす。
すみれ「ここ来たってことは、ヒントが聞きたいんでしょ?」
祐希「……」
すみれ「あれ? 違う? もしかしてもう答えわかった?」
祐希「……」
祐希(どうしたらいいんだろう)
(女子と面と向かって話すなんていつぶりだろう)
すみれ「まあいいや。今日のヒントは、『私と君は意外と深い関わりがある』だよ」
と、人差し指をピンと立てる。
祐希「なんの関わり?」
すみれ「ヒントは1日1個まで!」
祐希「……」
祐希(わからないわからない)
(女子とかわからない)
(そもそも僕と岡崎さんに関わりなんて……)
すみれ「君さ、この後どうすんの? 家帰るの?」
祐希「しばらくここにいる予定」
祐希(家帰っても、ろくなことないし……)
すみれ「じゃあ、私とこれしよ?」
と、トランプを掲げる。
祐希「いいけど……」
すみれ「私はね、クローバーが好き。原井くんは?」
祐希「スペード、かな」
すみれ「……」
祐希(あれ、なんかNGなこと言ったかな)
(どうせまたすぐに元に戻るんだろうけど)
すみれ「ごめん、用事思い出した。帰るわ」
祐希「えっ……」
祐希(なんで……?)
すみれ「また明日」
祐希「……」
祐希(岡崎さんはもう来てはくれないかもしれない。そんな予感がした)
○家、夜
祐希、鍵を開けて帰宅。
玄関では、妹である莉緒が待っている。
莉緒「お兄ちゃん、お腹すいた!」
祐希「ちょっと待ってね」
祐希、ご飯の支度を開始。
冷凍食品をレンジでチンする。
祐希(ごめんね、莉緒)
(お母さんの手作りのご飯を食べさせてあげられなくて)
莉緒「お兄ちゃん、あのね、ゆうかちゃんのおうちでは、ママがご飯作ってくれるんだよ」
「莉緒も、ママの手作りご飯が食べたい」
と、ご飯を頬張りながら言う。
そばでため息をつく祐希。
祐希(だからイヤだったんだ、家に帰ってくるの)
(僕の手術の費用を稼ぐために、ひとり親の母は働き詰め)
(莉緒に申し訳が立たなくなる)
祐希「今度、頼んでみようか?」
と、精一杯のつくり笑顔をする。
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