モネのお勉強
今週の朝ドラから
気象予報士を目指す若者のお話でもあり、今回の朝ドラはNHKプラスを使いながら、なんとかストーリーを追いかけています。今週は、「勉強始めました」、ビジネス企画の展開と気象のお勉強がそれぞれ絡みながらも独立な流れ、いわばポリフォニー音楽のように展開されて、将来花開くであろう若き才能が垣間見られるところが私なりの見所でした。
気象学の基礎
絵本と気象予報士対策教本の間で苦しんでいるモネに理科の教科書を渡したのはなかなか素晴らしいアドバイスです。なんで雲ができるのか、なんで雨が降るのか、なんで風が吹くのか、太陽がどうやって空気を温めるか、気象学の基本でもあり、気象としての説明でなんとなくわかった気にもなります。ですが、モネの突っ込んだ質問でもわかるように物理や化学の基本的な法則に立ち返らないと説明できないことが多いのです。あのモネの突っ込んだ質問は、科学に向き合う姿勢としても正しいと思います。
私の若き日の経験談
実を言うと私自身、気象に興味を持ったのは、台風などの天気の現象とそれを裏付ける天気図でした。気象学を勉強したいなと、じゃあ、大学では何を勉強したらよいのか、と調べ始めると、地球物理学、という名前に出会い、なんで物理なんだ、と戸惑ったことがあります。当時は旧帝大など限られた大学にしか地球物理はなく、私立大学にもほとんどなくて、自宅から通える大学として東大しかないな、というのが、東大を目指したきっかけでした。正直、もっと簡単に入れる大学はないものかと思いましたし、理系で他にやりたいこともありませんでした。新聞記者に興味がちょっとあったので、社会科の代わりに数学で受験できる早稲田大学の政経学部だけを併願しましたが、見事に早稲田には振られて東大に入学しました。早稲田の点数開示では、英語と国語は十分取れていましたが、数学が得点取れずに不合格となっていました。
その後、気象庁に入って、物理法則に基づいてコンピュータで天気を予測する数値予報モデルの開発をする中で、改めて物理を基盤とする気象学、という意識を深めました。こうしたシミュレーションモデルも地球温暖化等による変動を表現するため、地球システムモデルに発展して、化学や生物のプロセスも計算するようにもなってきています。
地学教育のあり方
先日の地球惑星科学連合の大会で、今の中学高校教育の中で、地学が絶滅危惧種になっている現状を踏まえた議論がありました。確かに地球温暖化や防災の重要性から地学をしっかり教えるべきなのですが、一方では、物理、化学、生物の時間を削減してでもそうするべきか、というとそう簡単ではありません。地学は、物理、化学、生物の基盤の上に立つ学問という性質があります。知識の切り売りでない、考える教科としてこれからの日本に必要なリテラシーという観点でどんな形での地学教育を進めていくべきか、今後の重要な課題ととらえています。
気象予報士試験
今年の気象予報士試験は8月の試験については、出願が始まっています。朝ドラの影響で受験生は増えるのでしょうかね。さらに、今後のモネの活躍次第では、冬の試験に向けて試験の勉強する人が増えて、さらに受験生が増えることになるのかもしれません。気象予報士がもっと活躍できるような社会にしていくことは、私がいま関わっている研究プロジェクトの目標でもあるので、引き続きこの朝ドラも見守っていきたいと思います。
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