台風第13号について
台風第13号、台風から離れた地域で大雨の被害がかなり出てしまいました。福島県いわき市では床上浸水が1000棟を超えたようで、おそらく今年の水害としては、7月の秋田での大雨に次ぐ数字ではないかと思います。被災者のみなさまにはお見舞い申し上げます。
3年前に台風から遠く離れたところでの大雨についてnoteに投稿しているのですが、この1ヶ月で200人近くの方がご覧になられています。気象予報士さんなどが勉強のために読んでいただいているのであれば少しはお役に立ててよかったです。https://note.com/tenkiguma/n/n3439d9110e5e
ところで、今回の13号については、離れたところで大雨を降らせながらも、関東東海に上陸と言っておきながら、海の上で台風として維持できず、なんだこの台風は、気象庁は何やってんだ、というご意見もあるようです。
昨日8日の朝、首都圏では出勤時に大雨で苦労された方も多いかと思います。これから示すひまわりの衛星画像はいずれも8日の朝0730時のものです。まず、赤外画像では、関東付近に明るい白の領域が広がっています。赤外画像で白いところは、宇宙に届く赤外線が弱いところに対応します。これは赤外線を出す雲の表面の温度が低いということになります。それはどういうことかというと、雲が上空高いところまで到達して雲の表面温度が低いことに対応します。このような雲の多くは発達した積乱雲で大雨を降らせます。首都圏、とくに房総半島での大雨の時間帯でした。
一方、次の画像は可視光でみた画像です。こちらでは、赤い円で示したところに反時計回りの渦が見えます。このあたりに台風の中心があります。しかし、この台風のある付近では、赤外画像だと真っ暗で、発達した積乱雲は全くありません。このような台風の構造だと台風の渦巻きを維持するメカニズムが働かずに衰弱したと考えられます。
これも何度も述べていますが、台風の中心がどこにいくかに関心が集まりやすいのですが、これは暴風や高潮災害をもたらすようなクラスの台風では確かに重要であっても、今回のような台風ではほとんど意味がありません。中心に気を取られることで、台風の影響はまだ先ではないか、ここは台風から遠いから大丈夫ではないか、という弊害の方が大きいです。
9日07時での24時間降水量の図も示します。房総半島から福島県にかけての沿岸に強い降水があったことがわかりますが、さらに東方にそれよりも強い降水帯があります。こちらは海上なので地上雨量計がないのでどこまで定量的に正しいかはあるのですが、強度も規模も沿岸の降水域より強いです。台風がもっと西に向かっていたら、関東からはさらに中心は遠くなりますが、この海上に発生した強力な降水帯が陸地にかかって、もっと被害が大きかった可能性もあります。一方、台風に近かった地域では、ほとんど降水がなかったことがここからもわかります。台風の中心位置(およびその予想)が穂の中に過度に注目されることは危険であるということが示唆されます。
気象庁から線状降水帯情報が出るようになってから、台風に伴う線状降水帯情報は意味があるのか、という議論もありました。今回に関して言えば、台風から離れた地域に線状降水帯情報というフラグを立てることで、それなりに危機感が伝わり効果はあったのではないかと思います。このあたりは、情報の受け手の意見も含めて検討されるとよいかと思います。
なお、今回の千葉県から福島県にかけて太平洋沿岸の大雨については、東方沖の海面水温が平年よりきわめて高いということが影響している可能性もあり、こちらも、今後、研究が進められることを期待しています。
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