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2005年台風第14号と神田川水系の水害

台風第10号が急発達して九州を中心に警戒が呼び掛けられています。このnoteでも九州を襲った過去の台風として、シーボルト台風、1991年19号台風1954年12号台風、1999年18号台風について、その特徴や災害の状況を含めて書きました。大雨、暴風、高潮、波浪、いずれも警戒すべき、という気象庁から呼びかけの通りなのですが、2005年の14号台風では、宮崎県の総雨量など記録的な大雨となりました。

実は、この台風の接近に伴って、首都圏で局地的な大雨となって、神田川水系の妙正寺川、善福寺川が氾濫、多くの家屋が浸水被害を受けました。当時、私は気象庁予報部業務課の課長補佐という立場で、予報部全体の番頭的な役割だったのですが、14号台風の接近に備えて、翌日からが本番だな、そして九州、四国が大変だな、という意識でした。

ところが、その夜、今まで経験したことのない激しい雨となり、しばらくすると消防車のサイレンが鳴り響くようになりました。ただ事ではないことを悟り、当時のM予報課長と連絡をとってそれを伝えました。台風の接近する地方の事ばかりが頭にあって、自分の頭の上で起きつつある事にほとんど意識がなかったこともあり、課題として胸に刻まれました。

このnoteでも東海豪雨について、台風から遠く離れたところで降った大雨として紹介したところでしたが、この台風第14号について触れませんでしたので、ここで改めて紹介することにします。台風の進路及び中心気圧の時系列について、国立情報学研究所のデジタル台風から引用します。

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九州に至るまでの進路は台風第10号の予想進路に類似していますし、勢力も九州に接近するまで935hPaと非常に強い勢力を維持していました。東京で激しい雨となった9月4日夜の段階では、台風はまだ沖縄近海にあります。東海豪雨の時の台風の位置と同じようなところにあります。この時の降水量ですが、気象庁ホームページからの引用です。http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/bosai/report/2005/20050903/20050903.html

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このページには降水量の観測記録もありますが、気象庁の観測では総降水量の最も多かったのが、練馬の123ミリ、1時間降水量では東京の66ミリですが、東京都や杉並区の観測では、下井草で264ミリ、1時間降水量は112ミリとこれを大きく超えているほか、上記の気象庁の観測の最大値を超えている地点が、少なくとも10地点以上もあります。狭い範囲で集中的に降った大雨であったことがわかります。

台風がまだ遠いから、あるいは台風は九州方面に向かっているから自分の地域は関係ない、といった安心感を持ってはいけないことが、東海豪雨の例と合わせて理解いただければと思います。当時の数値予報技術では予測が難しかったのですが、最新の数値予報技術を使うとどの程度予測ができるのか、これが確認できるとこうした現象への予測技術の現状への認識が深まり、事前の情報の伝え方の改善にもつながるかもしれません。

なお、2005年の水害を教訓に河川改修が進められるとともに環状7号線の地下貯水池も拡充されていますので、同じ雨量が降っても被害ははるかに小さくなるとは理解しています。また、妙正寺川については、今年の8月6日から指定河川洪水予報が開始されています。

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