2022年ベストアルバム
さて、2023年も始まって1ヶ月が経とうとしているところで、2022年のリリースのアルバムで聴いたものの中で、とくによかったものを10枚紹介したい。良いものが必ずしもいつでも聞きたいわけではないと思っているので、聴く頻度や再生数は低いものもある。とにかく好きでいいと思った10枚をセレクト。
飛ばし読みでも、気になるところだけでも、読んでみてもらえたら嬉しい。
そして、少しでも聴いてもらえたらさらに嬉しい。
10. Untidy Soul / Samm Henshaw
私がこの企画を始めて4年目くらいになるのだけれど、そこで毎年ブラックミュージックで新たに見つけたアーティストが入る。入れようとしているのではなく、ラッキーなことにみつかって、気に入るのだ。Tom Mischから始まり、Oscar Jerome、Jon Batiste。そして今年のSamm Henshawである。来年もこのバトンが繋がるといいな、と。
彼に出会ったのは3年前。トヨタ、カローラのCMで流れていた「Church ft. EARTHGANG」。うおおお、好きだぞこれ、と一度聴いてなったのを未だに覚えてる。しかし、当時まだアルバムをリリースしていなかったので、あまり深堀らずに我慢。期待するからこそ、アルバム全体で聴くのを待ちたいちという、こだわり発動。
そして、2022にようやくアルバムリリース。
ええやん。ええですやん!!声も好きだし、ちょっと垣間見えるユルさみたいなのも好き。「Chicken Wings」「Take Time (feat. Tobe Nwigwe)」あたりがとくに好きかなと。
心残りは、来日公演を知らなくて気づいたら公演当日でした。それからというものの、 海外アーティストのライブ情報も確認するようになりました。
9. neon / iri
ここ数年、ずっと大好きで5本指には入るのではないか、というほどかなり聴き込んでいるiri。Spotifyによれば、2022年で2番目に聴いていたアーティストらしい。春に六本木で開催されたTOKYO M.A.P.S.にiriが出演して、そのあとヘビロテしていたのでその影響もあったのかなと。
THE F1RST TAKEのパフォーマンスも最高でしたね。「ワンダーランド」「摩天楼」の選曲もよかった。楽しそうに歌ってるiriをTFTで見れて嬉しい。まだまだ再生します。
年々よくなっていくiriに、今回も期待してアルバムを聴いて、安心。
iriの音でグルーヴィーさで、あの声で、気づいたら揺れてる。
ただ、今作は今までよりも模索したようにも聴こえた。「はずでした」「泡」「雨の匂い」「darling」らへんのアルバム曲で、テンポを落として少しゆったりとしたような、それであってグルーヴはあって。リズムへのアプローチが前作『Sparkle』までとは違う気がする。この変化はめちゃくちゃいい方向性だと思うので、今後もすごく楽しみ。
あと、飲んで最寄りの駅から家まで帰るときの、iriの音楽はフラフラして最高に気持ちいい。
8. Tokyo State Of Mind / Kan Sano
私の音楽遍歴に大きな影響を与えてた「ネオシティポップ」。ネオシティポップに出会ってから、聴くジャンルが爆発的に拡大して、聴き方も変わったわけである。ロック、ポップの「歌う/歌える」ことの優先度合いが落ちて、「ノれる」ことの優先度が急上昇したのだ。
そんな私にとって愛すべきネオシティポップ。2022にリリースされたネオシティポップ(と分類されそうな)アルバムの中で、群を抜いて好きだった。うわぁ、このアルバムはずるいよ、と思う感じ。音とビート感がたまらなく好き。この方、プロデューサー業もしているので、アーティスト活動はそこまで活発じゃなく、ネオシティポップ系でもNulbarichとかくらい有名ってことはないのだけれど、実力は折り紙付き。まじで、聴いた方がいい。
「I MA」「逃避行レコード(98bpm)」「いかれたBaby」がとくに好きかも。
訳あって、ライブ活動を休止するらしいので、いつかライブで観て聴ける日を楽しみにしています。
7. Starfruit / Moonchild
Moonchild!!!!すごく雑な言い方をすれば、割とChill系な音楽を奏でている、3人組のグループ。このグループとの出会いも、実はネオシティポップ経由だったりする。
本当にいいね。1番言語化が難しいのだけれど。
こう、低音のなすリズム感というか、グルーヴ感というか…。
地に足着いた、浮遊感。
言葉通りなら矛盾しているけれど、彼らの音楽を聴けば、なんとなく言いたいことはわかるのではないかな。
前作よりもなんか好き。最初は前作の方が好きだったのだけれど、聴き込んでいくたびに、今作が好きになった。
こちらも、来日公演の日がきてから気づいた。悲しい…。
とくに好きなのは、「Tell Him (feat. Lalah Hathaway)」「Little Things」「Need That (feat. III Camille)」「Love I Need (feat. Rapsody)」。でも、アルバム単位で聴くことが多くて、曲としてどれが好きかは少し曖昧。全体通した雰囲気をもって、聴いてほしい。
6. Face The Sun / SEVENTEEN
2022年の私の音楽リスニングにおいて、ひとつのキーワードになったのは、K-POP。のちほど、詳述するけれど、本当に一時期はずっとK-POPまみれだった。2023年になってからもNew Jeansが「Ditto」で賑わせていたりと、目が離せないK-POP界隈。今年もたくさん聴きます。
年間ベストアルバムに、K-POP組が登場。初。
何度かハマる機会はあったのだけれど、きちんとハマる感じでなくて一過性が強かった。だから、年末にまとめるときに印象に残っていなかったり、聴き続けていられなかったりした。そこで、SEVENTEENがやってくれた。
前作『An Ode』を受験期に友達に聴かされ、K-POPを聴かなくてごめんなさいという気持ちになったのは、今でも覚えていて。少し時間が経ってまたK-POPへの熱量を思い出させてくれたのもまたSEVENTEENと。もはや彼らがアルバム出すたびに、K-POPに戻ってくるのではと思えてきた。
ほかのグループと比べて、とくにSEVENTEENのことが好きな理由は、単純に音楽がすごくいい。本当に申し訳ないのだけれど、ダンスはいくつかみて、MVもみたけれど、メンバーの顔と名前はわからない……。だけど、全体として、パフォーマンスがすごくかっこよくて、人気なのもそりゃ頷ける。音楽性だけで好きになれる上に、ビジュアルもダンスもイケてたらそりゃずるい。
「Darling」はめちゃくちゃ聴いた、ほんとに。1曲目からぶち上げです。
ほかには、「HOT」「Domino」「'about you」がおすすめ。
5. WHO CARES? / Rex Orange County
どんな音が好きですかと聞かれて、いくつかある答えのひとつが「ビート感のあるストリングス」である。Tom Mischの「South of the River」のようなイメージ。ストリングスが放つ、オーケストラにあるようなちょっと高貴そうな雰囲気と、グルーヴさを持つビート感の組み合わせが何とも好き。
そして!!今回Rex Orange Countyがそれをやってくれました。
前作『Pony』は、隣の家に住む優しいお兄ちゃんが弾き語ってくれるような、そんな雰囲気があった。それはそれは、洋楽に聴き馴染みがなかった私の心をも射止めたわけです。
今作はその上に、もうちょっとビート感と、ストリングスが載っかった気がする。それが以外にも、彼の声と音楽と合う。これは嬉しい誤算で、予想以上。アルバム全体を通して、ストリングスがすごく有効的に使われているように感じられて、すごく好きな1枚になった。
そして、このジャケット。最高すぎない!?このジャケットまじで好き、めっちゃいい。
とくに好きなのは、「KEEP IT UP」「AMAZING」「ONE IN A MILLION」「IF YOU WANT IT」「7AM」。
女性問題があったのは残念だけれど、また頑張ってほしい。私はまた聴くから。
4. Midnights / Taylor Swift
ここ3年くらい、Taylor Swiftに恋している。それくらい、好きでよく聴いている。彼女の音楽性の遍歴を見ても、ストーリー性を見ても、完璧だと思う。スターとは、まさにTaylor Swiftのこと。
2022年に最も聴いたアーティストは彼女だった。
そんな彼女のニューアルバム『Midnghts』が10月にリリースした。
タイトルから、初めて聴くのは夜中にヘッドフォンで歩きながらと決めていた。初めて聞いたときは「重い」と思った。音の感じが。
直近2作『folklore』『evermore』から、『Red』『1989』みたいなポップど真ん中の爆上げチューンの方向でないことは予想していたけれど。初めて聴いたときは、なんだこれ、予想と違うぞという感じだった。もっとアコースティックに近い感じで来るかと思っていた。
でも、聴き込むと良さが染み込んでくる。重めの音作りの上に、確かなメロディセンスがあって、それは確かに彼女のモノ。これが記念すべき10作目。Taylorの新境地。またさらに好きになりました。
とくに好きなのは、「Lavender Haze」「Anti-Hero」「Snow On The Beach (feat. Lana Del Rey)」「Midnight Rain」「Mastermind」。
このアルバムは数々の偉業を達成したアルバムでもあって、本当に素晴らしいと思う。おめでとう。
それはそうと、日本に来て欲しいです。なにがなんでも、いくので。
3. LOVE ALL SERVE ALL / 藤井風
みんなの天使、藤井風。
彼の武道館公演に行けたことは、ずっと自慢していると思う。
それくらい、歴史に残る公演だったはず。
前作『HELP EVER HURT NEVER』は、完璧なクオリティとバランスで、鮮烈なデビューになった。そのたった1枚のアルバムから、武道館まで到達した。そして、「きらり」「もうええよ」で紅白出演。
順調すぎるキャリアの中で放たれた、2nd『LOVE ALL SERVE ALL』。
初めて聴いた感想は、「大丈夫、期待に応えてくれてる。よかった」。あまりにも上がりすぎているハードルに正直緊張もしたが、安心した。
何が良いかといえば、前作同様、アルバム全体の構成とか繋ぎが好き。
前半は、「きらり」「まつり」と話題曲が多くギア上げすぎでは?と思いもしたが、大丈夫。中盤「ガーデン」「ロンリーラプソディー」あたりで祈りのような、彼ならではの雰囲気が出る。
とくに終盤。「それでは、」から「"青春病"」への繋ぎは鳥肌。ここで終わらせずに、「旅路」で過去見つつも、未来があるそのニュアンスが好き。
ここまでの作品、ほとんど歌詞には言及してなくて、音楽的な話ばかりだったけれど。この作品は触れさせてほしい。
きっとまだすべて解釈できていないし、これから解釈かわることもあるけれど。「ガーデン」が大好き。
2. blue water road / Kehlani
11月くらいにみつけて、そこからずっと聴いている。彼女こそ、私の最新のR&Bへ入り口となってFrank Ocean, H.E.R., SZAを聴き直すきっかけになった。90s,00sのR&Bは好んで聴いていたけれど、ルーツとしてのかかわりはあるものの、聴き方が全く違うと思うのだ。だから、この入り口になったKehlaniは私の中で大きかった。
Twitterでこのアルバムを言及しているものを見つけて、少し経ってから聴いた。全体通して、本当に良かった。好きだった。
90sのR&Bのわかりやすくて、聴き馴染みよくて、みたいな感じとは違うR&Bの広さを知れた。こういう音楽もR&Bなんだ、と。深いところへ、息を止めて潜るのだ。
グルーヴ感はあるし、揺れるけれど、踊る感じとはまた違う感じ。Kehlaniは温かいくらいの海に潜ってる感じがする。音も打ち込みがあったり。これがうまく作用して、ひとつの音楽として浮き上がってくる感覚がわかって、嬉しかった。
そして、スモーキーな感じもある彼女の声もよくて。
とくに好きなのは「little story」「up at night (feat. justin bieber)」「melt」「wodering/wandering (feat. thundercat & ambré)」。これも全体通して聴いてほしいアルバム。
2022で最も良かった出会いのひとつ。
その勢いのまま、飛び込んできた来日公演のチケットも手に入れました。
2月15日、Zepp Diver City公演。楽しみ。それまで頑張る。
1. Orbit / STUTS
おそらく、今日本で最も注目されているトラックメイカー・STUTS。
まだ高校3年生で受験勉強のときに出会って。「夜を使いはたして」からゆっくりお近づきになって。まったく知らなかったトラックメイカーというポジションを少しずつ理解しながら、彼の音楽をどんどん好きになっていった。
昨年、『大豆田とわ子と三人の元夫』の主題歌として「Presence」を作り、メインボーカルに松田たか子を据えて、コーラスに岡田将生、角田晃広、松田龍平を、客演にKID FRESINO、BIM、NENE、Daichi Yamamoto、T-Pablowを呼んだ。話題になって、テレビなどで見るようになって、ちょっと感動したのを覚えている。
その話題もあってか、STUTSがプロデュースする超豪華な面々を揃えたMirage Collectiveが『エルピスー希望、あるいは災いー』の主題歌に抜擢。ボーカルがSuchmosのYONCEですって。なんだって。
世間に本格的にバレ始めてる。
そんなSTUTSの4年ぶりのフルアルバム。これすごい。
まずは、アルバムを見渡したときの客演がすごい。今をときめくラッパーたちがずらずらと並ぶ。全員ラップが上手くて、彼らの活かし方と配置もうまいなぁと唸る。
それだけでなくて、ジャンルもすごい。HIPHOPだけの曲だけでなくて、ジャンルを超えてる。STUTSの色をどこかに残しつつ、本当に色んなトラックを作ってくれる。
アルバムの中には、インストゥルメンタル曲も何曲かある。それがまたよくて。インストは、アルバムにちりばめられた曲たちを繋げる「橋渡し」的なものが多いと思っているのだけれど、このアルバムでは違う。むしろ主役級。どれもいい曲なんです。
リリースツアーの11月11日東京・LINE CUBE SHIBUYA公演をAbemaで観た。この公演は今までの作品も含め、非常に多くのラッパーが参加して、本当にいいライブだった。PCの前で大盛り上がりだった。音楽がいいのはもちろんなのだけれど、バンドメンバーやゲスト、オーディエンスのすべてに愛されていた。彼の超謙虚で人の良い、あの人柄あってこそのあのステージだったと思う。
あの現場に行きたかった!!!
そこから、もう一度アルバムを聴き直して1位になるほど好きになった。
きっと彼はこれから、いやもうすでに大忙しなことだろう。
彼の作る音楽を楽しみに、彼の音楽を聴いて待っていたい。
本当は、もっと音楽全体の総括をしたかったけれど、字数が6000を超えているのでこのあたりで一旦区切ることにする。
ジャケットからでも、きっかけは何でもいいから、とにかく聴いてみることが音楽のスタートラインだと思っている。このnoteがきっかけで聴いてみようと思ってもらえたら幸いである。
今年も音楽とのいい出会いを祈って。
楽しくDigしたいと思う。