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メイポール(五月祭の柱)とメイポール(白樺で飾った柱):夏至について

今日は夏至。最も昼が長い日です。
ということで、夏至にまつわるお祭りの話をさせていただこうと思います。

夏至祭、というのは日本人からすると少し奇妙に聞こえるかもしれません。日本に住んでいる人が夏至を意識するということは、あまりないのではないでしょうか?
日本では夏至と言っても7時頃には日没を迎えますからね。

しかし、日本よりも緯度の高い北欧では事情が異なります。
【白夜】という言葉を聞いたことはありませんか?
白夜というのは、日没の時間が遅すぎ、日の出が早すぎるために、太陽が沈まない夜のことを指します。これは緯度が非常に高い地域でしか見られません。

はい、ここまでの話で気が付かれた方もいらっしゃるかもしれませんが、北欧での夏至はこの白夜と結びつく季節のイベントです。

白夜=日没が遅い=夏至 といった式ですね。

日が沈まない1日というのは、そこで暮らしている人達に大きなインパクトを与える出来事でしょう。事実として今でも夏至の日に近い日は祭りを開いたり、長期休暇になっていたりするそうです。

ここまでの話で、北欧における夏至の日が持つ重要性を理解していただけたと思います。
北欧での夏至の祭りは、一般的に以下のような風景が見られます。

柱を花や蔓で装飾して、それを町や村の中心に立てます。これをメイポールと呼びます。この名前には、白樺の葉で装飾された柱という意味があります。

メイポールを立てたら、その周辺で「カエルのダンス」を踊ったり、新じゃがを香草と共に煮たものをニシンの酢漬けと共に食べたりします。デザートは決まってイチゴやベリーです。
そして、みんなで大きな篝火を炊きます。

また、夏至祭りの前日に収穫された植物には特別な力が含まれていると考えられています。

ここだけを見ると、「牧歌的な雰囲気の昔ながらのお祭りなんだな。」と思われるでしょう。


ここでいちど、別の話題をさせていただきます。
ヨーロッパには5月の初めに開かれる五月祭という祭りがあります。
この祭りも、飾り立てられた柱を立て、柱の周りを踊り回り、大きな篝火を焚きます。
この祭りの中心となる柱の事を、メイポール(5月の柱)と呼びます。


北欧で、夏至の祭りの中心となるのがメイポール(白樺で飾られた柱)
ヨーロッパで、五月祭の中心となるのがメイポール(五月の柱)

大変似通った名前の柱を祭りの中心に立てていますが、このふたつの祭りには関係がないのでしょうか?

さて、話を戻します。

夏至祭は牧歌的でのんびりとした側面だけで終わるような、のほほんとした祭りではありません。

いきなりですが、人類学の名著である古典「金枝篇」から言葉を引用させていただきます

「ガリアのケルト人たちの間では毎年夏至に祝祭が開かれ、そこでは樹木霊もしくは植物霊を表す生きた人間たちが、ヤナギで編んだ檻に入れられて焼かれた。」

「もし私が正しければ、これら原始の火祭りの本質を生したのは、樹木霊を表す人間を焼くことであった。」

J.G.フレイザー「金枝篇(下)」

どうでしょうか?
だいぶ、夏至祭りへのイメージが変わったものだと思います。

人を燃やす目的としては、太陽をより輝かせ、植物の繁栄を祈願するものだったとされています。

さて、同じく金枝篇から、北欧の夏至祭りに関連する項目をもうひとつあげましょう。

・「ヨーロッパの先史アーリヤ民族全ての分派に見られる、火祭りの原始的特徴及び顕著な類似を考えれば、火祭りというのは、この民族から生まれた様々な分派が故郷から離散していく際に携えていった、共有財産的な宗教儀式の1部である。」

・「ヨーロッパの大概の地域では、太古から農夫が1年のある特定の日に大篝火を焚き、そのまわりで踊ったり、その火をとびこえる習慣があった。」

つまり、この血なまぐさい祭りは元は同じ祭りだったのです。
それがヨーロッパと北欧へ広がり、気候の変化によって植物の繁栄する季節が変わり、祭りの時期がズレて行ったのではないでしょうか。


ひと月以上離れた時期に立てられる2つのメイポールの間にある奇妙な関係は、俺の好奇心を強く惹くテーマなので、これからも調べていきたいと思います。

最後に、ヨーロッパでの五月祭の前日の日のことを「ワルプルギスの夜」と呼び、この日は魔女の祝祭の日だと考えられています。

北欧の夏至祭りの前日に収穫された植物には魔力的なものが宿っているとされています。

これらの奇妙な符号をかき集めていき、いつかまとめてみたいものですね。

ここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございました。
また会える日を願っております。

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