【響け!ユーフォニアム3】原作とアニメの違いを考えてみた
3期の放送が終わり、もうすぐ1か月が経とうとする今日この頃。
今一度、原作やアニメを見返して、作品を振り返っていた。
細々とした違いは無数にあるけども、大きいと思った所をあげてみる。
①1年ボイコット事件、サリーへの対応
【原作】かなり打算的な久美子のモノローグ
【アニメ】心理描写のセリフ化は無かった
最終的な着地点は同じだけど、過程が違っていたように思う。
サリーに感謝している事、サリーのお蔭で北宇治が良くなる、と伝えるのは共通だけど、アニメでは自分は親しみやすい人物です。と言わんばかりの振る舞いでサリーの心を和やかにしていた。
原作では理想の人物像を意識した振る舞いを行い「刺さった」など、相手の変化を見抜く描写がとても印象的だった。
(後日談として奏から聞く、梨々花が感じた「人心掌握術」のセリフはアニメではカット)
ここに限らずアニメでは、人間観察、人間に興味がある久美子が、田中あすかと過ごした経験を活かして、理想の人物像として振る舞い、自分の言葉を相手の心に響かせたい、という久美子の特性が薄まって描かれていた。
部長という立場になった事で1期・2期では見られなかった、久美子の見所の一つのハズだったので、そういう打算的な久美子も好きな人からするとアニメ久美子は物足りなかったと思う。
黄前久美子という一人の人間をピックアップすると、原作の方が深かった。
②月永求問題が落ち着いた時期
【原作】文化祭の翌日
【アニメ】サンフェスの翌日(原作よりだいぶ早い)
<大まかな時系列>
1年ボイコット事件
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サンフェス
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コンクール毎にオーディションを行う事を部員に伝える。久美子、ようやく進路のことを考え始める。
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あがた祭り
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府大会のオーディション、葉月初めてA入り
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府大会
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盆休み1日目:大学説明、2日目:プール、3日目:みぞれが出る演奏会(原作)※アニメでは関西の後
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合宿、関西大会のオーディション、久美子ソリを外れる。
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合宿後から部内の空気が悪くなる、麗奈と修一が衝突し始める。(アニメ)
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魔法のチケット(アニメ)
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関西大会
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大好きのハグ、みぞれが出る演奏会(アニメ)
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文化祭(原作)※アニメでは文化祭シーン無し
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魔法のチケット(原作)
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大好きのハグ(原作)
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全国大会のオーディション
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全国大会
原作ではサンフェスの演奏後、求が樋口君に絡まれている所を久美子がケアする。
その後、源一郎先生が親族である事を求の口から聞く。
この時、アニメとは異なり樋口君と2人で話していない。
樋口君と話すのは文化祭になる。
アニメではサンフェスの演奏後、久美子は樋口君から源ちゃん先生の事、求の姉が亡くなっていた事を「緑と一緒に」知る。
翌日、緑は求に対し踏み込んだ質問をするも、本心を言わなかった。
職員室にて、久美子は滝から、求を龍星に転校させたい打診がある、という事を聞く。
その日の帰りの駅前にて、久美子と求が2人で話す。
その際、求は姉の事、転校の事を久美子が知っている事を知る。
それを踏まえて、姉が病気になり亡くなった経緯を語る。
姉の面影を追って緑を慕ってる事、龍星に戻るつもりは無い事を伝える。(この一連の情報は、緑とは共有しなかった。)
久美子は、樋口君と源ちゃん先生には本心を伝えて欲しい事を求に言う。
また、北宇治の一員として一緒に良い演奏をしたい。と真っすぐに伝える。
北宇治の人間でありたい意識が人一倍強い求にとって、何よりも嬉しかった言葉。
この4話があったからこそ5話以降、月永求という人間の変化・成長が感じられたし、奏がしっぺ返しを食らうやり取り、差し入れのジュースを受け入れたシーンなど原作ではここまで見えなかった奏との関係も楽しめた。
時期は飛ぶが、その後の合宿にて、求は緑を呼び出し二人で話した。
話した内容はおそらく、先述の久美子に伝えていた事(それを久美子は知っているという事)、緑にしか伝えなかった事、が含まれる。
久美子「何て言われたの?」と聞き、緑の「教えない」というやり取り。
この伝説の返しが生まれた事が、求関連のアニメ演出の最大の功績と思う。
③魔法のチケットの使用時期
【原作】全国大会のオーディションの数日前
【アニメ】関西大会の5日前
麗奈との関係がドン底になったタイミングで使った状況は共通している。
ただ、原作では、久美子が全国ソリを勝ち取るブーストの一つとして機能した。
アニメでは、関西前の久美子の迷いを解消する事として機能した。
そして関西当日、演奏前に熱い演説を行い、部員の士気を高めて全国行きを決めた。
おそらく最難関であろう全国への切符を手にするために、田中あすかの言葉で久美子を復活させたのだから、この使用タイミングの改変は納得できた。
④全国大会のユーフォのソリスト
【原作】久美子がソリに選ばれる
【アニメ】真由がソリに選ばれる
流石にここが1番の改変ポイント。
原作では、公開オーディションは無いし、久美子が返り咲くけども、確かにその理由と過程が少し弱かったかなぁっと読んでいて思っていた。
元々実力差に差は無かったという意見、麗奈と全国でソリを吹くという気持ちが真由を上回った、と言われると確かにそりゃそうなんだけど、①部長仕事、進路の事、麗奈や真由との人間関係で迷った事で、十分な練習時間が取れなかったと思われる点②清良で培ったトップクラスの演奏能力&マイ楽器を持っており練習時間も取れた点、を踏まえて想いだけでまくれるレベルでは無いかなぁと感じていたので、アニメの改変は現実的な選択で、すんなりと受け入れられた。
でもこれは原作批判じゃなくて、あらかじめ原作で一つの世界線を知れていたからこそ、アニメ版の選択がより心に刺さった。
「Aの方は前に」という足元を映して、たっぷり間を空けてから真由が前進するあの時間は未だに脳裏に焼き付いている。
ソリのオーディションで真由が選ばれ、久美子はショックを受けるも、部員の士気を高めるため部長の務めを行う。
個人的にはここが感情の沸点の最高潮だった。
この脚本のお陰で黒江真由も黒江真由ファンも救われたと思う。
そして大吉山で麗奈と泣き合うシーン。
12話は凄かった。
⑤全国で金賞を取った後
原作では、久美子が秀一を引き込み、リア充爆発するあの瞬間、それを見た麗奈の「これにてハッピーエンドってね」
ここのシーンは絶対にアニメ化して欲しいと思ってたから寂しかった。
イタリアンホワイトのヘアピンで全て悟れた演出も良かったけども。
というように原作既読者たちは各々お気に入りのシーンがあって、映像化を楽しみにしていたけど、改変やカットがあって腑に落ちない箇所もある。
ただ、花田十輝の脚本ないし京アニ制作陣によって沢山の登場人物を、より魅力的に引き上げてくれた。
原作は吹奏楽部を通して黄前久美子という人間が教師になる事を決意する過程を主軸においたヒューマンストーリー。
原作未読の方はぜひ読んで欲しい。
関西弁も自然に感じられるくらい、直ぐに作品に入り込める。
原作で先に楽しんで、アニメではリアルタイム視聴し、SNSの盛り上がりも含めて楽しめて、幸せな時間だった。
作者、京アニ、制作に携わった人全てに感謝したい。
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