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『熱風!!南インド映画の世界』のパンフレットで『ヤマドンガ』を担当しました&インド神話講座のご案内

2023年10月20日から公開されている南インド映画特集『熱風!!南インド映画の世界』で『ヤマドンガ』のパンフレットを担当したのでそのご報告と、パンフレットではスペースが足りなくて語りきれなかった『ヤマドンガ』と神話についてちょっと語ろうとおもう。

『ヤマドンガ』の作品レビューを担当した件

『ヤマドンガ』はあの『RRR』のラージャマウリ監督とビーム役のNTR Jr.氏(タラクさん)が主演の映画だ。詳しい人がそのへんは説明してるだろうからあまりここでは語らない。ゴージャスで派手で景気がよくて神様もたくさんでてきてなんか縁起がよさそうだし観たらご利益をもらえそうなそんな映画なので、ぜひ劇場でご覧いただきたい。あとタラクさんの超絶すごいダンスをおなかいっぱいになるまで堪能してほしい。

10/20より『熱風!!南インド映画の世界』
『サイラー ナラシムハー・レッディ』、『ヤマドンガ』、『マガティーラ 勇者転生 完全版』、『プシュパ 覚醒』の4作品が公開される

『ヤマドンガ』の中に登場するインド神話についてはパンフレットにたくさん書いたので、まずそちらをお読みいただければうれしい。
ヴェーダ時代の古代神やアーンドラ・プラデーシュ州あたりのナラシンハ信仰についてもかるく触れているので、映画をみたあとにもう一度読んでもらえると「アー!あの神様はそういうことーー?!」と理解の幅がふえるかもしれない。あとパンフレットなのでいつもよりちょっとかための文章にしてみた。
しかしインド神話盛りだくさんの『ヤマドンガ』が解説しきれるわけがなく。入りきらなかった一部をここで紹介できればとおもう。

マールカンデーヤ

ヤマ様と神様の会話の中に登場した人物。えらい聖仙。

ラヴィ・ヴァルマーによるシヴァとヤマとマールカンデーヤ

めちゃ賢いけど若くして死ぬ運命だったマールカンデーヤくん、お約束通り運命の日にヤマ様がお迎えにきたけど「シヴァ様たすけて!」ってシヴァ様の象徴であるシヴァ・リンガお祈りしたらシヴァ様がやってきて、ヤマ様と戦って勝利し、マールカンデーヤくんは助かりました。というお話。マールカンデーヤくんはその後偉い聖仙となりましたとさ。
おそらく古代の死の神であったヤマ様よりシヴァ様のほうがえらいという、シヴァ様をたたえる物語のひとつで。ムリティュ=死を克服したシヴァ様はえらい!それ以降ヤマ様はシヴァ様に帰依しました、みたいな位置付けになったりならなかったり。

あのダンスシーンの3人の天女たち

あの女性たちはインド神話ではすごく有名な天女(アプサラス)で、名のある神々や聖仙ですら惑わせる美貌の持ち主。3人まとめて連れてくるヤマさますごい〜!
アプサラスは一応夫となる存在は男性のガンダルヴァという種族がいるけど(有翼の姿であらわされる)決まった夫を持たないともされるので、性的にはけっこう自由奔放な存在として描かれることが多い。

ウールワシー(ウルヴァシー)

あまりにも美しすぎて神々が恋人の座を争った。ヴァルナ神とミトラ神が争っていて、彼らがウルヴァシーを見てうっかり漏らした精からめちゃつよ聖仙が生まれたりしてる。

天界に戻るウルヴァシーと引き留めようとするプルーラヴァス王

そんなこんなでウルヴァシーが人間世界でくらしてたとき、プルーラヴァス王に出会い熱烈な求婚を受け、彼の妻になった。でも人間と結ばれたことをよく思わないガンダルヴァたち(天女=アプサラスの伴侶はガンダルヴァと一応決まっている)の策略により、王は結婚の誓いを破ることになり、ウルヴァシーは彼のもとを去る。しかしその後、王は彼女を必死に探して見つけ出した。いろいろあってプルーラヴァス王はガンダルヴァに変化し添い遂げることができた。
他の物語としては、ウルヴァシーは『マハーバーラタ』のアルジュナに恋人にならないかと迫ったりしてる。

メーナカー

あまりにも美しいので、インドラ神によってめちゃつよヴィシュヴァーミトラ仙をたぶらかして力を奪うようにと命じられ、彼の妻となる。結果、娘が生まれたがメーナカーは娘を捨て、ヴィシュヴァーミトラは修行の道に戻った。娘は別の仙人に拾われて育てられる。娘はあのシャクンタラーである。
ちなみにヴィシュヴァーミトラ仙人はもともとクシャトリヤの王仙だったが超絶すごい修行とパワーでバラモンの聖仙になったすごいめちゃめちゃつよつよ仙人だ。

シャクンタラーを天界に連れ帰るメーナカー

シャクンタラーについてはこちらにまとめてあるのでどうぞ。

ラムバー(ランバー)

ラムバーは他の二人とはちがってちょっと悲しい物語が多い。
メーナカーとヴィシュヴァーミトラ仙が別れてしまったのでインドラ神がまた別の天女をつかわそうと派遣したのがこのラムバー。今度はさすがのヴィシュヴァーミトラ仙も怒って、彼女を石にしてしまった。(呪いはあとでとけた)
あと、『ラーマーヤナ』では夫のナラクーバラがいると言ってるのに天女なんて娼婦だろ〜ってラーヴァナに乱暴された。ブラフマー神がめちゃめちゃおこってラーヴァナに「おめーこんど女を乱暴したら頭が吹き飛ぶぞ」と呪いをかけ、そのせいでラーヴァナはシーターに手を出すことができなかった。とか。
ほかにもいろいろあって、彼女が愛について情熱的に語る物語とかもあり、不憫ながらも愛されている天女である。

『ヤマドンガ』と古代神について語る講座あります

というわけで宣伝。11月24日(金)に朝日カルチャーセンター名古屋教室のオンライン講座で、『ヤマドンガ』について語るので、もし詳しく知りたい人はこちらもどうぞ。
『ヤマドンガ』に登場した神様たちや古代神、南インドで人気があるナラシンハについてもっと深く語るよ。興味があればぜひ〜映画観てなくてもインドラ、ヴァーユ、スーリヤなどが知りたい人におすすめ。

おまけ。『ヤマドンガ』のかんそう

ヤマドンガ、さいこうにたのしい映画でしたね!いやーインド神様オタクとしてはマジで滾った。神様同志の会話とかすごくさいこーでした!
あとロマンス!ロマンスがいいね!!!マヒちゃんかわいい!けなげ!ロマンス小説だとドアマットヒロインっていうのああいうのは。踏みつけられ踏みつけられ、かわいそうなんだけど芯が強くてがんばりやさん。そりゃあ王子様もくる。そうね、ラジャが王子様!なまえもラジャ(王様)だから子供だとラージクマール(王子様)だね!どろぼうだけど!ちなみにマヒちゃんの名前マヘーシュワリーはシヴァ神のお妃様のパールヴァティーのことだよ。
いやーそれにしてもここからのハッピーエンドができるってほんとうですか?と問いたくなるさすがのラージャマウリ監督節!さいこう!ありがとう!
ナラシンハさま、あのペンダントはどこでてにはいりますか?わたしもほしいですあれがほしい。神棚にかざりたい。グッズはでませんか??ナラシンハさまラジャをおいかけてくれてありがとう!
しかしいろいろラジャにアレされて不憫なヤマ様ですが、ヤマ様さいこうにかっこよくありません???あの口上とかほんとうにすごいかっこいい、あと顔がいい。すごくかおがいい。ほんとうに神様!ってかんじがする。すごい。あれが貫禄ってやつ!!もうね、ヤマ様があんなにかっこいいからよりヤングヤマ様が映える。ヤマ様の全身アクスタほしい。ヤングヤマ様のアクスタもほしい。ふたつ並べて祭壇に飾りたい。
昔の神様映画でローカルなネタがバリバリの映画がこんなふうに日本で公開されるなんてほんとうにありがたいですありがとうございますとてもたのしかったです!!!

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