映画『マニカルニカ ジャーンシーの女王』を観てきた。現代に蘇るラクシュミー・バーイー。とにかくすべてが美しかった。
なますて。天竺奇譚です。
ラクシュミー・バーイー推しのオタクなので、初日に観に行ってきたよ。
2週間の限定公開ってことなので慌ててレビュー書いてます。
公開期間伸びてくれーたのむーもう一度観に行きたいのだー!
映画のかんそう。
この記事は、ある程度は配慮してるんですけど、ネタバレありかもしれないのでお気をつけください。ていうか歴史モノの映画なのでどこまでがネタバレなのか線引きが難しいっちゃ難しいんですが。一応、おまけ以外の記事では、公式サイトに書いてあるレベル以上のネタバレはしてないと思うです。たぶん。でも、まっさらな状態で映画をみたいという人はこれ以上読まないほうがいいと思うです。
パンフレットがあるー!すごいー!うれしー!!!!!2週間限定なのに!ツインさんありがとーーー!
さて、過去の記事を読んでもらってもわかる通り、ラクシュミー・バーイー大好きなので初っ端の幼い頃のシーンからもう涙目。笑い顔の尊さに涙目。
ていうか推しがスクリーンで動いてるし!日本語字幕だし映像めっちゃ綺麗だし!宝石アクセサリーキラッキラッの王妃様が目の前に存在してるってだけでもうありがたくて目が潰れそう。
こんな幸せを年始早々与えてもらって私はどうしたらいの???神様にどう恩返しすればいいの??!!!と発狂しそうだったので、そういう奴が書いた記事だと思っていろいろ差し引いて読んでください。たのみます。
だいたい、歴史オタの推しって既に死んでて(泣)基本的に新たな文献が発掘されるとかじゃないと公式からの新しい供給は皆無なジャンルなので、バーフバリ製作陣でラクシュミー・バーイーが現代に蘇るとか??は??ほんともう心臓止まりそうでした。だって予告編こんなんだよ!!!!!!
ハーー!まじカッケー!!!!日本語字幕ついてる!!!!日本語の !字幕が!!!!!ハーーーやばいしんじゃうしんじゃう
ストーリーについては、たぶん公式サイトとかにあるのでそういうの参考にしてください。以下、公式サイトから。
ヴァラナシで僧侶の娘に生まれたマニカルニカ(カンガナー・ラーナーウト)は、ビトゥールの宰相に育てられ、幼い時から武士階級の男子同様に剣や弓、乗馬を習って成長した。その勇敢な行動を見かけたジャーンシー藩王国の大臣から、藩王ガンガーダル・ラーオ(ジーシュ・セーングプタ)との縁談が持ち込まれ、やがてマニカルニカはジャーンシーに嫁ぐ。藩王は彼女にラクシュミーという名を与え、マニカルニカは人々からラクシュミー・バーイーと呼ばれて親しまれる。しかし、生まれた王子は夭折し、親戚の幼い男児を養子に迎えたものの、間もなく藩王が病死してしまう。その機に乗じてイギリスは藩王国を併合、ラクシュミーは城を後にする。だが1857年にインド大反乱が勃発すると、ラクシュミーも呼応して蜂起、国のため、民のため、戦いの場へと歩を進める!
公式サイトより引用
ざっくりまとめると、マニカルニカというおてんばな少女が見初められて王妃となるけど、いろいろあって英国に国を奪われて大変な目にあって、英国からの独立を目指し反乱する。というかんじです。
映画のはじめに、「これは史実をもとにしてるけど誇張してるところもあるよ、特定の団体をディスってるわけじゃないよ」みたいなかんじのことが書かれているです。
んじゃあどこからが史実なのか。どこを誇張してるのか。
わたしはラクシュミー・バーイー大好きオタクなので。映画観てだいたいどの辺が誇張されてるかとか、そういうのはだいたいわかったですぞ。オタクなので!でも、そういうの今の段階で種明かしするのは公開中だし野暮なことだなあ、と思うので、この記事では狂った感想と、あたりさわりなさげなインドなネタをつぶやきます。
あとでがっつりとネタバレある記事は書くかもしれません。
まずはじめに。観終わった一番はじめの感想としては。
いやーまじヤバいですねやばいですね。ヤバいしか言えないくらいウワー最高だったんですけど、そればっかりだとあれなので、ちょっと真面目に書くとすると。
思ってたより史実っぽいかんじの作りだったです。最高。最高すぎてしんどい。しんどいけど最高でした。ありがとう。
過去の記事にもあるけど、インドは口頭伝承が中心で資料を残さなかったので、ラクシュミー・バーイーの逸話はもう伝説化していて、どこからが史実でどこからが伝説なのかわからなくなっている。(英国側の資料はある)
ということもあり、インドで放映されているラクシュミー・バーイーが主人公のドラマとかだと、かなりとんがった創作エピソード(少女時代に英国人をバシバシ鞭打つとか)が映像化されてることもあり、今回の映画もそういう史実とはかけ離れた内容も盛り込まれるんだろうなー。って勝手に思ってた。いまはヒンドゥー至上主義が台頭してていろいろアレだし、王妃様バンザイな、いろんな創作エピソードモリモリかもしれないなー。それでもしかたないなー。って。
でも、伝説が元になってるシーンがありつつも、この映画は無駄に誇張したり荒唐無稽なかんじではなくて、現実味がある内容だったので、作り手側の真摯さや、王妃へのリスペクトを感じてジーンときてしまった。
まあ確かに、ラクシュミー・バーイーの逸話として有名なものはしっかり盛り込まれていたので、あえて史実っぽくしたのではないとは思うのだけども。ダンスも歌も素敵で楽しめるし。エンタメとしても最高級。
それでも、王妃様を崇める楽しい作品にしてやるぜって感じじゃなくて、避けられない運命、どうしようもないラストに突き進んでいくかんじが…あああ…こう…戦争の無常さとか。この世の無常さとか。あああ。
王妃の言葉にはヒンドゥー教の聖典バガヴァッド・ギーターからの引用もあって。うわぁ。王妃様はクリシュナ様でもあったんや…
一人の女性の人生がですね。一人の少女が、王妃となり、母となり、国を一人で背負って強大な敵と戦う。この英雄譚には誰でも心打たれるだろうなと思うんだけど、そこに王妃の覚悟と運命と神へと変わっていく過程が加わって…まじでヤバかった。もちろん役者さんのパワーもあるとおもう。はじめとさいごで全然顔が違うし。神様乗り移ってるんじゃないかと思ったくらい。でもこう、ほんと、すごかった…
物理的に絶対敵わない英国と戦おうとし、実際に戦った王妃の苛烈な行為は、狂っていると思われても仕方ないかもしれない。
でも、彼女はそうせざるを得なかったし、それが彼女の役割だった。滅びゆく王国に嫁いだ彼女の、王族(クシャトリヤ)に嫁いだ彼女の、生きている意味、義務(ダルマ)だった。
そして彼女の存在が、彼女の死後90年後にインドが英国から独立するときの人々の魂の支えとなり、彼女を称える詩が人々の心に深く刻まれ、現在に至るまで英雄として語り継がれているまさに英霊となったのだろうと思うと、ヤバい泣きそう。
彼女は死ぬために生きていた。いや。この世に生を受けたら必ず死ぬので、人は皆死ぬために生きているんだろうけれども。 生の意味がね。こうね。死を前に迫ってくるというか。
では私は死ぬまでに何ができるだろうかと。もちろん私なんて王妃様に比べたらただのうのうと生きているモブなんだけど、比べるのもおこがましいんだけど、私がこの世に生まれた意味は何だろうかとか。未来に何を残すことができるだろうかとか。そういうことまで考えてしまう重さ。つらい。しんどい。うああああ。
当時、「インド」という概念はなかったかもしれない。でも、彼女の行ったことはまさに現在ではなく未来を見据えていたのだとしたら。現世にありつつも、この世ではなく未来を作る礎になった、狂気を宿した神。私には彼女の姿がそうみえたのだった。この映画では、そういう人間を描きたかったのかもしれない。と。そう思ったのでした。
この映画は、インドや、ラクシュミー・バーイーっていう女性のことを全くしらなくてもよいとおもうのです。でも観終わった後。確実に魂を揺さぶられる人はいるだろうな。そういう映画だとおもうのです。
おわり。
・・
おまけ。
・・・というのもアレなので、以下にインドな小ネタをまとめます。
ここからさきは若干ネタバレ的な要素もあるのでご注意を。
観た人のほうが楽しめるかと。
・みんなが叫んでた「ハラハラマハーデーヴ」はなんだろう。
「ハラ ハラ マハーデーヴァ」
ハラ=破壊者を意味するシヴァ神のこと。
マハーデーヴァ=偉大なる神を意味するシヴァ神のこと。
破壊と戦いの神でもあるシヴァ様を讃える言葉。戦いの前に戦士たちが叫ぶシーンはよくインド映画にもあるよね。
・なんかメインじゃないカップル?が踊ってたけど?
あの女性は、ジャルカリ・バーイーという女性で、ラクシュミー・バーイーの騎馬隊にいた女戦士で、王妃の友人でもあり、王妃とよく似ていたので影武者をしていたという伝説がある人です。インドではめっちゃ人気あって銅像もあります。ダリットというカースト外の差別される階級の村出身でもあったので、バラモン出身でクシャトリヤに輿入れした高貴な身分のラクシュミー王妃が彼女と友達になるとか、同じ手から食べ物をもらうとか絶対あっちゃいけないことなんですが、身分や慣習にとらわれない王妃の人徳をあらわすエピソードとしても人気があり。
ちなみにバーイーは敬称なのであんまりバーイーという言葉自体には深い意味はありませぬ。
・王妃の服、ワンピースみたいで素敵
王妃が着ていたワンピースみたいな服、スカートがひらひらしてるタイプのやつ(下にスパッツはいてる)は、当時の男性の服装です。他の男性も同じ形の服を着ていたと思います。当時の女性の正装はサリー。もちろんワンピースみたいな女性服もあるんですけど、ターバンを巻いてワンピースみたいな服で闊歩してる王妃は、あれは男装なんです。ターバンは女性はつけないので。
・マニカルニカって名前の由来
マニ=宝石、カルニカー=イヤリング。マヌ、って呼ばれることもあったみたいです。あと、マラーターの元宰相からはチャービリーって名前をもらって可愛がられていたそうです。
・夫が亡くなったあと水を?浴びてたのは?
未亡人はアクセサリーを全て外し、頭頂の赤い印を消さなければならないので、お水でジャーってされて印を消されてたんです。あと腕輪も壊す必要が。なので腕輪はわざわざ壊れやすいガラスとかで作ってあるものも多いっす。あと化粧もしちゃダメっていう。そういうのガン無視な王妃かっこいいなー!
他にもいろいろありますが。史実のラクシュミー王妃とその周辺の時代背景については過去の記事をご参考ください。
FGOでラクシュミー・バーイーが登場して驚いた件。英国統治時代のインドとインド独立についてざっくりまとめ。
伝説の王妃について調べてみた。FGOでラクシュミー・バーイーが登場して驚いた件その2
ついでに。人物関係がよくわかんないから相関図欲しい、ってお友達が言ったので、メモしたものを貼り付けておきます。ご参考に。こんなかんじです。
はじめに出てきたおじいちゃん宰相は栄華を極めたマラーター王国の最後の宰相バージーラーオ2世。彼の代でマラーター王国は滅び、ビトゥールに小さな領地をもらってひっそり暮らしていました。でも一応、インドでかなり偉い人でもあったので、影響力はあったのでした。
などなど。
語りたいことはたくさんあるんですけど、今日はこのへんで。
ではではごきげんよう。
あなたに女神様のお恵みがありますように。
そしてどうか、王妃様の魂が安らかにあらことを。
オーム・シャンティ・シャンティ・シャンティ。
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