未来を妄想するのはヒトだけ。
心理学者のダニエル・ギルバート著「明日の幸せを科学する」の冒頭に「未来を妄想するのはヒトだけ」という一文があった。
それを可能にしたのは前頭葉の発達で、ヒト以外の動物は、この前頭葉が未発達なのだそうだ。
どうして前頭葉に、こんな役割があるのか解ったかと言うと、前頭葉に損傷を負ったヒトが、自分の未来を考えられなくなったからだそうだ。
複数の事例で、それが証明されたらしい。
しかし、賢者の「悟り」のひとつは、未来や将来に思い悩まない事だと言う。
ヒトにしか付与されていない能力である「未来を妄想する力」を封印する事が、悟りの境地というのは意味深だ。
実は、未来を「妄想」すると書いたのには訳がある。
未来を「予測」するのでは無い。
ヒトは、自分の未来(将来)を、自分に都合良く想像する傾向があるらしい。
それは、脳に備わった「穴埋め」と「書き換え」に寄るものらしい。
過去の経験や知識で、不足した部分を勝手に「穴埋め」し、未来を自分に都合良く「書き換え」てしまうらしい。
ところで、ヒトは何の為に「未来を妄想する」のか?
ここからは自分の解釈だが、生きる為の「希望」を持つ為じゃないだろうか?
現在しか意識になければ、現在の苦境を乗り越える為の材料が無い。
未来を妄想出来れば、現在の苦境を乗り越える原動力となる。
これを思いついた時は、間違いないと思ったのだが、考えてみると、未来(将来)を悲観して自殺するのも、ヒトだけだと気付いた。
自分に都合の良い未来を想像するはずなのに、真逆の未来を考えてしまい、将来を悲観するのも、またヒトの習性だ。
だからこそ、「今を生きる」という考えが、諦観のひとつになったのかも知れない。
前述の「明日の幸せを科学する」という本は、幸せとは何かについて科学的に考察した本らしいが、一番、興味を引いた「未来を妄想する」という視点と、幸せについての考察が結びついて無かった。がっかりだ。
身近にいるペットの犬や猫は、常に現在の事しか頭にない。
だから悩まない。
現状に不満があれば、それはストレスになるが、将来を悲観する事は無い。
どちらが幸せな生き方なのだろう?
悟りの境地が「今を生きる」ことであるなら、未来を妄想しない方が良いという事になる。
なぜ、ヒトだけに前頭葉が発達し、未来を妄想する力が生まれたのか?
神のみぞ知る・・・だが、もしかすると、この力が、文明を発達させた原動力なのかも知れない。
しかし、繰り返しになるが、それが幸せな人生とリンクしているのかどうかはわからない。
もしかしたら、ヒトは、幸せと引き換えに未来を妄想する力を手に入れたのかも知れない・・・。
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