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姓名判断を批判する人々(6):姓名判断を信じる研究生

このほかにも、姓名判断を積極的に否定する意図はないと思いますが、否定的状況を暗示する話が『超常現象の心理学』(菊池聡著) にでています。とても面白いので、ついでに見ておきましょう。

懐疑的な学生が多い大学のゼミに、どういうわけか姓名判断の信者が参加してきて、姓名判断が当る理由を研究するつもりが、当らないことを証明してしまった、という悲劇的な話です。

●当らないことを証明した研究生

このゼミに参加するのは、もともと懐疑的な学生が多いのだが、昨年は珍しく「私は○○式姓名判断を信じているんです」 と断言する学生がいた。

自分の性格を占うと恐ろしいほど当たるし、念のため友人に自分の性格を評定させてもぴったりなんだそうだ。そこで、このゼミで姓名判断が当たる理由を研究したいというのである。

このような興味十分の学生は大歓迎だ。自分の信念を客観的な証拠によって証明するためにはどうすればいいのか、まずこれを徹底して考えさせる。それに基づいて計画的な調査をすると、なぜかその学生の実感とはかなり食い違う結果が出てしまうのである。

補足的に、不謹慎かもしれないが、若くして不慮の事故によって亡くなった方の名前を新聞記事から○○式で姓名判断させてみた。すると犠牲者の中には凶兆の人もいたが、吉兆の人も結構いることがわかった。比較対象群としてゼミの受講学生を調べてみても、同じ程度に凶兆吉兆の名前が含まれていたのである。

さらに統計的な比較が必要なことへと話を進めたかったが、ここでその学生は研究の意欲を失ってゼミから姿を消してしまった。

『超常現象の心理学』(菊池聡著、平凡社)[*]

●プチ懐疑派はまだ諦めなくてよい

この話は、森田正馬氏の場合と違って、姓名判断を信じている学生自身が調査したところに意味があります。

しかし、当の学生が知らず知らずのうちにゼミ全体の懐疑的な雰囲気に強く影響された可能性はないでしょうか。たとえば、ものごとを少しでも疑ってかかると、今は発見されていない超心理的な作用によって、不思議と否定的なデータばかりが集ってくるとか・・・。(ちょっと苦しいか)

そうでないとしても、その「○○式姓名判断」とやらのインチキが露呈しただけのことで、姓名判断のすべてが否定されたわけではない、と言うことはできそうですね。

====================<参考文献>====================
[*] 『超常現象の心理学』(菊池聡著、平凡社)

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