名前で運勢が変わるか?(12):音がもつイメージの科学的根拠<中>
発音の [a] と [i] が英語を母語とする人に「大きい、小さい」をイメージさせるようですが、はたしてこれは普遍的な現象でしょうか。少なくとも、日本人にも通用する現象なのでしょうか。
●伝統的生活を営む人々も、[a] は大きく、[i] は小さい
あまり文明が進んでいない地域の人々に対して、動物にどんな名前を付けているか調査したところ、体型や動作の特徴によって名前の音に明白な偏りがあったそうです。[*1]
たとえば、南米ペルーに住むフアンビサ語という言語を話す人々は、大きな鳥や魚の名前に [a] や [u] の音を多く用い、小さな鳥や魚の名前には [i] の音が多いそうです。
また、東南アジアで話されるマレー語でも、大きな魚の名前には [a、o、e、u] の音が多く、小さな魚の名前には [i] の音が多いそうです。[a] には大きなイメージ、[i] には小さなイメージがあるようです。
また、リスとバクの名前について、南米の25種のインディアン言語を調べたところ、体が大きく動きが鈍いバクには [a] の音が多く、体が小さく動きが素早いリスには [i] と [t] や [k] の音が多いそうです。やはり[a] と [i] が「大きい」「小さい」のイメージと結びついています。
さらに、鳥のクイナとシギダチョウの名前を調査した研究によると、アパライ語とかボラ語など、聞いたこともない17種のマイナー言語では、[a] と [i] の効果は明瞭でないものの、クイナには [t] や [k] の音が圧倒的に多く、シギダチョウには [m] や [n] が多かったそうです。
クイナは足が長く、角張った体型で、一方のシギダチョウはぽっちゃり体型です。 [t] や [k] が尖ったイメージと、 [m] や [n] が丸みを帯びたイメージと結びついているのは、マルマとタケテの実験結果とよく似ています。
以上の調査結果から、動物の特徴とその名前との関係については、次のように総括できるようです。
●音とイメージの関係には普遍性があるらしい
また別の実験があります。子音の [b、d、g、z] [p、t、k、s] と母音の [i、e、a、o、u] を組み合わせた無意味な単語を作り、日本語、英語、中国語、韓国語のそれぞれを話す人々に、その意味を推測してもらうのです。
その結果、どの言語においても [a] は大きいイメージ、[i] は小さいイメージと結びつく傾向があったそうです。また、韓国語を除くと、 [b、d、g、z] の音は [p、t、k、s] より大きいイメージを喚起しやすいようです。
このような音がイメージを生み出す現象を音象徴というそうですが、「音象徴的イメージ喚起は、恣意的なものではなく、音声学的、ひいては身体的動機づけを持つものであると考えられる」とのことです。[*2]
●音とイメージの関係は「大きさ」だけではない
日本語の母音について、「大きい・小さい」「明るい・暗い」「広い・狭い」のイメージを比較した研究もあります。それによると、[a] は大きく広いイメージ、[i] は小さく狭いイメージで、明るさのイメージでは、[a] が一番明るく、[o] が一番暗く感じるようです。[*3]
このほか、ゲーム・キャラクターのポケモンを題材にした楽しい研究もあります。ポケモンのキャラクター名(名前の音)と進化したイメージ(より大きく、重く、強い)との関係を調べるため、架空のポケモンの進化前と進化後の絵を用意し、それぞれに相応しい名前を被験者に選んでもらうのです。
進化後のポケモンは、脚や尾も太く、目つきも鋭く、見るからに強そうです。(著作権を侵害しないよう、絵の転載はご容赦ください)
その結果、進化後のポケモンに相応しい名前として、次のことがわかったそうです。[注1]
やはり、[a] や [b、d、g、z] の音には大きいイメージがあるようです。
これらの研究から見えてくるのは、音とイメージの関係が、大きさ、強さ、明るさ、広さなど、多方面にわたっていることです。企業が新商品のネーミングにこだわるのは、「なんとなく」以上の理由があったようです。[注2]
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