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占い師が違うと、数の吉凶もこんなに違う

●数の吉凶は占い師の間で統一されていない

姓名判断の代表的な技法「数霊法」では、姓名の各文字の画数を足し合わせ、その合計数で運勢の吉凶を判断します。例えば「渡辺直美」さんなら、名の画数合計は、直(8画)+美(9画)=17となり、この17が運勢の一部を暗示していると考えます。

さて、この17という数字は吉数なのか、凶数なのか。また、どんな意味を表すのでしょうか。

困ったことに、数の吉凶や解釈は占い師の間で統一されていません。ある占い師は17を吉数としますが、別の占い師は凶数とします。また、あちら本には「意志が強い」とあるのに、こちらの本には「意志が弱い」とあります。男性には吉数だが女性には凶数だという占い師もいます。

●なぜ流派の数を調べられなかったか?

この調査を始めた初期、「姓名判断」という占い世界の全貌を必ず明らかにしてやるぞ、と意気込んでいました。そのためには、まず占い師たちの主張をグループごとに整理し、流派の数を定める必要があると考えました。

しかし、数の吉凶や意味の違いを調べるうちに、自分が到達不可能なゴールを目指していることに気づきました。というのは、どの占い師も何かしら違っていて、同じグループに入るものがほとんど無かったのです。まあ、よく考えれば、この状況は予想できたことではありますが。

姓名判断で使用する数は1から81までありますが、占い師が思い思いに数字の吉凶を定めようものなら、単純計算で2×2×・・・×2 (2が81個続く)通りの組み合わせができるのです。「2の81乗 ≒ 2.4×10の24乗」ですから、これは天文学的な数字です。

もっとも、近ごろは「紀伊国屋きのくにや 文左衛門ぶんざえもん(江戸中期の豪商)」のような長い名前はめったにないので、たいてい1から60まであれば足ります。ですが、それにしても「2の60乗 ≒ 1.1×10の18乗」なので、まだまだ十分に天文学的な数字といえます。

しかも、個々の数字は単純に吉数と凶数に二分されるわけではなく、3段階(吉-並-凶)、4段階(大吉-小吉-小凶-大凶)・・・ と、調べた範囲では最大9段階まで、評価段階もまちまちです。これが単に評価の緻密さの違いなら、まだ救いもあるのですが、決してそうではありません。

●占い師が違うと、数の吉凶もこんなに違う

数の吉凶がどのくらい違うか、下の比較表を見てください。これは6人の占い師が数の17をどう評価しているか調べたものです。これを見れば、字画数の取り方ひとつで運勢が劇的に変るように、数の評価でも性格や運勢がすっかり変ってしまうことが分るでしょう。

そのうえ、男性と女性では吉凶が違うという異説も考慮しなければならないし、吉凶のレベルも明らかでない 「破綻数」とか「危険数」といった特別扱いの数字さえ出てきます。それどころか、血液型で吉凶が異なると主張する占い師までいます。

こうした評価の違いは際限がなく、とてもいちいち数えていられません。とにかく我慢ならないほど食い違っているのです。

●ひとりの占い師でも数の吉凶は一定しない

占い師ごとに数の吉凶や意味が異なるのは、利用者にとって困った問題ですが、次の事実と比べれば、たいして驚くほどのことではありません。なんとひとりの占い師が、別の本で同一の数に異なった評価をしている例さえあるのです。

次表を見てください。これはX氏が書いた二冊の手引書を比較したものです。どういうわけか数の吉凶がこんなに違います。どちらも3段階で評価しており、表中の数字は、3=吉、2=中吉(並)、1=凶です。

出版時期はA書のほうが古く、B書と約10年の開きがありますが、これほどの相違が誤植や著者の些細な思い違いだったはずはありません。

このA書、B書というのは、実は赤ちゃんの名づけ用に書かれた本です。X氏のA書を参考にしてわが子に名前をつけた読者もいたでしょうが、後年、その人たちが同じX氏のB書を手にする機会がなかったことを祈らずにいられません。

「な、なんと、わが子の名前が凶名になっている!?」

これは悲惨というほかないでしょう。それでも、多くは凶から中吉(並)に格上げされているので、全般的には救いになると言えなくもないのですが。

●占い師も気が変わることがある

A書からB書にいたるX氏の極端な心変わりは論外としても、この例から分かるように、占い師といえども考えは変わるのです。

実際、X氏はA書で姓名判断の結果を強力なものとして断定的に書いていますが、B書ではずいぶんと融通無碍な表現に変わっています。「結果が肯定的で、幸運を約束してくれる流派を信じればよい」という意味のことを書いています。

誤解のないようにお断りしておくと、この例が多くの占い師を代表しているわけではもちろんありません。それに数の評価を変えたのも、「節操がない」というより、経験の積み重ねによる「改良」と捉えるべきなのかもしれません。

そうだとしても、占いの利用者が姓名判断の結果に翻弄されないためには、こうした事実を知っておくほうが良いに違いありません。

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