AV新法が可決後、AV女優さんの仕事がキャンセルされたり、リスケされた理由を説明するよ

AV新法が約一名の反対議員以外、全会一致で可決した。
反対したのはNHK党の浜田議員。周囲が全て規律する中、一人座ったままで反対した。すごいw

この影響なのか、現役のAV女優の方から「お仕事キャンセルになった」「撮影時期がリスケされた」という声が上がっている。

なぜこんなことが起きているのだろうか?

前提

まず、前提を確認しておこう。
AV新法は15日に成立したものの、交付手続きが終わっていないため、現時点では施行されていない。しかし、交付手続きは「成立後30日以内」となっているため、7月15日までには公布されるだろう。
つまり、そこからの契約は、AV新法に従う必要がある。が、そこまでの契約であれば、現状の慣習のままで撮影~販売できるはずだ。
「まだ施行日ではない」という点は、塩村議員の言う通りだ。

では、なぜ施行前にもかかわらず、このようなことが起きるのだろうか?

契約取引のプロセスとは

そのためには、契約プロセスを理解する必要がある。
とんでもなく簡素な説明をするので、あまり突っ込まずに概要を抑えていただけると嬉しい。

まず、AVメーカーが企画を思いつくと、プロダクションへ連絡する。候補の女優がいる場合はその予定、いない場合は希望に沿う女性の調整を依頼する。そこから、女優を交えて撮影内容、撮影日時、ギャラ、販促条件などを調整していくことになる。
この時点で撮影日時や販促条件などが仮契約書に書かれ、これを何度も三者(メーカー、プロダクション、女優)で確認しあいながら、詰めていく。そして、実際の機材や撮影場所の手配などが並行して調整されていく。
最終的には、撮影日に三者が顔を合わせて、これまで調整してきた内容と、契約書面があっていることを確認して、契約を行う。そして、そのまま撮影に入る。
ざっくり書くと、こんな感じになる。上記説明ではしょったことも補足しておく。

①撮影の打診「こんな企画なんだけどさー」

②仮契約書の提示「こんな条件で考えてるんだけど、どうかな?」

③契約内容の調整
 ・撮影内容、費用負担、現場環境などの調整「交通費は出してほしいな」
 ・支払能力の確認
 ・過去契約~撮影においての対応実績

撮影日
・契約書面の確認「これまで話をしてきたとおりだよね、OK」
・契約
・撮影

どこに問題が起きるのか?

この流れで、どこに問題が起きるのだろう?
それは①~③、つまり、撮影予定の打診から、内容の調整に入っている段階で、今回のAV新法が登場したため、「撮影条件」「販促条件」などを書き換えざるを得なくなったことが原因だろう。
特に、この二つの条文による影響が大きいのではないだろうか。
1.契約から撮影まで一カ月明けること
2.撮影内容は撮影から四カ月明けること

これにより、まず「撮影日程の調整」が入ってしまう。
現状、契約と撮影日が一緒なので、これを分離して計画を立てることになるが、そのためにはスタジオ、機材、撮影人員の予定を変更しなくてはならない。
そして今回は「一人のAV女優の作品の撮影日程変更」ではなく、「適正AV業界全ての撮影日程日の変更」だから、多くの人がこの影響を受ける。これはJRの路線一便が遅延するという話ではなく、ダイヤ改正を行う話なのだ。

また、販促活動(例えば広告、撮影現場のツイート、地域巡業など)に支障が出ることが明確だ。特に撮影時期と販売時期が4カ月以上空いてしまうため、現状は夏向けにビーチや水着といった企画が多いと思うが、新法施行後は7月半ばにクリスマス商戦に向けたサンタコス企画などに変更しなくては売れない。また、プロダクションは時節に乗った広告を打てなくなる。いきなり売れるマンガや、流行り言葉にものっていくことができない制約もある。

そして、この二点は「仮契約書のまき直し(再提示)」が必要になってしまう。撮影期日は、契約の履行日になるので契約書要件上、変更する場合は契約書自体も巻き直さなくてはならないし、販促要件も契約に伴う履行義務なので変更する場合は契約書面を巻きなおしになる。
また、メーカー、プロダクション、女優さん全てがこれによって新しい法律に沿った規制を受けることで、営業的な不利益もこうむることが予測されるので、それは売上、そしてプロダクションやAV女優が受け取るギャラにも影響するだろう。販売数に応じたインセンティブ契約条項などは、影響を直撃すると言ってもいい。

まとめると以下の四点になる

1.契約と撮影の分離により、スタジオ、機材、スタッフ、女優の日程変更
2.撮影物公開の規制により、販促条件や撮影内容の変更
3.それによる契約書のまき直し
4.また、制約の不利益を考慮した企画・ギャラの見直し

問題が発生する原因についての考察

AV新法は被害者を守るための法だが、残念ながら現在のAV事業者や、AV女優には悪影響が出ているのが現実だ。適正AV事業の中で取り組んできたメーカー、人権倫理機構、IPPA、そしてAV女優の方々の苦労を思うと残念な気持ちと同時に、怒りを感じる。

そして、その原因はひとえに「事業規制をする法律にもかかわらず、当の事業者やAV女優の声を聞かず、運営を監督している人権倫理機構の話も聞かなかったから」に他ならない。
AVメーカーや監督たちは「自分たちに声がかかったことはない」と口をそろえる。AV人権倫理機構も、既に決まったことの運用についての意見を数分も止められただけだ、という。
これでは事業的な影響など掴めるはずもない。
また、この議員たちには庶民的な契約社会の感覚がなかったのだろう。

なぜ、このような問題が起きたのか?

こちらは、宇佐美さんのツイートが非常に分かりやすい。

今回、AV新法制定推進者は、事業者やAV人権倫理機構、AV女優へのヒアリングをほとんど行っていない。そのため、事業者の契約プロセス、慣習などを理解できていないし、その影響も想定できていない。
これにより、付帯決議案の中で法の運用を依頼された行政も、「立法の検討段階で想定しない事象」に取り組まなくてはいけなくなってしまった。

既に成立しており、行政管轄になっていると強弁する方もいるが、立法の不整備を行政に押し付けるとは言語道断だと言わざるを得ない。

では、今AV女優が頼りにするべきは?

さて、ここまで書いてきて、取り残されてしまったのは仕事のキャンセルやリスケにあってしまったAV女優の方々だ。
まずはここまで説明した状況からすれば、AV新法推進者への相談、あるいは想定しない事態を押し付けられた行政で解決できるとは思えない。よって、ここで相談する先はAV人権倫理機構、または適正AVプロダクションだと思う。
そして、Twitterなどで状況をアピールし、状況を理解してくれるまともな議員や、活動する人とコンタクトを取ることだと思う。正直、ここに「ボクがまともだと思う人たち」を紹介することは可能だが、迷惑をかけてしまう可能性もあるので、ここでは控えたい。

参考に

既に、二つのnoteを公開しているので、ここまで読んでくれた人たちには、ぜひこちらも読んでみてほしい。

それから、ボクの一連のツイートと、それを含めてまとめてくれたTogetter


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