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2月はじめ、とても良い恋愛映画を見た

2月はじめ、とても良い恋愛映画を見た。2本も。

タイトル

「天空の結婚式」(原題:Puoi baciare lo sposo 新郎にキスをして) 2018 Italia
「花束みたいな恋をした」2021 日本

映画の概要(ネタバレなし)

外画の概要は、ゲイのカップルが結婚するにあたって、親へのカミングアウト(CO)から恋人の故郷である天空の村(ラピュタのモデル)で式を挙げるまでのすったもんだをコミカルに描いた良作。そう、それは時にアイドルとのデートDVDのように、時にミュージカルのように、ポップにキュートに描かれる人間模様と演出・音楽によってどの場面でも楽しさが失われない明るさがそこにはある。

邦画の概要はドラマ・カルテットの脚本と演出のお二人(坂本裕二さん、土井裕泰さん)が制作されておられる安心の布陣。描かれる有村架純と菅田将暉の恋はどこか共感できて、イラッとして、可愛らしくて。その背景の社会にあるのはSMAPの解散とかそういう、我々が生きている日本の出来事で。きっとこんな思い出すと「花束」のように美しい恋愛をする恋人たちがいたのでしょうと思わせる作品。鑑賞後もすっきりとした終わり方で。きっと有村架純は幸せである・幸せになると信じられるそんなエンディング。

どっちも観終わればハッピーなので、お近くに上映館があれば、是非観てもらえると、自粛で沈んだ気持ちも上がると思うんですよね。特に「天空の結婚式」おすすめ。

感想①天空の結婚式(ネタバレあり…かも)

なんと言っても「母は強し」という、これを置いては語れない。
イケメンで日和がちな新郎・アントニオは隠れゲイ。父親は入婿で地元の村の長として観光客増加を狙って執政している。母親・アンナは天空の村の生まれで、作品見た印象としては結構土地の顔役として力のある方なのではないかと思われる。

アントニオの両親への結婚のご挨拶は、例年通りアントニオが復活祭へ帰る際に、髭で逞しくて乙女な新郎・パオロを同伴して……が、その帰省メンバは4人
アンナの息子・アントニオ
アンナの息子の恋人・パオロ
アントニオとパオロが暮らす部屋のオーナーな金持ち女性・ベネディッタ
ひょんなことから同伴してるほぼ初対面の女装好きなおじさん・ドナート
こんな奇妙なメンツで帰ってきた息子を迎える母・アンナ。ベネディッタの姿を見て喜ぶのも束の間、息子カップルが2人で寝られるように誂えたベッドルームを勧めてもそこを使うのはアントニオとベネディッタ……ではなくベネディッタとドナート。しかもこの後アンナは夕飯の席で息子がパオロと結婚すると初めてCOと結婚報告をされてしまう。
これだけの出来事の間に
「息子がお嫁さん連れて帰ってきたわ♪」
「そうじゃないかと思ってたけどやっぱり息子はゲイなのね」
「覚悟は決めたは、息子たちのことを受け入れましょう」
という心の動きが、アンナの表情から如実に伝わる。この後のアンナの動きは勇猛果敢だ。反対して村長の力を持って横槍を入れる夫・ロベルト、村全体へのCOに対して沸きらない息子・アントニオ、CO後に母親と絶縁しているパオロのことをゴリゴリと力技で動かしていくアンナ。

息子を受け入れると決めたら、テレビ局を巻き込んで、村を巻き込んで、息子たちが幸せになれるように、みんなに祝福されるように手配を整える姿はどこの軍師かと思う苛烈さを示すアンナは大層かっこいい。

このかっこいい母・アンナが表方の回し役。そして、何故か居る虚言癖を持つ女装家・ドナートが裏回しの役。

明朗なストーリーと確かなコメディセンスのもと構築されたこの映画はずっとポップで 歌とダンスが彩りを添える。この面白な映画の中にある、アンナの強かさが一番好き。母だからとかではないと思う。そこにあるのは人を受け入れて受け入れさせるのに必要なパワーはこれではないか、という答えのひとつなのだろう。

ちなみに一番の見どころは結婚式での歌とダンスですね。ミュージカル大好き!

感想②花束みたいな恋をした(ネタバレあり…かも)

オダギリジョーかっこいいよ
有村架純は幸せになって!ってかめっちゃ可愛いなあ
菅田将暉にだんだん腹立ってきた

以上、この映画の感想……ってなわけなんですが。
一つだけどーーーーしても気になっちゃったのが、東京で就活中から同棲開始して、結局フリーターとして楽しく暮らしていた有村架純と菅田将暉のカップル。駅から30分とはいえめっちゃ良い部屋に住んでるの。多摩川沿いでベランダあって、かなり広くて、良い感じの家具揃ってて。就活中の大学生が始める二人暮らしだよ?親が出してくれるとはいえ、そんな時期に始めた二人暮らしにいくら初期投資出してくれたんだろう。良い部屋だなあ、羨ましい……。ってところ。間に合わせ家具が全然ないじゃん。いいなあ。

有村架純と菅田将暉は終電を逃してしまったという偶然の元に出会うわけだが、会話してみると趣味や考え方がめちゃくちゃ似ていて、気が合うじゃん!って付き合い始めるんですが、この時大学生。その後、就活、卒業、フリーターと人生が進んでいくに従って、有村架純は付き合いはじめの頃の感性を発展させていく形で心が育っていくけれど、菅田将暉はイラストレーターの夢を諦めて「社会人」になるという行動を取る過程で、どんどん感性が死んでいk……もとい社会に迎合していく。小説や漫画が面白くない。恋人とのデートより仕事を優先する。「じゃあ」デートに行くよ、と言ったりするなど圧倒的な言葉選びの拙さの発生。

ああ……これは我々夢を失った大人だ。妥協することを覚えた私たちだ。妥協で、惰性で、結婚して生活を続けていこうとする菅田将暉(のする役)を観て、最初は共感していたのに今こいつ大嫌い。って思わせてくれたの。プロってすごいな。

この映画は終わってしまった恋愛を振り返る話で、今の彼らは別々の道で別々の生活を送っているけれど、付き合っていた時の思い出は最後に打ち捨てられることなく、きれいなものとして穏やかにお付き合いを終えていて、素敵だね。

あとあれ、キャストが良き。めちゃ声の通る有村架純の母・戸田恵子とか、押井守役の押井守とか、Awesome City Clubのフロントマン土志田美帆・PORINさん可愛かったし。

こっちの映画は、ずっと楽しいって訳じゃないけど、社会に迎合した菅田将暉ムカつくし、でもモノローグと会話と社会の情勢との情報バランスが良い塩梅なので、見易い。そして、共感がある。
今の時代を日本で暮らしてきた人じゃないと分からないアイテムで構成されている、テレビドラマのような作品だし、演者も馴染みのある人たちなので、その延長として観られる。

恋愛って

人との関係性なんですね。当たり前だけど。

私はこれまでの恋愛の実体験サンプルが少ないので、nが不十分なんですけど、恋だの愛だのはともかくとして、これだけ周りの人と関わって生活できる心を持ってる人っていいなっていう気持ちで両作品を見ていた。
どうにも、生きていて自分も周りもNPC(ノンプレイヤーキャラクター)=プログラムされた行動しか行わないようにしか感じられないんだけど。

閑話休題

人を汎化することはないということと覚悟を決めて他人の価値観を書き換えにいくにはアンナのようなパワーがいることをポップに描く「天空の結婚式」

価値観をどのようにアップデートしていくのかは出会いと別れの結果であることを再認識させてくる「花束みたいな恋をした」

どちらも恋愛の映画ではあるけれど、その裏に当たり前にある人間関係の描き方がとても好みで、良作を見れて良かった。ので、是非ともいろんな人に見てもらいたいなと思ってる。

見て。特に天空の結婚式。ドナートかなりトリックスターくんで私大好きだから。

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