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「子どものごっこ遊びは“謎”」と言えば、、、

昨日美容院へ行った。
女性なら多分多くの人が、美容院は美容師さんとのトークも満足度の要素となっていると思う。

私の美容師さんは、なんと同郷。500kmも離れたこの地で島根県の人に会うこと自体稀なのに。島根県益田市のご出身と聞いた時はお互いテンションが上がった。
彼女は40代で、8歳と5歳の男の子のママだ。彼女の何気ない言葉に、何度も行き詰まった考えにヒントをもらった。

昨日の話題は、お子さん達二人の『戦いごっこ』の謎について。
何度言ってもベッドの上で戦いたがる、「外でやって」というと、「それは違う」と言ってくる、と。
実際のところ「戦い」ごっこって何?女にはわからない。

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私の弟も歳が離れていたので、よく一人遊びをしていた。その『戦いごっこ』も一人でやっていた。庭に出て、何だか一人で「やあ!」「トウ!」「グハァ」とかやったり、やられたりしていた。
ショッカーに取り囲まれた仮面ライダーのシチュエーションかな、あれは、、と家の中から冷めて見ている姉2人だった。

得てして、子どものごっこあそびは謎なものだ。
娘が低学年の頃、お友達数人で『バブちゃんごっこ』をした時のこと、誰もママ役をしたがらず、結局みんなで赤ちゃんになって「バブ、バブ」言ってたそうだ。不思議な集団だ。

私も、美容師さんにそんな思い出話を返した。


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私は4人きょうだい。
4人が一致団結して遊びを生み出すと、これはとんでもないことになった。
隊長は常に、3歳上の兄だった。4歳下の弟は何でも一緒にできたわけではないけれど、私は必死に付いて行った。

ある日両親が留守で、弟を置いて行けないし、家で遊ぶことになった。
始まりは、風船を膨らめせて打ち合う遊びだった。
そのうち「ネットを作ろう」となって、ロープを部屋の両端になんとかくくりつけ、兄VS妹2人で、白熱する試合となった。

すると、なぜか布団を引っ張り出して敷き詰め、さらに高く積んで、その上で容赦なくアタックだのレシーブだの、好き放題が始まった。
なるほど、子どもはふわふわが好きなのか。


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冬休みのある夜のこと。

とっても冷え込んだ。明日の朝には、きっと初雪が積もっているだろうなと思いながら布団にくるまった。
翌朝、窓の外を見ると、予想を超える積雪だった。子どもの膝ほども積もった。

「さあ、やるぞ!」お兄ちゃん隊長に付いて、私達妹2人も、上下カッパを着込んで外へ出る。巨大滑り台を作るのだ。

山の中の一軒家の我が家には、おあつらえ向きの長い急勾配の山道があった。
まず、その坂道の雪を踏み固める。3人並んで、雪の中汗をかきながら。
結構な重労働だけれど、表面がツルツルになると、楽しい時間が始まる。

上下に着込んだカッパは、雪との相性抜群だ。
直にお尻をついてすべる。すごいスピードでくだって行く。スリル満点。
ウルトラマンのように、「シュワッチュ」、腹這いになってすべる。
空を見て寝そべってすべる。
3人連なってすべる。

        古き良き昭和だった。

ひとしきり色々な滑り方を試して、飽き始めた頃。
お兄ちゃん隊長が新しい遊びを思いつく。隊長のプライドでもある。

坂道の高いところから、飛び落ちる遊びだ。下はもともと畑で、冬場は何も植えられてないし、その日は30㎝以上積雪していた。
5m程の高さから、下へ落ちる。最初に隊長が落ちる。まっさらでふわふわの雪がその身体を受け止めてくれる。私達も続けて落ちる。勇気はいるが「キャー」と叫ぶと高揚し、着地した時の顔に当たる雪の冷たさと、ふわふわの心地よさのギャップに、子ども心のワクワクがマックスになる。

怖さを忘れ、雪に人型を残すように落ちたり、どんどん飛んだ。
お昼ご飯に呼ばれるまで、へとへとになって遊んだ。


ところが、冬休みが終わり、3学期も終わり、春が来た頃だった。

あの坂の下の畑の分厚い雪も溶け始めていた。
するとそこに、猫の遺体が現れてきた。

あの、とても冷え込んだ夜、寒さと空腹で行き倒れた可哀想な野良猫の上に、真っ白な雪が降り積もって行ったのだろう。
そして、急激に冷凍されたその遺体は綺麗なままに、雪どけとともに姿を現した。

がしかし、その可哀想な猫が眠っていたその場所は、紛れもなくあのアホのきょうだいがキャーキャー言って落下した場所だった。

3人で「ごめんなさい」と手を合わせ、土に埋めてあげたことを覚えている。

***

もうすぐ夏休み。
去年の夏は我慢の夏休みだった子ども達に、いっぱい遊べる夏になるといいなと願ってやまない。





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