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武器は銃だけじゃない

幸一は戦場での経験で、ある確信を抱いていた。それは”戦いにおいては機先を制さねばならない”ということだ。劣勢の部隊が生き残る道は先制攻撃しかない。先制攻撃して主導権を握り、戦いを有利に進めていかねば、じり貧になるだけだ。
彼はワコールの創業期、「機先を制するんや!」としばしば檄を飛ばした。

P.49

よく、「あれは大変だ」とか「むずかしい」といった表現をする人がいるが、これほど物事から逃げている言葉はない。世の中のことは、自分が「できる」ことと「できない」ことの二通りしかないのだ。その判断をつねに無意識のうちに下せるようにしておくのが、「おのれを知る」なのだ。
では、なぜ、「できる」「できない」の視点からしか物事を見ずに、もっとあいまいな解釈認めないのか。人生にリハーサルはないからである。
人生はつねに本番である。一刻一刻が、死ぬほどの真剣勝負のときなのだ。特に自分は「生かされている」と思って毎日を過ごしているわけだから、天が私にいつ死を与えるかもしれない。そのときがいつ来てもいいように、一日一日を真剣でいたいと思うのは当然のことである。しかし、どんなときでも「可」「不可」を明確にいえる自分をつくっていくためには、不断の克己心、努力が必要である。

P.85

トリーカという提携会社が岡山県津山市にブラジャー工場を作る際、渡辺が最初に行った指導は、
「ご飯粒を落としても、拾って食べられるぐらいきれいに掃除してください」
というものだった。
ミリ単位の精度はクリーンルームのような清潔な工場からしか生まれない。そのことを渡辺は知っていたのだ。清潔な職場だと働く者のモラルも上がる。

P.266

結局、能交の始めた新規事業はことごとく失敗し、五年間でいずれも撤退を余儀なくされた。失敗したと思ったら早々に撤退する決断力を身につけたことが、収穫といえば収穫であった。
能交の失敗について、幸一は次のように語っている。
〈別に失敗を喜んでいるわけではないが、わかっていてもやらせ、失敗させた。失敗してこそ身にしみて勉強し、体で覚える。これこそ成長の要因になるからだ。親父の目の黒い間、息子が我慢に我慢を重ねてばかりいると、ひとたび親父が死ぬとそれまでたまっていた不満を爆発させ、大失敗する恐れがある。そういうことがあっては絶対にいけない〉

P.363

【心に響いた言葉たち】
「機先を制するんや!」
「人生はつねに本番である。」
「ご飯粒を落としても、拾って食べられるぐらいきれいに掃除してください」
「別に失敗を喜んでいるわけではないが、わかっていてもやらせ、失敗させた。」


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