ハラキリ手術の記憶

さてせっかくnoteを始めるのだし、何か長い記録記事みたいなのを書いておこうと思った。
そう、ちょうど、今日私はハラキリの予定がある。
正確に言うと、子宮筋腫の開腹手術。
十数年ほったらかしていたら、笑えるレベルのサイズになっていたのだ。

手術までに、今日ここに至るまでのことをつらつら書いておく。


1、子宮筋腫発見

20代半ばぐらいのことである。
当時弊社トップレベルのどブラック部署にいて、結果景気よく神経性で胃腸をやられた。
その際にかかっていた胃腸科でのエコー検査にて、

「蛙さん、子宮筋腫あるって言われたことないです?」

と指摘されたのが最初。

胃腸科では詳しい検査ができないので、何度かお世話になった婦人科を再訪した。

そこのオバチャン先生との出会いは大学生の時で、単純に「めんどくさい」を理由にほぼ毎日主菜豆腐で過ごしていたら、体重が20kgほど減って月経が止まったことがあった(当然)
とにかくめんどくさがりだったので、止まったラッキーと思って放っていたのだが、さすがに病院行けと医学部の友人に叱られて、渋々行ったのがその婦人科だった。
オバチャンから漢方だのなんだの出してもらい、食事もまあまあ普通に戻して、月経は再開した。めんどかったけども。

次は就職直後、今度は異様に月経が重くなり健康診断で貧血がでた時。また漢方やら何やらで治してもらった。
今思えばあの時もう筋腫があったのかもしれないが、薬をもらっただけなのでわからない。

かくしてみたびオバチャンに診てもらい、細胞診もしてもらう。

「小さいのが2つあるが今すぐ治療がいるものでもない」

今すぐ治療しなくていい、オーケー了解。

私は子宮筋腫を放置することにした。
だって、内診痛くて嫌いなんだもんよ。

定期検査も一切せずに、時が流れた。

2、筋腫育成の結果

色々…色々あって昨年の人間ドック。
人間ドックでは毎回子宮頸がん検査がある。
この検査の時に、子宮筋腫と診断されたことがある、とは言っていた。
そう言われたらこれなでの医師も「経過観察中なんだな」と、そう記録して、特に追及してこなかった。だいたい子宮頸がんの検査だし、エコー検査もやらない。そりゃそうだろう。

ところが今年、子宮頸がん検査の時の内診にやたら痛がる私に、その原因は大きい筋腫で子宮や膣の位置が圧されているせいでは、と医師は言った。

医師「病院行ってます?」
蛙「10年以上行ってません」
医師「行ってください」

ソウダネ。

思えば月経は相変わらずめちゃくちゃ重いし、よく聞く黒いレバー状のものも出てるね。
そりゃあるわ。

何となく仰向けになってヘソの下あたりを触ってみると、でかいしこりがある。
そりゃあるわ。

オバチャンのところは、正直内診が痛いのと、十数年放っておいた後ろめたさがあったので、違うところを探した。

街中で、口コミ評価も高めで、予約も不要かつ「ほとんど待たない」とのその婦人科は、おっちゃんがやっていた。
人間ドックの結果と子宮筋腫の話をして、内診とエコーで診てもらう。内診全然痛くなかった。おっちゃんすごい。

「これは大きいね、ここからここまで、これ筋腫」

何と、15cm×10cm×9cmのどでか筋腫があったのである。

「この大きさだと開腹しかないね」

ハラキリが確定した瞬間だった。

おっちゃんは秒で大きい病院に予約をとり、紹介状を書いていった。
紹介状に「超大子宮筋腫」と書かれていて、強そうだなとかアホなことを考えた。

3、放置の代償(金銭的に)

紹介先の総合病院ではおねえさんが担当だった。
エコーで診たおねえさんも、これは大きいねと言う。

蛙「脂肪だと思ってました」
おねえさん「そんなわけないでしょ、痩せてるのに」

ありがとう、ちょっと嬉しかった。

MRIの予約をとるのと共に、手術までに飲み続ける薬があるという。ホルモン剤で、月経を止め、うまくいけば筋腫が多少小さくなるらしい。

が、これが高い。

レルミナという薬なのだが、新しい薬らしく、薬価がべらぼうに高い。当然ジェネリックもない。
1ヶ月ぶんで9千円近くふっとぶ。
手術まで3ヶ月ぶん飲むことになったので、2万5千円強ふっとんだ。

さらに、手術までのMRIが1万円弱に各所への紹介状に術前検査に手術前の歯科検診、とにかく金がかかった。

筋腫よ…
お前を独り立ち(切除)させるのに、こんなに金がかかるのか…

子どもなら将来が楽しみだが、こいつは月経のしんどさに余計なバフをかけやがってきた、単なる腫瘍である。
全然かわいくない。


4、ハラキリ迫る

私は子どもを産む予定がないので子宮ごととっても良かったんだが、家族は反対したので残すことになった。

良性の腫瘍だし、ハラキリったって麻酔で寝てるし、別に怖くはない。

兄「俺は腹切るとかめちゃくちゃ怖いけど?」
蛙「私は歯科検診で虫歯あるって言われて、退院してからのそっちの治療のが怖いわ」

こういうのは男性の方が怖がるようだ。
まあ女性は月経の時点で流血してるし出産でも血出るし腹切ることもあるし、耐性があるのかもしれない。

かくしてハラキリ前日、私は病院に放り込まれた。
執刀医はメガネのにいちゃん。

メガネ「一番大きいのとるのは簡単だと思うんですが、子宮に繋がる血管に接してるかもしれないのが3つあって、これは開けてみないと切れるかどうかわからないですね」

子宮ごととるなら血管も切るので別に気にせんでいいそうな。だったら子宮ごととってもいいんじゃね?と思ったけども、子宮摘出は家族が頑なに嫌がっていたので黙っておいた。

午前中に手続きと説明が終わる。
せっかくならおいしいもん食べて入院したい。

蛙「今日の昼と夜は外で食べてもいいんですか?」
看護師「もう入院となってますので、きょうの昼から病院食です」

マジか。

かつて膝の手術後をした友人から「味のないプリンを食った」と言い捨てられた病院食を、もう食べなきゃいかんのか。
(※全ての病院食がアレなわけではない。別の友人は出産時に「ご飯がおいしい」という理由で病院を指定していた。)

そして初の病院メシ。

蛙「ふりかけか海苔をくれ」

家族に悲しみのLINEを送る。


退院したらむさしの若鶏むすびを食べると誓った、ハラキリ前日であった。

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