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ヒトに関する損益計算書(PL)・貸借対照表(BL)を作ってデータドリブンで人的資本を可視化するメリット・デメリット

こんにちは、「データ分析やりたくて人事部に入ったわけじゃないのに」です。
企業は必ず損益計算書(PL)や貸借対照表(BL)を作成し、経営状態を可視化して問題を特定し、対策を打っています。
しかし、企業経営において重要なのはお金だけではありません。
人に対しても同様に、人的資本経営を取り入れることで、その価値を最大限に引き出すことができます。
今回は、ヒトに関するデータを集めてデータドリブンで人的資本を可視化するメリットとデメリットについて考察してみたいと思います。

1. 人的資本の損益計算書(PL)・貸借対照表(BL)とは?

(1) 人的資本のPL(損益計算書)

人的資本のPLは、年間の成長を測るために従業員の価値や貢献度を評価するための指標を集めたものです。
例えば、従業員の生産性、エンゲージメント、スキルアップの進捗状況などが含まれます。

(2) 人的資本のBL(貸借対照表)

人的資本のBLは、現在の断面で企業が持つ人的資源の価値を測定するための指標を集めたものです。
従業員のスキルセット、経験、教育訓練の投資額などが含まれます。

2. データドリブンで人的資本を可視化するメリット

(1) 生産性の向上

従業員のパフォーマンスデータを収集し、分析することで、生産性を向上させるための具体的な施策を立てることができます。
例えば、どの部門が最も効率的に働いているのかを把握し、その成功要因を他の部門にも展開することができます。
売上ノルマは達成しているけど生産性は低い、もしくは利益率が低い、というような部門をいつでも瞬時に特定できることは、経営には求められます。

(2) スキルギャップの特定

従業員のスキルデータを分析することで、どのスキルが不足しているかを特定し、必要なトレーニングや採用計画を立てることができます。
これまでも新卒で200人採用していたので今年も同じくらい採用すればいいですよね?というような発言も、聞かなくて済むようになるはずです。
To-Be、As-Is、Gapをデータドリブンで特定すれば、採用すべき人材・人数も定量的に算出することができるようになります。
これにより、組織全体のスキルレベルを向上させることができます。

(3) 人材配置の最適化

従業員の強みや弱みを把握することで、最適な人材配置を行うことができます。
これにより、従業員のモチベーションとパフォーマンスが向上し、企業全体の効率が改善します。
社内の従業員だけではなく、外部のリソースも含めて検討することで、余計な外注費も抑えることができます。
これまでの付き合いでコンサルA社から50名に常駐してもらっています、というような発言をなくすことにもなります。

(4) 離職リスクの予測と対策

従業員のデータを分析することで、離職リスクを予測し、早期に対策を講じることができます。
例えば、離職リスクの高い従業員に対して、キャリア相談やトレーニング機会を提供することで、離職を防ぐことができます。
予期しない離職が起こるとその穴を埋めるための採用コストが掛かります。
転職エージェントには年収の約1/3を払わないといけないため、合計するとかなりの損失になります。

(5) 従業員エンゲージメントの向上

エンゲージメントデータを収集・分析することで、従業員のモチベーションを向上させるための施策を立てることができます。
例えば、働きやすい環境の整備や、フィードバックの仕組みを強化することが考えられます。
厚生労働省から指摘が入ったとしても、日ごろからこのような対策をしていれば比較的安心です。

(6) 人材育成の効率化

従業員の成長データを分析することで、どのトレーニングが最も効果的かを特定し、効率的な人材育成プログラムを設計することができます。
これにより、従業員のスキルアップが加速します。
DX人材を育てないといけないのでとりあえずUdemyを契約しました、というような判断を撲滅させることにもつながります。

(7) 公平な評価制度の構築

データに基づいた公平な評価制度を構築することで、従業員の満足度とモチベーションが向上します。
これにより、組織全体のパフォーマンスが改善します。
転職市場が活発化している今、公平な評価制度がないと優秀な人材がどんどん外に逃げていきます。

(8) ダイバーシティの推進

従業員データを分析することで、組織内のダイバーシティを推進するための施策を立てることができます。
例えば、ジェンダーバランスや多様なバックグラウンドを持つ従業員の割合を把握し、改善することができます。
日本人だけの企業、管理職が男性だけの企業はまだまだ多いです。
世界の企業と協力し、戦っていくためには、外国籍や女性管理職も海外企業と同様に増やしていく必要があります。

(9) コスト削減

従業員のデータを活用することで、効率的な人材管理が可能となり、コスト削減につながります。
例えば、過剰な人員配置や無駄なトレーニング費用を削減することができます。

(10) 企業価値の向上

人的資本を可視化し、戦略的に管理することで、企業の競争力が向上し、結果的に企業価値が向上します。
投資家に対しても、人的資本の重要性を示すことで、信頼を得ることができます。
そのうち、お金に関するPL・BLに加えて、ヒトに関するPL・BLを求める投資家も出てくるかと思います。
それらをクイックに出力できるツールがあれば、様々な企業が導入していくと思います。

3. データドリブンで人的資本を可視化するデメリット

(1) プライバシーとデータセキュリティのリスク

従業員のデータを大量に収集することで、プライバシーやデータセキュリティのリスクが高まります。
これに対しては、適切なセキュリティ対策とプライバシーポリシーの徹底が必要です。

(2) データの誤用の可能性

データ分析が適切に行われない場合、誤った結論を導き出し、不適切な施策を実施するリスクがあります。
データ分析の専門知識と倫理的な判断が求められます。

終わりに

ヒトの損益計算書(PL)や貸借対照表(BL)を作成し、データドリブンで人的資本を可視化することには多くのメリットがあります。
生産性の向上、スキルギャップの特定、人材配置の最適化など、組織全体のパフォーマンスを向上させるための強力なツールとなります。
しかし、プライバシーやデータセキュリティのリスク、データの誤用の可能性にも注意が必要です。
これらを踏まえ、適切なデータ管理と分析を行い、人的資本の価値を最大限に引き出す取り組みを進めていくことが重要だと思います。

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