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子供の無呼吸症候群の原因となるアデノイドと手術適応について

要旨

  • アデノイド=咽頭扁桃はのどの一番テッペンのところで、鼻腔の後端との境にある鼻咽腔(上咽頭)という空間の後壁に存在する組織のこと。

  • 鼻呼吸で外から入ってくる空気に含まれるウイルスや細菌をトラップして、免疫反応を起こす場所となる。

  • これが過剰に大きくなることで、小児において難治性の鼻閉や副鼻腔炎、中耳炎、いびき症、睡眠時無呼吸症候群などを引き起こすリスクがある。


以下に専門的事項を記載

アデノイドの機能

  • アデノイドは粘膜関連リンパ装置として働く末梢リンパ組織

  • 後鼻腔や口腔から侵入した外来抗原に暴露されることで免疫機構が発達する。その結果、扁桃リンパ組織の反応性過形成が生じ、扁桃組織の肥大が起こる。

  • 幼少期の免疫機能亢進に伴う扁桃肥大は4-5歳に最も発達

  • 免疫学的活性が低下し始める10歳頃から退縮が始まり、思春期以降はほぼ消失する。

  • 生理的に肥大したアデノイドが、感染による慢性炎症で病的に肥大した病態をアデノイド増殖症と呼ぶ。

  • 喘息やアレルギー性鼻炎は、アデノイド、口蓋扁桃摘出術後の再発のリスク因子と報告されており*、アトピー素因もアデノイドの慢性炎症の起点となると考えられる。*Zirong Huo et al. Scientific Reports 2017

アデノイド切除術の手術適応

無症状であれば治療は不要、以下の臨床症状を伴う場合は手術を検討する。

1. 呼吸障害(後鼻腔閉鎖による鼻閉、口呼吸)

2. 滲出性中耳炎の遷延化

3. 遷延する鼻副鼻腔炎などの臨床症状を認め、それが保存的加療で改善しない


詳細事項

1. 呼吸障害について
PSGにおいて、AHI5以上もしくは、AHIが1~5であっても、睡眠中に、陥没呼吸、途中覚醒、発汗、睡眠中の頸部伸展、日中傾眠、多動、身長・体重増加不良、夜驚症、夜尿症などの臨床症状を伴う場合は、睡眠呼吸障害を疑い手術適応とする。

2. 滲出性中耳炎の遷延化について
小児OMEでは1回の鼓膜換気チューブでも50~80%が改善するため、初回手術ではアデノイド手術の適応にはならない。しかし、3ヶ月以上遷延している両側OMEで40dB以上の難聴または鼓膜の高度の内陥・癒着や耳小骨破壊を認めるもののうち、アデノイド増殖に起因する上気道病変を伴う場合は鼓膜換気チューブ留置術と同時にアデノイド切除術を行なっても良い。*
*小児滲出性中耳炎診療ガイドライン2015年版より

3. 遷延する副鼻腔炎について
慢性鼻副鼻腔炎においてアデノイド切除術の有効性は50~70%であったと報告あり。アデノイドによる後鼻孔狭窄により、鼻副鼻腔の細菌叢はアデノイドに感染しやすい

アデノイドの評価 どの程度肥大している?

検査
・上咽頭側面単純X線所見
・鼻咽腔ファイバースコープ検査

で評価することができる。

・上咽頭側面単純X線

A/N(adenoidal-nasopharyngeal ratio)比で評価する
A/N比の平均は0.636*
平均値より2SD以上の肥大症例の平均値は0.864* *FujiokaらAJR 1979

A:後頭蓋底からアデノイドの頂点までの距離 N:後頭蓋底から硬口蓋上端の距離

・鼻咽腔ファイバースコープ検査

アデノイドと周辺臓器の接触の程度でアデノイドの肥大をGrade分類*
1. アデノイドと周辺臓器の接触なし
2. アデノイドは耳管隆起に接触
3. アデノイドは耳管隆起と鋤骨に接触
4. アデノイドは耳管隆起と鋤骨と軟口蓋に接触
*Parikh et al. Int J Pedi- atr Otorhinolaryngol Int J Pedi- atr Otorhinolaryngol 2006

そのほかまとめ
* 小児のOSAの原因の90%は扁桃肥大・アデノイド増殖症
* 扁桃摘出・アデノイド切除による睡眠呼吸障害の改善が75~100%と良好
* 滲出性中耳炎の症例では、上咽頭の粘膜バリア破綻や細菌バイオフィルム形成、上咽頭の正常細菌叢の変化などが起こっているいることが確認されている。

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