見出し画像

令和六年猛勇狼士考 その1 第3節までの振り返り

 ONE LUPUSのみなさま、あけましておめでとうございます。昨年末はブレイブルーパスが幸先よく3連勝し、府中ダービーにも快勝という素晴らしい年越しになりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
 今回の記事ではブレイブルーパスのここまでの戦いを振り返って今年の展望や私個人が試合を見て考えたことについて記していきたいと思います。


2023-24シーズン第3節までの戦績

 ブレイブルーパスは2024年1月4日現在、リーグ戦16試合中第3節までを消化し、勝ち点14の2位と好スタートを切っています。
 今季の目標は当然優勝・日本一ですが、その前提となる決勝プレーオフの進出条件となる4位以上には全節消化時点で勝ち点53,54以上が必要(過去実績基準)になります。これは1試合平均で計算すると3.3-3.4点となり第3節消化時点では勝ち点10点が目安になります。現時点でさらに4点を加えた勝ち点14ですので、好スタートが切れたと言って良いと思います。
 ブレイブルーパスが所属するカンファレンスAは昨季王者スピアーズを筆頭にサンゴリアス、ブルーレヴズ、スティーラーズ、ヒートと難敵が揃っていて1戦1戦勝敗の行方が予想できない実力伯仲のグループになっています。その中でブルーレヴズ、サンゴリアス、スティーラーズに3連勝できたのはチーム一丸となったハードワークの賜物だと思います。

第1節 静岡ブルーレヴズ戦(2023/12/9)@味の素スタジアム

試合結果

 まず開幕戦静岡ブルーレヴズ戦について振り返ります。結果はブレイブルーパスが43-30で勝利しました。またトライ数で3トライ差以上をつけたのでBPも獲得出来ました。

 この試合ではプレシーズンに積み重ねてきたことを存分に発揮してくれたと思います。セットピースではブルーレヴズの内側に押し込むスクラムに苦戦しましたが、ブレイクダウンを中心にフィールドプレーや連携、個人技ではブレイブルーパスが上回ったと思います。その結果、タフな相手に勝利することができました。

(参考:プレシーズンマッチの感想については以下にまとめているのでよかったら併せてお読みください)

 シーズン開幕戦での勝利はリーグワンになってからは初めてですし、また勝点5を獲得出来たことはとても満足が行く結果だったと思います。
 一方でスクラムの修正が必要(課題①)になったことと、この試合ピッチをワイドに広く使うアタックを展開する一方でラックがエッジ側に孤立し、やや球出しが遅れること(課題②)があったこと、また相手のプレッシャーを受けるとDFラインの選手間のスペーシングがチグハグになること(課題③)など、いくつか課題が残りました。

第2節 東京サンゴリアス戦(2023/12/17)@味の素スタジアム

第1節東京サンゴリアスのレビュー

 第2節の内容に触れる前に、まず第1節東京サンゴリアスの戦い方の特徴を振り返ります。サンゴリアスは第1節で昨季王者クボタスピアーズ相手に52-26と完勝しましたが、この試合ではまずフィジカルで上回ることを徹底して勝利したように思いました。
 サンゴリアスは学生時代から各世代の大舞台で活躍したポテンシャルの高い日本人選手が多数在籍することに加えてサム・ケイン選手やチェスリン・コルビ選手といった世界的なスター選手が揃っていますが、第1節のサンゴリアスは原点に立ち返ったかのようなシンプルに接点で勝つラグビーを展開してスピアーズを圧倒しました。いくつかの場面ではスピアーズが接点で上回りましたが、終始サンゴリアスペースで試合が進みました。
 この試合を見ていて、日程的にブレイブルーパスの方が1日余裕があるものの率直に言って厳しい戦いになると感じました。

第2節ブレイブルーパス東京の戦い方

 第2節ブレイブルーパスのスターティングメンバーは第1節から3PRだけ変更となり、スクラムが強力な眞壁選手が先発しました。これは前述の課題①に対しスクラムの強度を上げるための起用であったと思います。
 また第1節ではプレシーズンマッチから準備してきたサインプレーや連携を駆使して勝利しましたが、第2節ではそれらを少し控え目にして接点で勝ち切ることを目指したラグビーを展開したように思います。サンゴリアスもスピアーズ相手に接点で優位に立って勝利したので、両者ともに真っ向からぶつかりあう、接点バチバチの府中ダービーとなりました。
 また接点でサンゴリアスを上回るために、ブレイブルーパスはピッチをワイドに使う戦法を控えてフィールド中央に人数を集めて制圧する戦い方を選択したように感じました。これによりエッジでラックが孤立するリスク(課題②)を低減させ、選手間の距離をタイトにすることで密度をあげる事に成功(課題③もクリア)したと思います。
 この戦い方は開幕戦の課題は解決する一方でエッジ側に広めのスペースが残るのですが、DFラインが相手に詰めるようにラッシュアップ気味に上がることでサンゴリアスのボールを展開するスピードや判断を遅らせて、エッジをうまく使わせずに対処できていたと思います。後半途中から投入されたロブ・トンプソン選手は特に良いプレッシャーを与えていて相手のアタックを制限・牽制していたと思います。

試合結果

 ホームサンゴリアスとブレイブルーパスがぶつかった府中ダービー第1戦は接点で上回ったブレイブルーパスが26-19で勝利し、第1節に続きBPを含む勝ち点5を獲得しました。

 個人的にターニングポイントになったと思った場面は、サンゴリアスの先制PGです。ブレイブルーパスの固いDFを突破できないサンゴリアスは獲得したペナルティからトライを狙うのではなく、まずPGで3点を積みあげていく判断をしました。この判断を引き出したことは、すなわちブレイブルーパスが接点で上回り容易にトライが取れないと判断したことの証左だと思いました。2022年第15節の府中ダービーも同じような展開でしたので、この試合優位に立てたと感じた瞬間でした。
 その他、両LOのワーナー・ディアンズ選手、ジェイコブ・ピアス選手を筆頭に80分通じて各選手のハードワークが光りました。モウンガ選手の素晴らしいキックパスやジョネ・ナイカブラ選手の見事なトライなど個人スキルの高さもあり3トライ差をつけることが出来ました。
 サンゴリアスも7点差以内に詰めよって勝点1をもぎ取る流石の強さを見せましたし、観客動員数3万人超の府中ダービーに相応しい好ゲームだったと思います。

第3節 神戸スティーラーズ戦(2023/12/24)@ノエビアスタジアム神戸

第2節までの神戸スティーラーズのレビュー

 神戸スティーラーズは第1節でヒートに快勝し、第2節ではブルーレヴズとの接戦を制して2連勝と好調なスタートを切っています。新たにHCに就任したデイブ・レニーHCが良いチームを作っていると思います。レニーHCがオーストラリア代表HCの時には、フィジカルの強い選手達が接点で強力なコリジョンを起こしつつ細かいパスを繋いで相手DFをこじ開けるラグビーを構築していましたが、スティーラーズでも同様にフィジカルの強い選手やスピードのある選手達のコンビネーションと長短のパス連携を軸に相手を崩すラグビーを展開していると思います。All Blacksのブロディ・レタリック選手やアーディ・サヴェア選手といった強力なFWが加入したことがレニーHCのラグビーをより強力なものにしている気がします。SOブリン・ガットランド選手の正確なキックやゲームコントロール、CTBナニ・ラウマペ選手もボールキャリーが力強く、ブレイブルーパスとしても容易に倒せる相手ではない、というのが試合前の印象でした。

第3節ブレイブルーパス東京の戦い方

 そんなスティーラーズに対して、ブレイブルーパスはスターティングメンバーの7番FLに伊藤選手を起用、そして第2節で攻守に安定をもたらしたロブ・トンプソンを13番CTBで先発させる布陣を組みました。
 戦い方は第2節から大きく変えず、接点最優先のラグビーを選択したと思います。サインプレーやエッジを広く使う戦術も第2節同様に控えめでしたし、府中ダービーで良かったことをそのまま継続しているように見受けられたので、敵地ではありますが安心して試合を見ることができました。

試合結果

 試合はビジターのブレイブルーパスが46-39で勝利しました。最終盤は引き分けに持ち込みたいスティーラーズの猛攻とノエスタのスティーラーズファンの大声援が凄まじかったですが、最後の最後まで接点で負けなかったのでターンオーバーしたボールを蹴り出してフルタイムとなりました。

 この試合、スティーラーズはサンゴリアスを上回ったブレイブルーパスのDFに対して、キックオフから様々な戦術を用いてこれを崩しにかかってきました。これらが奏功したこともあり、スティーラーズも最終的に勝ち点を得ることができたと思います。
 またキックオフから仕掛けたことから察するに、先に得点してブレイブルーパスに点差をつけながら試合を支配したいという狙いがあったと思いますが、この試合、接点で上回り試合を支配したのはブレイブルーパス側だったと思います。選手達は3連戦で疲労が蓄積して思ったように動けなかったり、予期せぬ負傷で本来想定していなかった布陣を強いられていた部分はありますが、それでも80分通じて押し負けなかったことから今季のチームの強さ、好調さを感じました。


考察①今季好調の要因について

 ここからはプレシーズンマッチや第3節までの試合を見ていて思う個人的な考察を書いていきたいと思います。まずはここまで3連勝することができた好調の要因について考えてみます。

好調の要因:インテンシティが高い

 私はラグビー同様にサッカーも好きで昔からよく見るのですが、サッカーではチームや選手のプレーを評価する際に、しばしばインテンシティ(Intensity 強度、強烈さなどの意)という言葉が用いられます。

 この言葉を借りて表現すると、今季のブレイブルーパスはチームとしても個人としてもインテンシティが非常に高いと思います。
 公開されているスタッツには出てきづらい数値ですが、例えば接点で押し負けない(=相手に容易にゲインさせない)ことであったり、自ボールのラックが形成されSHが球出しするまでしっかり維持できていたり(=相手にターンオーバーされない)、大きな綻びがほとんど生じません。
 インテンシティが高いサッカーのチームを見ている時のような安心感というか、ブレイブルーパスの選手達がフィールドを支配・制圧しているような感覚を持つ時間が長く感じます。
 サンゴリアス戦やスティーラーズ戦はスコア上は7点差での決着となりましたが、点差以上の差があるように感じながら試合を観戦していました。(とはいえ今後は油断大敵ですが・・・)。もしチームや選手達が同じように感じていたら、きっとすごく自信になったのではないかと思います。

 また第1節は選手間の距離が間延びしたり、スペーシングがチグハグな部分はありましたが、第2節・第3節はこれを修正できていたと思います。この修正の速さや的確さも今季の強みだと思います。それだけの選手層を構築できているとも言えます。
 これからも対戦相手はブレイブルーパスを分析・準備して試合に臨んでくるので多少失点してしまうことはあると思いますが、同じやられ方を繰り返さない強さがあるように思います。

キックによるスタッツの変化

 また次に、少し視点を変えてチームスタッツから今季の戦い方を振り返ってみます。昨季のチームスタッツではブレイブルーパスはボールキャリー、オフロード、ゲインメーターで1位を獲得しています。

 これに対し、今季はチームスタッツが大きく目立ってはいません。(第3節終了時点でボールキャリー7位、オフロード5位、ゲインメーター5位)

1試合平均に直して比較すると以下に内容になります
・ボールキャリー回数:昨季122.4回 今季129.3回(↑)
・オフロードパス回数:昨季14.6回   今季10.3回(↓)
・ゲインメーター  :昨季868.9m 今季547.0m(↓)
 ※数値を昨季16試合、今季3試合で平均化しています

 さてこの数値の変化ですが、注目すべき変化はゲインメーターの減少だと思います。これは今季からキックを活かした戦い方へシフトしたことでキックメーターが伸びていて、ゲインメーターが減少したものと考えられます。一方でボールキャリー回数は増加しているので、強いボールキャリーは健在というか昨季以上の出来です。これらのデータから考えると、ボールキャリーのワークレートを上げつつ効果的にキックで陣地獲得が出来ているということだと思いました。
 元々シーズン開始前からトッドHCはキックの使い方を改善すると宣言してプレシーズンに臨んでいましたので、スタッツにもその結果が現れているということだと思います。キッカーはモウンガ選手を筆頭に、BKにはキックを蹴ることが出来る選手が揃っているのでここまで安定した戦いが出来ていると思います。

 また、これもサッカーの言葉ですが「ボールは疲労しない」という考え方があります。ここまでのチームスタッツの変化を単純に考えるとキックメーターを稼げているのであれば、その分ボールキャリーしてゲインする負担が減るので、フィールドプレーのために力を蓄えることができているのかも知れません。疲れないボールに仕事をしてもらうことでインテンシティ高く戦い続けられているのではないでしょうか。(この事については今後の試合を見ながらまた考えてみたいと思います)

考察②第4節以降の展望

考察①から考える第4節スピアーズ戦展望

 考察①を踏まえて第4節について予想してみます。第4節はホームゲームとはいえ、昨季王者スピアーズを相手にした試合なのでタフな試合が予想されます。スピアーズは現時点ではあまり調子が上がっていませんが、個々の接点突破力はリーグワン屈指の実力があると思いますし、数人のフィジカルが強い選手達に加えてハードワークできる末永選手や立川選手といった体を張れる選手が脇を固めているのでチーム全体のワークレートがとても高いので要注意の相手となります。
 ブレイブルーパスの戦い方としては、第2,3節同様に接点優先で抑えるべきところをしっかり抑える戦い方が必要になると考えています。ここ最近の公式戦ではスピアーズに押し負けて敗戦していますが、2023年11月25日のPSM第5節のように接点で上回ればブレイブルーパス有利だと考えています。第3節までに積み重ねてきたことをしっかり出しきればいい試合になり勝利することが出来ると思います。
 またキッキングゲームになった時はウェールズ代表のリアム・ウィリアムズ選手と両ウイングに警戒が必要だと思います。ウィリアムズ選手はキックもランもボールキャッチもワールドクラスの実力者なので彼の動きはなるべく制限したいところです。

4位以内を目指すために

 一方でスピアーズ戦の後もシーズンは続きます。リーグ戦は最終的には4位以内に入れれば目標を達せられるため、1試合1試合の勝敗よりシーズン終了時に目標順位を勝ち取ることが重要です。そのため勝利が求められる試合はベストメンバーが良いコンディションで臨むことが求められます。具体的には上位争いの相手となるスピアーズ、ワイルドナイツ、イーグルス、サンゴリアス、ヴェルブリッツ、ブルーレヴズ、スティーラーズとの対戦は勝ち点を落としたくない(同時に相手に与えたくもない)戦いになると考えています。
 一方で、ここまで3試合を消化しましたが、第3節スティーラーズ戦ではサンゴリアス戦の疲労が抜け切らず、パフォーマンスが少し低下していた選手がいました。また負傷している選手も数人いますし、メンバーの入替はどうしても避けられなくなっていきます。
 今後はこれまで以上にタイトなスケジュールで試合を行わねばならない時期がありますし、遅くても2月の交流戦(2/24以降)5連戦からは、布陣を入れ替えながら戦っていくことになるが予想されます。

結びに

 以上、つらつらと振り返りと個人的な考えを書き連ねてきましたが、まずはここまでの3連勝という結果には大変満足しています。でも油断は大敵で、まだ課題はあるし、これから課題が出てくるのが長いシーズンの常だと思います。
 それでも1人のONE LUPUSとしてチームが目標とする優勝を後押ししていきたいと思うので、微力ながら今年もなるべくポジティブな発信を心がけてチームを応援していきたいと思います。
 ちなみに、私は他チームの良いところもドンドン褒めていきたいと考えていまして、兼任サポーターの方が読んでも不快にならないように努めていきたいと思います。それでも表現が至らないこともあると思いますし、お気づきのことがあればコメントなどいただければ幸いです。

 今回は真面目に振り返ったのでタイトルを猛勇狼士考、と名付けてみました。毎試合振り返りをすると大変なのですが、交流戦終了時やレギュラーシーズン終了時(プレーオフ前)にまた折を見て記事にまとめていきたいと思います。

あらためまして本年も本noteをどうぞよろしくお願いいたします。
令和六年一月 miz_sue

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?