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「悲しくなるのでやめましょう。」by Aさん

これは自論である。

世の中には、相手の心を探って会話をする人がいる。いわゆる、気を使うタイプの人である。

相手の態度を見て、「こう思っているんだろうな」と推測し、その後の接し方を決める。

これは素晴らしい能力だと思うし、周りからは「素敵な人だな」という評価を得る場合もある。

しかし、私はこう思う。
「勿体ないな。」と。

気を使うタイプの人は、相手の態度を見て察する力に長けているがために、言葉を交わさずに自己完結しがちである。
言葉を交わさないと分からないことなんて沢山あるのに、だ。

この力が長けている人は、自分が出した答えが顕著に態度に現れる。
それは、出した答えが事実と違えば、相手にとても失礼な、或いは悲しませる行動になってしまうことを、本人たちは知らない。
また、その度が過ぎると、相手からどう見られるだろうか。
言葉を選ばなければ、偽善者、傲慢、自分勝手。そう思われることだってあるかもしれない。

たとえば、こういう場面を想像してみてほしい。

Aさんは、集団の中では周りに気を使ってニコニコしている人だが、気のおける相手や好いてくれる人の前だと安心して、笑顔を作らないことが多い。
Bさんは、Aさんの集団での対応に惹かれ、Aさんに好意を寄せている。

この時、Bさんが、最初に述べた「気を使うタイプの人」であるとしよう。

AさんがBさんの好意に気づき、安心してあまり笑顔を作らなかった場合、その素っ気ないともいえる態度を見たBさんは、何て思うだろうか。

きっと、「好かれてないな。」と思うに違いない。他の人には笑顔で接しているのに、と。
この考えに至ったBさんはAさんに何も告げずに距離を置くだろう。

相手の態度から推測したことがあたかも正しい答えであるかのように思い込み、本当の答えを確かめることなく身を引いてしまう。こうした態度は、「勿体ない」という出来事へと繋がるのである。

もしかしたら、AさんはBさんと居る事に安らぎを感じていたかもしれない。急に距離を取られたAさんは、悲しい思いをしたかもしれない。

もしBさんが言葉を投げかけ、少しでも話し合っていれば、この2人が付き合うことだってあったかもしれない。

次に、こういう場面はどうだろうか。

Cさんは、Dさんに少し頑固だと思われていて、茶道部所属の和菓子が好きな人。
Dさんは、少し弱気で、「気を使うタイプの人」。

この時、CさんとDさんが2人で一緒にカフェに向かったとしよう。

元々和菓子を取り扱っているカフェに行くはずだったが、そのお店の真隣には美味しそうなパンケーキのお店がある。
Cさんはパンケーキも好きだし、Dさんがパンケーキの看板をじっと見ていたので、「こっちにする?」とパンケーキのお店を指さした。

さて、この時Dさんはどう思うだろうか。
''Cさんは頑固''という印象がある事に加え、Dさんは気が弱く、相手の気持ちを探って動くタイプ。さらにCさんが和菓子が好きなのは周知の事実である。

きっとDさんはこう言うだろう。

「いいよ、Cさん和菓子好きでしょ?
変えたら絶対後から文句言うじゃん。(小声)」

流石に「変えたら絶対〜」は言わないだろ、と思うかもしれないが、思い込みが激しい人や、気が弱すぎて誰に対しても提案する時に恐怖を感じてしまうタイプの人はこういう事を言う場合だってある。

つまり、Dさんの勝手な決めつけによりCさんは傷つくのだ。

まぁ、2つ目は「気を使うタイプの人」とは少し違うかもしれないが、つまり2つの事象に共通して言えることはこういう事だ。

「相手と言葉を交わさずに、自分が態度から推察したことが全てだと勘違いして自己完結する。」


別に、気を使える事は素晴らしいことだと思うし、批判するつもりは無い。
だが、1人の人間が想像してる以上のことはいくらでも起こり得るし、想定外の事を考えている人間なんかいくらでもいるのだから、自分の考えだけで行動するのはやめた方がいい。

自分が考えていることが全てじゃないと分かっていても、無意識に人を自分が考える枠の中に収めようとする人がいるが、それは相手にすごく失礼なことである。

''気を使う。''その行動は一方で、相手の気分を害することもあるし、自分の交友関係を狭める原因にもなり得る。

こうしない為には、自分で出した答えを、相手と言葉を交わすことで擦り合わせること。自分の中で完結させてしまった事に、常に疑問を持つこと。''それが全てだ''と思い込まないこと。
これが大事なのだと、私は思う。


追伸:
これまで長々と「言葉を交わすべき」というようなことを話してきたが、「別にそんなの必要ない」という人はそれでいいと思う。

人間の行動に関して、「何が正しい」とか、「こうするべきだ」とかは存在しないと思う。

人の数だけ接し方がある訳で、今まで気を使って生きてきた人間が、「これで通じてきた」、「こうすることで良い人間関係が築けている人もいる」、というならそれを続ければいい。

ただ、生きていれば、こういったすれ違いや、勘違いの連鎖だって起こり得るんだ、ということを知って欲しかった。

最初に話したAさんとBさんの例だって、Bさんが勘違いでAさんのために距離を取ったのだとして、Aさんがその行動を拒絶だと受け取ったのだとしたら。それが、Bさんが初めてAさんをご飯に誘った矢先の事だとしたら。
AさんがBさんのことを、「誘ってきたくせに(恋愛対象として)違うと思ったらすぐ離れていった」と思い込んで周りに愚痴を零したら、周りがBさんを何らかの形で攻撃するか、遠巻きにするか、恋人になりたい人WORST1位にでもなってしまうかもしれない。

つまりは「言葉って大事なんだよ」っていうことだ。

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