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青空と真反対の心

夏の思い出と言うと、誰もが楽しい思い出を綴るであろう。
私は一度だけ、人生で一番辛い夏を昔経験した。
10月に生まれるはずだった第ニ子を8カ月で死産してしまった。
実は前年にやはり10月に生まれるはずだった子を3カ月で流産したばかりだった。
第一子は順調に妊娠、出産できただけになぜか2番目は難しかった。
保育園のママ友達は順調に第二子を出産していく。
私だけが何故?
10月の子は私には縁がないのだなと、流産もきつかったけど、
死産は本当に心身ともにきつかった。

ちょうどあと10日で当時勤めていた会社は辞め、出産準備に入ることになっていた。会社の上司からはもしまた戻ってくる気があるのなら、
体を充分休めて、働ける状態になったらもう一度勤めてみないかと
きっと気を使って声をかけてくれた。

折しもちょうど梅雨が明け、夏の街はピカピカの青空。
その下を楽しそうに歩く人々。
家族連れ。恋人同士。学生。どの人を見ても眩しい。
いや、眩しいのを通り越して私の心ではすべてが白黒の世界だった。
人々の明るい笑い声がつらい。
太陽の鋭い光線が容赦なく私の心にズタズタに突き刺す。
外に出るのが辛い。ちょっとそこまでの買い物さえつらい。
こっそり泣きながら家路を急いだ。

お盆に主人の実家に帰った。姑が
「無理しなかった?女の子だったなんてもったいない」
「けいこさん(義理妹)は3人目。偉いわ」と。
たぶん悪気があって言っているわけではないと思うけど、
とても傷つき立場のない言葉だった。

太陽の日差しも少しゆるやかに感じられ、秋になり会社に復帰した。
私はどのような顔をして出社したらいいのかわからなかったが、
とにかく心配をかけてはいけないと思い、冷静を装って出社した。
そこに待っていたのは、うつ病のひどい同僚。
私の経験を自分の事のように思ってしまい、表情が暗くなってしまっている。私の復帰をきっかけに鬱がひどくなってしまっている。
明るくふるまうと余計心配をかけて鬱がひどくなるから、
とにかく明るくなく、さりとて暗くもなくの表情で働いた。

それから3年後にやっと第2子に恵まれた。
7月生まれの子。本当にうれしかった。
そしていい子に育ってよかった。

でも、生まれてこなかった子達には今でも申し訳なく思っている。
あの辛い夏の経験は今でも忘れない。



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