戦史三郎

某私立大の学生による歴史実践。学生の調査したローマ軍事史についての記事を投稿します。

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最近の記事

ローマvsパルティア―コルブロ将軍の戦争―

はじめに これまで3回に渡って、古代ローマの武器や戦術、そして具体的な戦争をカエサルの『ガリア戦記』を題材に紹介してきました。4回目となる今回は、ローマ帝国における戦争として、東方のアルシャク朝パルティアとの戦争を紹介したいと思います。その中でも、暴君として名高いネロ帝の時代の、コルブロ将軍による戦争について概観していきます。  ローマはヨーロッパだけでなく、北アフリカや地中海東岸などを征服し、空前の大帝国を築いていきますが、東方のパルティアは未知の敵でした。両者は幾度とな

    • ガリア戦記からみるローマ軍

      ガリア戦記とは ガリア戦記は、ユリウス・カエサルが紀元前58年から紀元前51年にかけておこなった、ガリア遠征を記した書物で古代ローマ時代におけるゲルマン人の様子を知る重要な資料です。 全八巻あり、そのうち第七巻まではカエサルが筆者であるとされています。 ユリウス・カエサルは古代ローマの政治家で、第一回三頭政治のメンバーです。 そしてガリア周辺の属州総督に就任し、ガリアを属州化しました。このときのエピソードがガリア戦記としてまとめられました。 内戦を経た後に終身独裁官に就任

      • 古代ローマ軍の武器と戦い方について②

        1. 行軍 第1回では古代ローマ軍の武器について話した。今回は古代ローマ軍の戦い方について話していく。まず、防衛戦争でない限り戦うには軍隊が戦場へ移動する、つまり行軍する必要がある。最初にこの行軍について解説する。 古代ローマ軍では行軍が始まる前から戦争の準備が開始される。まず、兵士の訓練量が増加する。このとき、とくに穴掘りの訓練が重視される。古代ローマ軍は兵士による土木作業が勝利の要だと考えていたからだ。出征が近づくと兵士はいつも寝泊まりしていた兵舎から出さ

        • 古代ローマ軍の武器と戦い方について①

          1. はじめに 戦後の日本では軍事が過度に嫌悪され、歴史研究においても軍事史研究、とくに兵器や戦術、戦闘経過といった純軍事的な歴史、つまり戦史に注目した研究はあまり活発に行われてこなかった。しかし、戦争とは歴史に大きな影響を与える出来事の1つであり、戦史を研究することは歴史学全体にとっても非常に重要と言える。 本稿では歴史上武勇で名高い古代ローマ軍を取り上げ、彼らがどのような武器と戦い方を用いて戦闘を遂行したのかを解説する。そして、戦史に興味を持っているものの

        ローマvsパルティア―コルブロ将軍の戦争―