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メンヘラと恋愛

 人間関係を築くのがヘタクソな人間に恋愛なんか上手くできるはずがなかった。

 15年ぶりに好きな人ができて、私は最高潮に浮かれていた。世界で一番しあわせだった春。完全に躁。
 惚れた方が負けとはよく言ったものだ。私は四六時中相手のことを考えていたし、相手中心の生活をしていた。嫌われたくなかった。
 しかし相手は悠然と自分のペースで生きていやがる。私のことなどまったく考えていやしない。
 その上、付き合ってるんだか付き合ってないんだかも判然としない状況のまま放置されることに私は疲れ果ててしまい、初夏にメンタルが急降下。

 気づけこの時点で。おまえは完全に都合のいい女扱いをされているということに。

 そこからは、文字通り「大好きで大嫌い」状態である。相手は平気で1週間以上未読スルーをする男だ。

「私はこんなに好きなのに、あなたからは気持ちがちっとも見えてこない、じゃあもういい、連絡なんか二度としてこないで!」という気持ちでいたかと思えば、相手から連絡が来るやいなや、
「あーーーーーよかったーーーーーもう金輪際会ってくれないのかと思った〜今度こそ嫌われたかと思った〜また会えるのうれしい」てなもんである。

 そりゃメンヘラも悪化するわ。

 連絡不精なだけならまだよい。もっと決定的な事項がある。セックスしかしていないのだ。デートなんて一度たりともしたことがない。あいつは、セックスのためにしか私に会いに来ないのだ。信じられるか?私も未だに信じられない。

 それでも私はこの半年以上の間、あいつに対する気持ちを捨てきれなかった。どうしても好きだった。初めのころは忙しいと言われていたから、もう少し経てばデートをしてもらえるだろうと期待していた。でも違った。
 そのうち連絡もろくにつかなくなって、さすがに私も察した。こいつはクズだ、完全に体しか目当てじゃないのだ、私の気持ちなどどうでもいいのだ、と。
 そう思っても、なおも気持ちは消えてくれなくて、少しは気持ちがあるから、だから抱きには来てくれるんじゃないかとか、抱くためには来てくれるんだから、その1時間に満たない間だけは会えるだけいいじゃないかとか、今書いててもこんな苦しい心情で私はよく生きてたなと思う…

 加えて今回の、絶対に未読スルーしてほしくなかったラインも、4日経ってようやく来たので、もう本当にコイツはいいやって思った。

 あいつは私に興味がないから、私だって自分のことなんていちいち話さないし、だから当然、先週一週間仕事がしんどすぎて死にそうだったことをあいつは知らないのだ。
 文句を散々言っていても、私はあいつのことが好きだ。だから、未だにラインの返事が来ればうれしくなるのだ。
 送ったのは相手への祝いのラインだったが、未読スルーのまま、私は平日を3日間駆け抜けるハメになった。
 土曜日の午後にようやっと返事が来たが、今さら遅すぎるのだ。遅くなった理由も相変わらず書かれていなかったし、バカにするのも大概にしろという話である。

 あいつの気持ちなんか知らない。替えの利くセフレとしか思ってないんだとしたらノーダメージなんだろうし、私に対して好きな気持ちがあるんだとしたら、どうして平気で傷つけられるのかがわからない。

 あいつよく言うんだよ、「何かイヤなことがあったら言って」って。
 それに対してずっと、言わせないのはおまえだろ、聞く気もないくせにって思ってたけど、社交辞令じゃなくて本気で言ってるんだとしたら、何も言わなかった私にも責任はある。
 嫌われることを過剰に恐れて、何も言えなかった時期があった。謝る必要のない場面で謝ったりしていた。

 冷静になってしまったら恋愛なんて終わりだろうとも思うんだけど、ここから私たちの関係を、どこかには着地させないといけない。

 もうおまえのペースには乗らないし、曖昧なままも許さない。

 こんなことなら、10代20代のうちにまともに恋愛しとけばよかったなって、後悔しても後の祭り。私は男という生き物を知らなすぎる。

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