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キングダム考察 36巻著雍戦から見る河了貂が信に抱く気持ちは「好き」ではない

【考察その3】

まず、このNoteではっきり「キングダムと言うか羌瘣の考察」
と述べている中、なんで突然河了貂の考察に回ってしまうのか
と言うところですが。

プロポーズ以前、69巻754話で信が羌瘣を抱きしめたあたりから
やたらめったら河了貂のことを「負けヒロイン」と
散々な言われ方をしているのを目にして、
いくら羌瘣の恋敵だったと言えども、私ですら
「そりゃないだろー」と思うような言われっぷりなのが
かわいそうすぎると思ってしまったのが、この記事を書いた動機です。


表題でいきなり突拍子もないことを書きましたが
「一般的な」男女間の恋愛としての好きではない意味のつもりです。

それこそ、兄妹的な好きか?、仲間的な好きか?、と言う話は
私的にかなり複雑だと考察しており、
この記事でそれを順を追って書こうと思っています。


と、書いておきながら。
正直私も、8割方、河了貂の「好き」は
「一般的な男女間の恋愛的な好き」だと思ってます。

ですが貂の気持ちがはっきり書かれたと言われている
「著雍戦」で、例のシーンを読んだ時に
少し違和感を感じたのも事実だったりしました。


なので河了貂派の人たちが、信羌瘣カップル成立で悲しまれている中で、
実はそんなに傷は大きくないかもよ、と言う
希望になればと思う気持ちでこの記事を書きました。

もっともこの記事は、
いつもに増してかなり強引な解釈になっていると思います。
その辺を踏まえて納得のいく方のみ、
ここから先は読んでいただければと思います。
かなり長いですがご了承ください。



考察:著雍戦での問答が河了貂の「好き」な感情には結びつかない


まずは、一般的に河了貂が信を好きだと表明したシーン
(著雍戦で魏軍の人質になったところ)が、
実は好きな気持ちの表明ではなかった点について考察します。

ここからコミックス36巻第386話からの話です。
本を並べて読んでください(笑)。


73ページ、捉えられた貂が凱孟の前に連れてこられたシーンから。
ページの下部2コマ、無言の貂の表情が、
明らかに恐怖や絶望ではなく、抗戦的だったのがすごく印象的でした。

魏軍の指揮官を捕らえることを託したのが羌瘣なのを一理の望みとして、
舌戦に持ち込む機会を伺っているとも取れる表情です。

その表情を凱孟は
「陵辱される覚悟と殺される覚悟、できてそうでできておらぬ」
と評価してますが、それに対して74ページで無言の河了貂の
似たような表情が計3コマ描かれています。

いずれも挑発に乗らず、冷静に受け流しているところですが、
1コマ目より2コマ目の方が若干眉をしかめてました。

この2つは最初の凱孟の言葉について、
納得できる部分とできない部分があって、
1コマ目は「その通りかもしれない」割合が高く、
2コマ目は「そんなことはない」割合が多い、
そんな差の表現なんだと思います。

3コマ目は2コマ目同様、直前の凱孟の
「女ならば強い男に抱かれるのが至上の喜びのはず」の言葉に対する
「そんなことはない」的な表情なんでしょう。

そんなふうに聞き流していたところ突然、
その次の問いかけ(75ページ)で、凱孟から
「お前は信の女か」
と明らかに違うことを問われて動揺し、
「ち、違う!」
と貂は思わず口を開いてしまいました。
真ん中の段の貂の表情は「しまった・・・」と思っているように見えます。


本音を言えば、私はこの段階で、
「あれ?、河了貂は実は信のことが『好き』じゃないかもな?」
とは感じました。
反射で答えることは大体が本音だと思うからです。


この後、387話(81ページ)で凱孟から己の欲望についてを問われていき、
最終的に「信に対して心の奥底に秘めた欲望があるはずだ、
それを言ってみろ、その内容で殺すか返すか決める」
突如、
Dead or Aliveな質問を投げられます

まさに命懸けの舌戦です。


なお、凱孟は先に「女は強い男に抱かれるのが至上の喜び」と言っており、
この質問には「女として添い遂げたい」と言う
貂の答えを期待しているはずです。

で、頭のいい河了貂も、
そう答えることを求められていることに気がついているはずです。


で、ここからですよ。

仮に、本当に河了貂が信のことを好きならば、
迷わずここで「オレは信と添い遂げたい」とか「信の女になりたい」
って言うはず
なんです。

色恋の単なる問答ではない。
最初から舌戦になるのを心待ちにしていた。勝てるチャンスがやってきた。
この答えには命がかかっているんです!。
舌戦の勝利には必要なのです!!。

凱孟が望む答えでもある自分の欲望を吐き出し、無事に生還出来るならば、
口に出すことは迷わないはずでしょう。


ですが・・・、90ページ。下2コマの貂の横顔。
明らかに、言い淀んでいます。
言いかけては、ためらい、言葉を選んでいる様子です。

これは、貂の本音が、
凱孟の最適解「信と男女として結ばれたい」とは別のものである
可能性がとても高いです。

本音を口に出せば、それが最適解でないことで殺されかねない。
最適解を口にし、それが本音ではないとバレた場合も、
無事に帰れるかどうか分からない。
これらが言い淀む理由かと思います。


答えを焦れている河了貂の首を凱孟が跳ねようとします。
もうとにかく、時間稼ぎのため何か言う必要がある。

河了貂は「欲望かは分からないが、信の夢が叶ってほしいと願っている」
と、とりあえず河了貂が信に対して本当に思っていることを
まず口に出しました。

これはその表情から、
包み隠さない河了貂の本音なのは間違いないと私は思います。


これを聞いた凱孟、自分が求めている最適解を聞きたいのでしょう。
刀を抜きかけた手をそのままに「だけか」と追加で問います。

やっぱり「本音」だけではダメでした。
最適解を言わないと命はないのは確実になりました。


本音を最初に口に出して幾分か冷静になれた河了貂は、
目を伏せ、一呼吸おいてから、
「オレもあいつと一緒に幸せになりたい」
と、自分の心の嘘ではない範囲で、
凱孟の最適解とも取れるような表現を口にしました。

本当に頭のいい子だなとつくづく思います。
よくよく考えると、かなり間接的な言い方ですよね。
「男女として添い遂げたい」の意味にも確かにとれるけど、
「信に自分を好きになってもらいたい」意味を全く含んでないんですよ、
この言葉には。

この時の河了貂の表情は、冷や汗をかきつつも強い目力でした。
舌戦の決めの言葉と覚悟を決め、
緊張感を持って口から出したものと想像しました。


それを凱孟は河了貂の想定通り、
最適解と受け取り、無事に刀を納めてくれました。

その後、凱孟は貂が信を好きである前提で挑発し、
それに対して真剣に貂も応戦しちゃってました。
このやり取りが貂の先ほどの言葉を象徴させたため、
私含めた読者はすっかり
「あ、貂は信のこと好きだったんだ」と思い込んだのだと思います。

実際はこの応酬を、河了貂はディベートとして捉え、
自分の立ち位置を「自分が信を好きである」と設定したのだと思います。
凱孟から「お前はこのままでは最悪の結末を迎える」と
言われた時の貂の目(92ページ)は、図星を突かれた動揺ではなく、
目力を蓄え、次の論争に備えているように見えます。
河了貂の戦略は、静かな反論ではなく怒りをぶつけるような主張と
することで、自分の本音を悟られにくくしていたのかもしれません。
(都合良すぎる解釈してます、はい笑)


無事に人質交換で、翌朝荀早と同時に放たれ(89ページ)ました。
貂は歩みを進めるにつれ、次第に緊張していってる描写でした。
実際、矢などで討たれる可能性があり、そう言う意味でただでさえ
この場が緊張するのはもっともなのですが、
2人の表情を交互にクローズアップする描かれ方(90ページ)から、
信の表情がよく見えるようになることで高まっていく緊張の方が
大きいということでしょう。

このシーンの心憎いところは、ここの歩みの途中に
直前に考察した「貂の『本音』の回答」シーンを差し込んでいることです。

これは、信と貂の距離が近づいている時に
「信への思い」を述べたことを貂が思い出しながら歩き、それが
信への気持ちを重ねているようにも見えるんですよね。


ただ実際、信が貂を迎えた時(94ページ)は、
信は厳しい表情で迎え、貂も安堵の表情には遠く、
緊張が解けない表情のままでした。

むしろ、怒られたらどうしよう、嫌われたらどうしよう、的な
信からの信頼を失っていることを恐れている表情に見えます。


で、この回想シーンが仮に、
貂が信への気持ちを重ねながら歩いていたものであるならば、
理性的な感情で信の表情を伺う表情のカットの前に、
信の顔を見て頬を赤らめるとか安堵した表情とかの本能的な反射の、
そう言う描写があって然るべき
だと思うんですよ。
実際そんな描写はどこにもないので、ここでこの回想シーンが
差し込まれた理由が別にあるものだと私は思いました。

じゃないとわざわざこんな忙しい時(笑)に、
ここにこの回想を差し込む意味がなく、
シンプルに前話で凱孟からDead or Aliveを問われた後の流れで
時系列で描けばよかっただけの話です。


「貂の『本音』の回答」シーンは「舌戦の勝利の回想」であり、
自分の思惑通り荀早もうまく味方に捉えてもらったこともあり、
孤軍奮闘の大きな勝負を終え、自分以外の犠牲も出さず、
自分が五体満足で「無事に戻れる」成果を挙げた帰還のはずでした。
でも、歩みを進めながら見えた、そして正面に対峙しはっきりと見えた
厳しい信の表情は、そんな「 成果」を霞めてしまうくらい、
自分がどれほど隊に迷惑をかけたのかを思い知るものだったのでしょう。


だから、少しでも早く信の信頼を取り戻そうと思い、
自分が無事(何もされてない)の報告よりも先に、
顔を伏せ、馬上の信の背中越しに信の表情を見ない状態で
この日の作戦を話し、反省と、きっと巻き返す決意を述べました。

これらの発言の後、他の隊員が歓喜の声を挙げていることに
ようやく気がつくような描写(96ページ)になってます。
一呼吸ここでやっとつけたと言うことなんでしょう。

状況が確認でき、信のそばに居させてもらえる自信が一応持てたので、
ここで顔を上げ、貂は真っ直ぐ信の目を見られたのではないでしょうか。


対する信が、
そんな貂の目を見て「オウよ」とだけ返したの、よかったですね。
作戦への理解の返事でもありますが、お前が俺に対して抱えている心配は
もうすることないぞとも端的に伝わりますよね。

97ページで貂が陵辱されていないと伝え、信が「顔見りゃ分かる」
と言ったように、まさに貂の表情が、捉えられて脅されたり
痛めつけられたりした恐怖や焦燥ではなく、自分(信)の顔色を
とても心配に伺っている表情だと察せられたんでしょうね。


考察:河了貂が信に抱いている気持ちは結局どんなものか

以上を踏まえ、
ここからは貂が信をどう思っているかの私の個人的な解釈です。


貂が、信や政と同じ目線で戦っていきたいスタンスは、
曲げることない立ち位置である認識です。

(10巻81ページ)
「オレは平穏を求めていたんじゃなく、孤独から抜け出したかった」
「あいつらと同じところにいたい」

政と異なり、信とは家族同様に一緒に暮らしていた時期もあり、
強いていえば「憧れの親戚のお兄ちゃん」に抱くような気持ちが、
貂の信に対する気持ちに近いものかなと思います。


私が真実だと思った
「信の夢が叶ってほしいと願っている」
と言う河了貂の言葉。

憧れの信の夢を無条件で応援していきたい。
そんな信にとって自分は近くにいれる存在でいたい。
信が幸せになる時(=夢を叶える時)に喜びを分かち合いたい。


この気持ちから、
「オレも(あいつが夢を叶えて幸せになった時、)あいつと一緒に
(居させてもらって)幸せ(な気分)になりたい」

と言う言葉が出たんだと思います。


ただそれに加えて、時間は前後してますが、
例の合従軍時の「キス事件」(27巻98ページ)勃発。。。

これ、本当にどういう意図で差し込まれたんでしょうかね?。
河了貂と羌瘣との重婚を当初目論んでいたと言う余波でしょうか?。
これがあるから河了貂がかわいそうになってくるんですよ。。。

ともかく、このことで貂が信のことを
確実に男性として意識してしまったことが、話を複雑にしました。

この事件が異性の好きに繋がらないことは、すでに信から
「意識すんじゃねぇ」とゲンコツを貰っている(27巻146ページ)ことで、
気持ちはなかなかついていかないにしろ、貂は既に理解しているはずです。

・・・ファーストキスだよ、意識するでしょそりゃ、貂気の毒な。
信お前なんかむしろ羌瘣と手繋いだだけでドキドキしてた(51巻52ページ)
くせにそりゃないよってやつ笑。


当初、河了貂は女と信にバレることをひたすら恐れており、
打ち明ける決心は、軍師として戦線に向かう決心と同じくらいの
覚悟が必要なことでした。(23巻122ページ)
「憧れのお兄ちゃんとの関係性」を壊したくなかったからでしょう。
つまり当初は「自分を女性として見て欲しくなかった」わけでした。

女性とバレた後、
信には寝所に来られて抱きつかれるとか(24巻118ページ)
セクハラを受けつつも、その度に河了貂は信に鉄拳を食らわしており笑、
あくまでも今までの2人の関係性を保つスタンスでした。

河了貂の視点は、合従軍時のキス事件から
明確に変わったのは明らかであり、この時から
「憧れの親戚のお兄ちゃん」が異性であることを自分が認めたように、
「憧れの親戚のお兄ちゃんにも、自分を異性として見てもらいたい」
と言う感情に近いものとなり、
結局これが最終的な河了貂の信に対する気持ちだと私は想像しています。


なお、私は旧六将の摎が王騎に長く抱いていた気持ちは
もしかするとこっちの方なんじゃないかなとも想像してます。

2人は「主人と従者」の関係の期間があまりにも長く、
摎は王騎への憧れの気持ちはあったものの、
まさかご主人様に自分が見そめられるとは想定してなかったことでしょう。
現に、王騎が昔した約束を覚えてくれている自信を
摎自身持ててませんでしたよね。

王騎から摎に向けていた想いが「男女としての愛」のようだと
分かった瞬間から、悲しい最期を迎える短い間だけが、
摎が王騎に寄せる「男女としての愛」の時間だったんじゃ
ないでしょうかね。

エピソード少なすぎなので確かなことは分かりませんが、
この記事書きながらそう感じました。


話を戻しますが、だからこの「憧れのお兄ちゃん」に対する異性意識が、
「男女の好き」と何が違うかは、私にはこれ以上説明できない(苦笑)。
・・・すごく些細な差なんだと思います。
一般的には「好き」のカテゴライズで括って構わない範囲なんでしょう。


ですが、一部の方はもしかすると、
すごく腹落ちする方もいらっしゃるのではと。
もしかすると推し活動(笑)なんてものも
広い意味でそれに近いんじゃないですか?


推しには、異性対象として自分を見てほしい
でも推しが必ずしも自分を選ぶ可能性は限りなく低いと覚悟している。
でも推しが幸せな姿を見るのは最高の幸せ

そんな感じ。

そう、推しの幸せな姿を見るのが、最高の幸せなんです。

まさにこれ↓。(再掲)
「オレも(あいつが夢を叶えて幸せになった時、)
あいつと一緒に(居させてもらって)幸せ(な気分)になりたい」


考察:信の幸せのために、自分を選ばない覚悟はすでに出来ていた

最後に、例の信と羌瘣の抱擁シーンまでに、
河了貂がそれなりにきちんと上述の「覚悟」
(自分を選ぶ可能性は限りなく低い・しかも選ばれるのは多分羌瘣)
をしていただろう
と言うことへの考察もしたいと思います。


そもそも、信の異性事情を気にする場所において、
貂の様子が羌瘣のそれと似たように描かれているので
誤解を生みやすいんだと思います。

信が蒙恬にお見合いを勧められた時(45巻70ページ)、

王賁の結婚を聞いて信が悪態つくのを聞いている時(62巻123ページ)、

信が楊端和に見惚れてぼーっとしている時(65巻53ページ)。

そもそも羌瘣も、信を好きであることを認めるものの、
自身らの仲の発展は(表向きは)望んでない状態であって、
その点で信に対する立ち位置は河了貂と一緒なんです。
だからこれらの表現は似ていても仕方ないんです。


なので「信と羌瘣が絡むところに貂が立ち会っている時」
(その時の特に信の反応を貂が見た時)
だけピックアップする方がわかりやすいです。


本当は羌瘣ファンきっての名シーン「お前の子を産む」(34巻74ページ)。
この発言からも言及してもいいのですがここではあえてスルーします。
たくさんの方が考察に挙げてますし、この記事もただでさえ長いんで。。。


もっとも、河了貂の意識フラグは、
私は意外に最近(?)立ったと考察してます。
それは、
朱海平原で信が生き返った後で羌瘣が目覚めた時(58巻158ページ)
です。

ここで信は羌瘣を見つめながら何か「・・・」と呟いている様子
(159ページ)が描かれていますが、他の人は「?」と訳がわからない中、
尾平と貂だけはそれぞれ
「・・・」と何かを察したかのように描かれてます。

羌瘣が「大したことはしていない」(158ページ)
と言ったことは、尾平と貂、それともちろん信も、
「いや絶対大したことだったんだろ」と思ったのは共通だと思うのですが、
貂はこれを期に、
信と羌瘣の並々ならぬ絆のようなものを察知し始めたのかなぁ、
と思ってます。


羌瘣が羌礼との対決時、
他の隊員の誰にも気が付かれないように羌瘣は天幕を去っており、
それを察知できたのは信だけ(61巻192ページ)な描写だったにも
関わらず、羌瘣と羌礼の決戦の場には信のほか、
なぜか河了貂もいました。(194ページ)

これは信は絶対に羌瘣を見逃さないと貂は分かっていたので、
隠密の羌瘣側を張るのではなく、
信の動きだけを注視していたからこの場に間に合ったのでしょう。


ここの描写、すごいですよね。
信が羌瘣の動きを察したのは羌瘣がまさに天幕から出る直前ですよ!。
(190〜191ページ、信が行動しようと飲んでたコップを置いた直後に羌瘣が深く息を吐き、鉢巻を締め、緑穂を背負って足を踏み出している)

これぞ「禁術で繋がった2人の気」の象徴ですよね!。

・・・いかん、話が脱線している(汗)。。。


ここまでは「二人の間に絆がありそう」なフラグだったのが、
羌瘣が信に気持ちを打ち明けた後、2人の態度がギクシャクする様子
(62巻54ページ)を河了貂は目撃しますが、
ここで「男女の絆かもしれない」フラグになったと予想します。


時系列的な流れで、ここで前述した、
「王賁の結婚を聞いて信が悪態つくのを聞いている時(62巻123ページ)」
をまた蒸し返しますが、女子2人の表情をあらためてよく見てみると、

羌瘣は、信を見ずに自分の中で「まだだな」と安心を噛み締めている表情、
貂は、信を眺めて「まだな様子だな」と確認しているような表情、と、
細かいかもですが2人の表情が異なる形で描き分けられてます。

これは貂が「信の結婚」を自分ごとではなく俯瞰して眺めているからとも
取ることができると思います。


その後、髪を切った羌瘣を見て真っ赤になる信が、皆から
おちょくられている場(62巻115ページ)を慌てておさめようとしたり。
(先に我呂が「かわいー」とこぼして皆におちょくられる時には
むしろ羌瘣に「何かあったの?」と聞いてこの話を広げてしまう
超本人なのに笑)

宜司平野の戦いで李牧の罠から出る道を信と羌瘣で作った後、
二人が馬上でほっこり休んでいる(66巻186ページ)ことが
「なんかイラっと」したり。

いずれも、2人の「男女」としての態度に気が触りつつも、
2人(特に信)の態度そのものを頭から否定するわけでもなく、
(馬上ほっこりシーンでも「のんびりするな」と、
 馬上ほっこりすること自体は実は否定していない)
「やり過ごそう」とか「見過ごそう」と言う態度を取ってるようでした。


極め付け、肥下の戦いから敗走している途中。
殿の羌瘣隊を隊長の李信自らが待っているのを知った河了貂。

羌瘣たちが戻っていないのを分かりつつ、
「何やってんの、信は前に行かないと」(69巻144ページ)と
周りの兵には愚痴るものの、信に直接注意しにいくわけでもなく。

そして逆に他の兵から「隊長たちいい加減動かないと」
と急かされても(146ページ)、「・・・うん」と相槌打つものの、
やっぱり信を注意しには行かない。

貂は、信が羌瘣が戻ってくるまで、テコでも動かないことを分かっている
ように見えます。


桓騎や召の死で悲しみに暮れている砂鬼一家に、
一人でも多くの兵士を国に帰すため、
無理を承知で飛信隊の治療を自らお願いに行く(141ページ)くらい、
心が優しく、本来なら行動力もある河了貂。

軍師として本当に必要なことなら迷わず言いに行くでしょうし、
信に直接自分で言いづらいなら誰かに言いに行くように
依頼することも出来たはず。

悲しいことが続いているこの戦いの中で、
信の気がすむようにしてあげたいと言う心と葛藤していたんだと思います。


そしてついに目の当たりにした、信と羌瘣の抱擁。
目を丸くし、驚いてはいます(151ページ)が、「意外だ!」と言うよりは、
「やっちゃった!」「見ちゃった!」的な表情に見えました。

都合の良い解釈しすぎなのは承知ですが(爆)、その根拠は、
右のコマの尾平の驚いた顔と同じような表現に見えたから、でした。

尾平は貂のように、信と羌瘣の「男女の絆」は今まで感じていなかった
かもしれませんが、すぐに状況を察せられた点から、彼にとっては
それほどめちゃくちゃ意外な光景ではなかったのでしょう。


信と羌瘣の絆を察してから、今までは静観できた貂でしたが、
今回は明らかに
「信が自分以外の人(相手は以前から想定していた羌瘣)を選んだ現場」
でした。
・・・サラリと流せるわけはないでしょう。


で、ですね。
その後のコマ、3コマ(153ページ)で違う表情を重ねる河了貂ですが、
注目すべきは、1コマ目でしょう。

河了貂、「笑顔」ではないですが、「薄く笑って」るんです。

これ、本当に突然の失恋だったら、笑えますか!?、ってことですよ。

なんで「笑って」いるかというと、
・羌瘣たち殿が無事に帰ってきた
・信が悲しみで落ち込む事態を回避できた
・停滞していた隊をやっと前に進められるようになった
等、色々な要素が解決した安堵から、でしょう。

で、彼女にとっては、
これまでぼかしていた自分の気持ちの、具体的な終着点がやっと現れた、
そんなことも安堵の要因の一つであったはずです。

2コマ目で伏せた目では、自分がこれまで抱いていた
言語化できない気持ちを「諦め」に変換する辛さ
滲み出てしまいましたが、
すぐさま3コマ目で俯き、「こんな感情のままじゃいけない」、と
未来に進む決意をしていたのかな、と思いました。

この切り替えの早さは、この時が来るのをあらかじめ覚悟していたから
と言う説明が成り立っていると私は考えています。


最初読んだ時は私も河了貂が信のことを好きだという前提だったので、
ここで「あれ?、なんでここで笑う?」「しかもこんなに切り替え早い?」
と違和感を覚えたんです。
そこで、最初に説明をした「著雍戦で感じた違和感」も思い出し、
この考察を書くきっかけとなりました。


そう言うわけで。

あらかじめ覚悟していたことならば、きっと貂の立ち直りは早いはず。

何よりも、信が幸せになることについては、
きっと最終的に貂も幸せに思ってくれるはず
です。
時間はかかるかもしれないけどね。。。


以上、こんな考察が、
少しでも河了貂派のかたの心の傷を癒やす材料になれば幸いです。


考察まとめ

以上が、河了貂が信に対する気持ちの本当のところの考察になります。
大変長い無理矢理理論の文章を読んでくださってありがとうございました。

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