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「ウルトラマンブレーザー」を悩ませる、アースガロンという爆弾

あけましておめでとうございます。
初詣は柴又帝釈天に行ってきたKトレです。
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毎週のように快作を連発しつつ、いよいよ最終回が近づく「ウルトラマンブレーザー」。
だがその中にあって、回を重ねるごとにファンの不満を煽る存在がいる。
23式特殊戦術機甲獣・アースガロンである。
設定面、玩具面でも間違いなく番組のフラグシップにも関わらず、その活躍に視聴者は不満タラタラなのだ。
具体的には
「全然怪獣を倒してない!弱すぎる!」
「ウルトラマンのかませ犬じゃないか!」
「スタッフの愛が感じられない!」

「販促がなってない!!!」

しまいには「ネグレクト」扱いされる始末である。ネグレクトってのはキカイダー01/イチローみたいのを言うんだよ情弱


だがそのような文句が溢れる事は「正義」なのか?
アースガロンって間違いなく活躍してるのに何故こんな印象になったのか。
という事で、自分が見聞きした意見を「ブレーザー」の一応の完結を前に何となく共有するのが今回の投稿である。


・ニュージェネレーションギャップ2024

鮮烈デビュー

アースガロンに対する不満で最も多いのは上に記した通り「怪獣を倒せない=キルスコアが少ない」である。

しかしウルトラシリーズは本来「ウルトラマンが怪獣を倒す事が浮世英寿の見せ場ハイライト」のはず。
何故アースガロンが怪獣を倒す事に視聴者はそんなに拘るのか?
それは簡単で作中に答えがある。

「正式な最初の命令だ。
このアースガロンを使って、あの"ウルトラマンブレーザー"より先に怪獣を倒してみせろ。」

第2話「SKaRDを作った男」

「お前たちは何だ?特殊怪獣対応先遣隊だろ!
お前たちが単独で撃破した怪獣が一匹でもいたのか?
お前たちの存在意義を示せ!」

第12話「いくぞ ブレーザー!」

これらハルノ参謀長の台詞からも分かる通り、
SKaRDは設立当初から怪獣を退治する事が存在意義の組織であり、その最高戦力たるアースガロンもまた然りである。この辺りは歴代のウルトラシリーズにも見られた部分だが、SKaRDの場合は物語の節目でそれが強調されてきた。
しかしそれだけではない。どうも"X"を眺めていると、この点に強いストレスを抱く感想が多いようだ。
なかなか前項の目的を達せられず、叱責されるSKaRDに対して「可哀想」「胃が痛くなる」といった声が多く上がっている。
隊長がウルトラマン=主人公である事は当初からのアピールポイントであり、加えてSKaRDの面々は直近のストレイジやGUTS-SELECTに比べ精神年齢の高い台詞回しも多く組織としてのリアルな空気を感じさせる。穿った見方だが、オタクは前線でもがくSKaRDを必然的に社会人としての自分と重ね、「早く一匹倒して気持ちを楽にしてほしい」と思いを半ば無意識にアースガロンに託していたのではないか?
加えてその不満の矛先は無能な上層部ではなく、脚本や演出に向かう。
「仮面ライダーリバイス」で顕著だったが、オタクは理不尽な展開へのフラストレーションを作中の元凶ではなく制作サイドに向けがちである。つまり「ブレーザー」の場合も、SKaRDがなかなか怪獣を撃破出来ない状態は話の作り方や監督の構成力が悪い!とされてる感がある。

例えば第10話「人と怪獣」ではデマーガ親子を攻撃するアースガロンの瞳をあえて消す演出でその力への恐怖を表現したが、これにも批判の声が上がった。越知靖監督に対する中傷ツイートも散見された程だ。6話はよぉ!?

しかしそもそもSKaRDの存在意義云々は別にしても、こういう回で防衛隊を悪く描くなと言われるなんて、過去のウルトラシリーズではあり得ない事態だ。もしアースガロンの役回りがこれまでのシリーズのような戦闘メカ(一般機に限らない)だったら、よほど拗らせた政治活動家でない限り文句をつけるオタクは居なかっただろう。

そう、飛行機だったら…。


・僕が見たかった青写真 

撃って動ける完璧で究極の戦闘メカ
の、はずなのに…。

これこそが温度差の正体ではないか。
「ウルトラマンブレーザー」という作品はアースガロンを戦闘機等の延長線上にある兵器として扱っているが、視聴者は初めからアースガロンをまずキャラクターとして見ているのだ。

ウルトラシリーズにおける防衛隊のメカは、キルスコアで測れば抜きん出たものはないが、ウルトラマンに対する数々の好アシスト、また単独撃破を節目節目で達成する事により強烈な印象を残してきた。それが普通だった。
それが「ウルトラマンZ」の特空機セブンガーの内外に渡る活躍を経て、防衛隊の兵器はウルトラマンや怪獣と遜色ないキャラクターとしてのポテンシャルを持ち得る存在にもなった。
特空機と同じく着ぐるみで表現され、尚且つデザインも「ウルトラマントリガー」のナースデッセイや「ウルトラマンデッカー」のテラフェイザーに比べ多少有機的。加えて初登場と同時に玩具化されたアースガロンに戦闘機レベルではなく特空機並みの派手な活躍と強烈なキャラクター性が求められたのは必然の流れだ。
このキャラクター性への期待が、視聴者のアースガロンへの情愛を加速させる。
これが顕著になったのが第22話「ソンポヒーロー」で、ブレーザーとアースガロンが揃って怪獣を倒した直後のモブ民間人の台詞。

「ウルトラマンが怪獣倒したらしいぞ!」

これに対して、「SKaRDも頑張ってるだろ!」だったら人気お笑い芸人クラスのよくあるツッコミなのだが、実際は「スタッフはアースガロンをわざと無視してこんな台詞を書いた!」という批難轟々。
多彩な表情や後半から加わった誰も正式名称を覚えていない超AIアーくんなどキャラクター性の強い要素はあるが、結局それが戦績にあまり直結してない為に役立たずと見られて…いや決めつけられてしまってる現状を如実に現した光景だった。

尤も、細部を詰めてゆくと少々的外れな部分もなくはない。
例えばDXアースガロンの目玉ギミックでもある「アースファイア」の影の薄さだ。
確かに肝心なところでの戦果をMod2ユニットならともかく、DX玩具に発射展開ギミックのない腕のアースガンや尻尾の誘導弾に譲ってるのにモヤモヤするのは分かる。
恐らくこれが販促云々の正体であると思う。最近では「機能は全部使え!」って格言もあるし。
ただしDXアースガロンにはこれら諸装備に対応した音声ギミックが入ってるし、ドンオニタイジンやキングオージャーと遜色ない関節可動も立派なセールスポイントなので、アースファイアひとつを以て販促不足と断定はし難い。
また、上述のハルノ参謀長の台詞から、SKaRDが独力で怪獣を倒す事を「全話通しての最終目標」と認識し「最終回まで取っておいて欲しかった」「中途半端」などという声も存外に多い。
ドンブラザーズの同時変身じゃあるまいしこれに関してはワガママもいいところでそもそも販促云々と相反してるので今回はスルーしておく。


・ブレーザーは「完成形」ではなかった

ちゃんと一斉掃射は欲しいよね

ここまで取り上げた期待との落差。視聴者はこれをある種の"チグハグさ"と感じているようだ。

そう、チグハグさである。

自分が思うに、オタクがウルトラマンブレーザーに期待してたのは「最初から最後まで無駄なく進む作品」だったのではないか。
これは王道という意味ではなく、東映特撮のような"露骨なテコ入れ・SNSを贔屓したキャラの悪目立ち"に代表されるドタバタ感がなく、最初から最後まで余計な寄り道をせず事が運ぶ…といったニュアンスだ。
奇跡の連鎖で大成功作品となった「Z」の後、制作サイドは「トリガー」「デッカー」とその成功を狙って再現しようと試行錯誤する作品を連発した。好調なIP売上からも分かる通り両作は好評を得たが、一方で玩具の都合に振り回されて迷走してると批判された部分もあった。
そして2023年春。発表当初の硬質な雰囲気、前のめりかつ怪獣中心の商品展開、そしてメイン監督:田口清隆氏のプレミア発表会での「ほぼクランクアップしてる」発言…オタクはブレーザーに前2作のような試行錯誤感より寧ろ2作からの商業的フィードバックを存分に活かしつつやりたい放題に作られた理想のウルトラマンを望んだ。それもまた必然の流れだった。
特にクランクアップに関する発言が、現状のブレーザーにおける根源的不満招来要素(アースガロン以外の諸々含めて)であるのは間違いない、と筆者は思う。
そしてこれを最も分かりやすく派手に表現する方法として視聴者が期待したのが、アースガロンの活躍だった。

玩具展開に目を向ける。Mod2ユニットが「ウルトラ怪獣アドバンス ニジカガチ」に付属した際にはみな「その手があったか」と驚きや感心を持って迎えたが、約3ヶ月おいて登場したMod3に関しては劇中登場から3週間音沙汰なしだった。
12月28日には「アースガロン Premium Edition 」が発表され、Mod3も付属する事になったが、ユニットはDXアースガロンとの互換性が無いとされ波紋を呼んだ。
両者が玩具として別ベクトルの存在である事は理解できるが、多くの視聴者の神経を逆撫でしたのは大衆論として間違いない。
だがそもそも視聴者はMod2なみのペースで次々追加装備が出てくるのを望んでた節もある。要はこれ、アテが外れた事への不満なのだ。「登場と同時に玩具にならないなんて、足並み揃ってないじゃん」と。
結局アースガロンは、総合的に期待を下回ったのは多数意見であり、問題はその期待が過剰か否かに対する大きな溝である。

(ちなみに個人的には、ユニット換装が基地の段階でしか出来ず、タイプチェンジのような臨機応変さを欠いてしまったのも惜しいと思う。尤もユニットを単独稼動の可能なものにすると、余りにも"スーパーメカゴジラ"過ぎるのだろうが…。)


・ウルトラマンより先に、結論は出せない?

評判悪くてもやるしかねえ
やるしかねえんだ

「ウルトラマンブレーザー」は多くの大怪獣が画面を賑わせているが、残念ながらアースガロンはその輪に入っていると視聴者に見なされていないらしい。
ただ高い期待に見合わぬ活躍に甘んじてる現状への不満であり、キャラクターとして、また兵器としてのアースガロンを否定するものではない。無茶苦茶言うとそもそも「DXアースガロン」が間違いなく傑作玩具であるからという事も、忘れてはいけないと思う。(山川穂高の得意技戒め)
この記事に貼り付けた写真から、そのポテンシャルが感じ取れたら結構嬉しい。
玩具としての期待値は間違いなく余裕でクリアしているし、実際好調とされる売上を支えてるのも、高い前評判からくる初動なのではないか。みんな薄々気づいているが今回の議論は、とうの昔にDXアースガロンを買ったユーザー主導でもあるのだ。

とにかくこれ以上、この愛情が裏返らないようにしながら、残り2話を待ちたいと思う。
Mod4の活躍に、筆者はV99%の期待をこめている。

ではでは。