イラスト・「ぼんくら」宮部みゆき


 今BSでドラマの再放送をやっているので、再燃中です。大好きです、「ぼんくら」シリーズ
 宮部時代物、結末が苦いものも多いし、これもシリーズ通してスッキリハッピーエンド!はありません。とくに、「おまえさん」は無常というか……。だけど、読後感が爽やかで心地よいのは、やはり主人公の魅力が大きい。
 平四郎のバランス感覚は、現代社会でもやっていけそうな強さ。めんどくさがりで飄々としていて、策略や計算が苦手。「不器用だけど一生懸命」ではなく、できれば楽をしたい一心で怠けたい性分。かと思えば、実は物語中、誰よりも人情に篤い静かに、真っすぐに、怒るし心配するし慰める。大好きな主人公です。
 ドラマでは岸谷五朗さんが演じておられますが、これも大当たり。このドラマ、キャスティングが全てバチっとはまっている。その上、原作本をかなり深く読み込んであって、上手に時間軸やエピソードを入れ替えたり削ったりして、長い物語をきれいに十回にまとめている。すげーなNHK、と感服しました。
 舞台は江戸の街ですし、初版も1999年と少し前になりますが、中のお話は令和の今こそ響く人が多いのでは。全体を通して、色んな親子や夫婦、家族の形が描かれています
 そんな親なら捨てればいい、血がつながっていなくても家族になれる、この感覚に私は救われてきました。もちろん創作の世界のお話ではあるのですが、家族や親子にしんどい思いをしている、特に「子」の立場の人には、ちょっと楽になれるシリーズかもしれません。

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