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岡嶋葉(41)/貝塚線物語

岡嶋葉(41)

朝の天気予報をチェックしながら娘のお弁当を作って
朝食を準備し、2階の彩(あや)を大声で起こす。
面倒くさそうな寝ぼけまなこで起きてきた彩に元気よく声を掛けた後
学校と部活のスケジュールを確認しながら朝食を食べさせる。
洗濯物のしわをのばしてバルコニーに干し
ソファで制服のまま二度寝している彩に声をかけ、見送る。

コンビニのパートに行く準備を整え
ダイニングに腰掛け、食パンを焼き、コーヒーを飲みながら新聞に挟まれたチラシをペラペラとめくり
テレビ欄から遡るように新聞の見出しに目を通す

このタイミングで夫の悠真が起きてくる。
シャワーを浴び、身支度を整え、出勤体勢になるまで30分
立ったまま葉が入れたコーヒーを飲みながら
新聞をペラペラめくる。
葉はスマホを触りながら彩に確認したスケジュールを報告する。

「今日は、彩、個人面談なんだって。」
「そうなんだ。」
「夜は、久しぶりにカレーでいい?大分から野菜もらったから。」
「いいね。」
「お母さんにお礼言っとて」
「うん、ラインしとくよ。さて、行きますか。」

8:28

二人はお互いの車に乗り込みそれぞれの職場へ向かう。
これが岡嶋家の朝のルーチンだ

1つ先の始発駅から同時間に発車した2両編成の電車が通り過ぎ、踏切が開く。
窓越しに見える乗客の頭は数えるほど、
2両目のそれも1番端の席にはいつも頭の薄いメガネの中年男性が振り返るように窓の外を眺めている。

住宅地と田んぼが程よく混在するエリアの片側2車線の広い道
赤信号で車を止め、遅刻したのか1人走って学校に向かう小学生を眺めながら
今朝の新聞の見出しの言葉が走馬灯に頭をよぎる。

同性同士の受精卵

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裁判員として死刑判決に関わった60代女性は執行のニュースを見ると自分が関わった死刑囚かドキドキする

「日々の生活とはなんて危ういのだろう。」

という言葉で締めくくる。

信号が青に変わる。店まで後3分。

今日も暑くなりそうだ

店長はアイスクリームをちゃんと追加発注してるだろうか。

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